志のみ持参 / 上甲晃 | [A] Across The Universe

志のみ持参 / 上甲晃

松下政経塾。
すっかり政治家養成塾として認知度は高まったが、創設当時は苦労の連続だったようだ。
その政経塾の塾頭として奮闘されていた上甲氏が、「掃除」をテーマに行った講演をまとめたのがこの本。

掃除についてはもちろん様々なエピソードが収められているが、松下幸之助氏の教え、上甲氏の経験等、本当に参考になる内容が満載である。
そもそも、上甲氏も仕事の上では非常に苦労された方であることが、政経塾のバックボーンとなっていたようだ。
広報部、広報誌の編集長としてキャリアを積み、慢心し始めた頃に一転営業に異動。
実績のない上司には部下も従わないという、つらい現実。
こうした経験をベースにして、青天の霹靂でなんと政経塾の理事として出向することになる。

松下幸之助が私財を投げ打って作った政経塾。
21世紀の世界、日本を担うリーダー養成するためのエリート教育機関。
日本から優秀な若者が集った第一期生の入塾式。

どれだけすごいことを期待されているだろう、と肩に力が入っている塾生に対し、塾頭の松下は

「明日から、朝、早う起きて、しっかり掃除してくれ」と言った。

ここから政経塾の葛藤が始まる。
優秀で頭でっかちな塾生は、理論的、科学的でないことにはなかなか従わない。
「掃除は塾の方針だ」と松下が言っても、「塾長の横暴だ」と反論がくる。

厳格な管理体制、監視体制を敷いて朝の掃除は機械的に行われることになった。


あるとき、松下病院にいた松下幸之助に塾生をつれて報告に行った。
「これからますます、政経塾は良くなるでしょう」と報告し、松下も機嫌が良くなる。
しかし、塾生の質問時間が始まった途端、状況は一変する。

塾生はこう質問した。

「もう一度お尋ねします。掃除をすることの意義について教えてください」

松下はイライラしながら「十年経ってこれではどうにもならんな」。

結局、上甲氏は、強制では掃除が根付かないことに気づく。
それに気づくまでに7、8年かかったとおっしゃっている。
いいことをしていると、やっていない人に対して「けしからん」と思う。
これでは謙虚ではなく、傲慢、偽善である。

「結局、変わらなければならないのは自分だった」

この本を読むと、この一言がズシンと心に響く。




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上甲 晃
致知出版社
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