個人的村上春樹Best10 第1位  | [A] Across The Universe

個人的村上春樹Best10 第1位 

個人的村上春樹Best10 

とっておきの第1位は











「国境の南 太陽の西 」










村上春樹の作品の中で、一番切ない物語だと思う。

登場人物にもクセがなく、あの独特の雰囲気もない。
ただひとつ、村上作品を通して流れている「生と死」というテーマをもっとも濃厚に感じることが出来る作品。



12歳で通う中学が離れて以降、心残りはあっても、一度も顔を合わすことがなかったハジメと島本さん。

ハジメはそれなりの学生生活を送り、教科書出版会社でサラリーマンとして働く。

しかし、心の中はいつもぽっかりと穴が開いていた。


それは、

彼のそばに島本さんがいなかったから。


彼は、結局のところ「島本さんから離れるべきではなかったのだ」


旅行先で現在の妻と出会い、結婚。

義父が持つ青山のビルで始めたジャズバーが成功し、二人の娘にも恵まれる。
実業家としての地位も手に入れ、最愛の妻と二人の娘と絵に描いたような生活をおくるハジメ。


37歳になった彼の前に、島本さんは突然姿を現す。

抑えようにも抑えられない感情。
一方、穏やかな生活は手放したくない。

運命との葛藤。

二人は深夜、車で箱根へ向かう。


島本さんは言う。

「私を手に入れるには中間はないの。全部手に入れるか、全部手放すか」

島本さんが持ってきたプレゼントは、昔二人で聞いたナット・キング・コールの「国境の南」が入っているレコードだった。


切ないな。
すべてが切ない。

何度読んでも切ないのだけど、何度読んでも心惹かれる。

若い頃は「ノルウェーの森」を超える村上作品はない、と思っていたのに。
この作品が心に染みる年齢にたどり着いたんだろう。

20代に読んだ時、30代に入った頃読んだ時。
これほど心には染み入って来なかった。

40を過ぎた今改めて読み返して、心にズーンと響いてきた。

年を経る度に自分の心も変遷していくんだ。





国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
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