ノーフォールト / 岡井崇
著者は昭和大学に勤める現役産婦人科医。
初めて書く小説とは思えない巧みなストーリー展開で、最後まで読む者を引きつけて離さない。
岡井先生は「壊れゆく医師たち」においても産婦人科の厳しい現状を憂いておられた。
この先の日本の医療界に警鐘を鳴らすために書かれたものだと思う。
患者からの信頼も厚い柊奈智は、産婦人科医不足による過重労働が続いていた。
当直にあたった日、痛みを訴える患者徳本美和子を診察し、グレードAカイザーと呼ばれる非常に緊急度の高い帝王切開手術をする判断をする。
病棟医長の君島を呼び出すが、君島は夜間の若い外来患者に手間取り駆けつけるのが遅れる。
柊が手術をすることを決断し、無事子どもを取り出したものの、母体の出血が止まらずに危険な状態となる。
大量の輸血と、遅れて到着した君島の手によって縫合をし、手術は無事終了した。
その後も徳本美和子は原因不明の出血が続き、再び緊急手術をするものの死亡。
追いうちをかけるように遺族に訴訟を起こされ、被告となった柊は弁護士にもひどく追い詰められ、精神的にも不安定になっていく。
その後、物語は訴訟とその原因究明、柊の精神状態の変遷を軸に展開していく。
読み手に対して、医療界の現状を知らせたいという意図が表れるため、登場人物に語らせる内容がやや冗長だが、医療の現状を知る上では非常に有意義である。
「理事長! 大学病院はまだいいんですよ。三人も当直していて、その中にベテランが必ず一人いますから。一般の病院は二年目、三年目の医師が一人で当直しているんですよ。もし、今回のケース、一般の病院で起こったら、あんなに早く帝王切開はできません。”医長先生を呼び出して”とか言っている間に胎児が死亡しています。でなければ、重症の仮死で生まれて、後遺症が残って・・・それが問題にされる。現在の日本の産科医療はそういう状況なんです。」
「・・・アメリカではお産一件で百万円くらいかかる、たった二日の入院でね。もちろん患者が払う。そのうちの一部、最近では平均40%分、つまり40万円は医師が保険会社に払うほうに回されるってことだ。さらに上がれば、実質の分娩料にその分が上乗せされる。結局は患者が払わなければならないってことだよ。」
悲しいことに病院とは付き合いが長いため、医療用語や薬剤については多少の知識があるが故に、否が応でも必要以上のスリルを味わいながら読んでしまった。
産科医療の現実をあらわにした限りなくノンフィクションに近い作品。
実地産婦人科医の苦悩と叫びが聞こえてきます
現役産婦人科医による渾身の一撃
産婦人科医になる決意をさせてくれた本
今、目の前にある医療危機。
初めて書く小説とは思えない巧みなストーリー展開で、最後まで読む者を引きつけて離さない。
岡井先生は「壊れゆく医師たち」においても産婦人科の厳しい現状を憂いておられた。
この先の日本の医療界に警鐘を鳴らすために書かれたものだと思う。
患者からの信頼も厚い柊奈智は、産婦人科医不足による過重労働が続いていた。
当直にあたった日、痛みを訴える患者徳本美和子を診察し、グレードAカイザーと呼ばれる非常に緊急度の高い帝王切開手術をする判断をする。
病棟医長の君島を呼び出すが、君島は夜間の若い外来患者に手間取り駆けつけるのが遅れる。
柊が手術をすることを決断し、無事子どもを取り出したものの、母体の出血が止まらずに危険な状態となる。
大量の輸血と、遅れて到着した君島の手によって縫合をし、手術は無事終了した。
その後も徳本美和子は原因不明の出血が続き、再び緊急手術をするものの死亡。
追いうちをかけるように遺族に訴訟を起こされ、被告となった柊は弁護士にもひどく追い詰められ、精神的にも不安定になっていく。
その後、物語は訴訟とその原因究明、柊の精神状態の変遷を軸に展開していく。
読み手に対して、医療界の現状を知らせたいという意図が表れるため、登場人物に語らせる内容がやや冗長だが、医療の現状を知る上では非常に有意義である。
「理事長! 大学病院はまだいいんですよ。三人も当直していて、その中にベテランが必ず一人いますから。一般の病院は二年目、三年目の医師が一人で当直しているんですよ。もし、今回のケース、一般の病院で起こったら、あんなに早く帝王切開はできません。”医長先生を呼び出して”とか言っている間に胎児が死亡しています。でなければ、重症の仮死で生まれて、後遺症が残って・・・それが問題にされる。現在の日本の産科医療はそういう状況なんです。」
「・・・アメリカではお産一件で百万円くらいかかる、たった二日の入院でね。もちろん患者が払う。そのうちの一部、最近では平均40%分、つまり40万円は医師が保険会社に払うほうに回されるってことだ。さらに上がれば、実質の分娩料にその分が上乗せされる。結局は患者が払わなければならないってことだよ。」
悲しいことに病院とは付き合いが長いため、医療用語や薬剤については多少の知識があるが故に、否が応でも必要以上のスリルを味わいながら読んでしまった。
岡井 崇
早川書房
売り上げランキング: 14231
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産科医療の現実をあらわにした限りなくノンフィクションに近い作品。
実地産婦人科医の苦悩と叫びが聞こえてきます
現役産婦人科医による渾身の一撃
産婦人科医になる決意をさせてくれた本
今、目の前にある医療危機。