木のいのち木のこころ / 西岡常一、小川三夫、塩野米松 | [A] Across The Universe

木のいのち木のこころ / 西岡常一、小川三夫、塩野米松

宮大工。
寺社仏閣を専門に建築、修繕を行う職人だが、昔は寺ごとに材木屋、瓦屋、左官屋などの職人がいた。
しかし、明治維新の廃仏毀釈によって仕事がなくなった職人たちは一人また一人と寺を離れ、昔ながらの宮大工もほとんどいなくなってしまった。
しかし、たった一人、法隆寺の宮大工としてありつづけた職人がいた。

西岡常一。(1995年没)

愚直なまでに昔からの教え(口伝)を守り、どんなに生活が苦しくても寺以外の仕事は受けなかった。
そのため暮らしは厳しく、跡継ぎとなる子供たちはほかの仕事を見つけることになった。

そんな西松氏が生前に語った宮大工の仕事は、人生に通じる奥深いものだ。


宮大工の仕事で大事なことは、まず樹の性質を見抜くこと。
木にも性質があり、山の南側の木は細く強いが、北側は太く柔らかい。左にねじれている木は、右にねじれている木と組み合わせればうまくいく。
しかし、現在では全て材木屋まかせだが、きれいに機械で製材した木でも後からその木のくせは出てくると言う。
後々くせが出ないようにするにはどうしたら良いか?
効率主義の世の中は「合板」を作り出して、木の性質、個性をなくしてしまった。


西岡は言う
「癖というのはなにも悪いもんやない、使い方なんです。癖のあるものを使うのはやっかいなもんですけど、うまく使ったらその方がいいということもありますのや。人間と同じですわ。癖の強いやつほど命も強いという感じですな。癖のない素直な木は弱い。耐用年数も短いですな。」


宮大工の技術は、徒弟制度によって伝承されていく。
住み込みで働いて、寝食を共にし、まずは刃物研ぎから修行が始まる。

この刃物研ぎは早くて一年。たいていはものになるまで二、三年はかかる。

しかし、手取り足取りするわけではない。
師匠は考えや想像力が膨らむようなことをポツリと呟く。
その一言が何かの拍子に理解出来たとき、そこからの上達は驚くほど早くなると言う。

「ものや技術は教われるものやおまへんのや。その人が覚えたいと思って、やる気にさせて、個性に合わせて伸びるように助けてやるんですな。」









西岡 常一, 小川 三夫, 塩野 米松
木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)