償い / 矢口 敦子 | [A] Across The Universe

償い / 矢口 敦子

社会派ミステリーとでも言えばよいのだろうか。
初めて読む作家だが、高村薫をやや丸くした雰囲気を感じる。

設定も重い。
テーマも重い。
物語に一貫して流れている重さは、現代の「陰」の部分を誇張して描かれているからだ。

脳外科医ながら家庭を顧みなかった結果が家庭崩壊を招き、ホームレスへと転落していく主人公。

いわゆる学習の面ではトップクラスだが、心にゆがみを持つ15歳の少年。

とあるベッドタウンで起きた、火事と思われた殺人事件は、ホームレスの周囲を巻き込みながら思わぬ方向に展開して行く。



「人の心を殺すこと」は罪なのか。
そして、その償いとは。

答えは提示されない。


そもそも心は殺されてしまうものなのか。
それとも、心を殺されてしまうような人がいる現代社会を憂いているのか。

著者の投げかける問い自体が重過ぎて、考えあぐねている。



償い (幻冬舎文庫)
償い (幻冬舎文庫)
posted with amazlet at 08.10.10
矢口 敦子
幻冬舎
売り上げランキング: 12249
おすすめ度の平均: 3.0
2 終わり方に・・・
4 帯の言葉にまどわされるな
3 気になる
2 前半に布石をあちこち置いてあるが
2 逆説変則的な優性論では、ないのか?