こどもはおもしろい / 河合隼雄 | [A] Across The Universe

こどもはおもしろい / 河合隼雄

10年以上前のこと、いきなりスイッチが入ったかのように河合隼雄先生の本をむさぼるように読んでいた時期がある。
きっかけは確か会社の後輩が心理カウンセラーの学校に通い始め、河合先生の本を私に薦めたからではなかっただろうか。
その頃購入した本はすでに古本屋の在庫となり、または他の方の手に渡っていると思われる。

先日も家中に溢れる本をブックオフで売るべく整理していたところ、なぜか河合先生のこの本が出てきた。
先日亡くなった尊敬する河合先生。
まるで、「まだ忘れてくれるな」とおっしゃっているかのようなタイミングで、本が出てきたものの、買った記憶も曖昧、それに内容は心理学とはほど遠い教育分野。
早速手にとり、読み始める。


河合先生ご自身も実は教師経験があり、教育には関心が深く、またこどもの絵本についての本も出されていたと記憶している。
そんな河合先生が、在野の教師の方々と対談された内容を収めたものがこの「こどもはおもしろい」。

教師の質、レベルうんぬんばかりが報道される昨今。
ニュースバリューがないために全く報道されないが、本当に頭が下がるような努力で教育に邁進されている先生も数多くいらっしゃる。
そんな先生達の日常を、河合先生が絶妙の間の手を入れつつ発掘していく。


板橋区立高島第四小学校(当時) 池田光子先生

池田先生の学校では、「こいのぼり集会」がある。
各クラスで思い思いのこいのぼりを作成し、子どもが作った手のひらや桜の形の「うろこ」に一人ひとりの願いを書き入れて、最後に上げる。
そんな行事のとき、5年生の池田先生のクラスでは子ども達の意向で「こい」ではなく「竜」のぼりになってしまった。
その次の年、6年生になった子ども達はどうしたか。
さらに過激になるかと思いきや、まったく普通のこいのぼりを作成したのだと言う。
子ども達の理屈は「平凡だけど、これだと一年生にもこいのぼりだとすぐにわかってもらえるから」。
「竜を経験したからこそ、普通のこいのぼりに戻れたのかなぁと思って・・・」
と池田先生はおっしゃる。


不登校の子どもを専門に教育を実践する生野学園。
その高校長(当時)村山実先生。

ここは全寮制のため、食事は全員が一緒に食べることになる。
変わっているのは、職員会議に厨房の方も参加される点。
なぜなら、厨房の方が実は大事な教育者だからだという。
誰彼かまわず怒鳴りつけることが可能なのは、厨房の方だけだと。
それぞれの子どもの好き嫌い、体調等を管理しながら毎日食材を選択する。
そういった不登校の子どもは裕福だが、食生活は貧困であることが多いのだそうだ。
よく外食はするが、母親の味を知らない。
だから味音痴が多く、「おいしい」と心から言えるのに一年以上はかかる。
そして、厨房は厨房で毎日ミーティングを持ち、子どもそれぞれの変化を報告しあう。


こんな素晴らしい先生達が前面に出てきて教育を説いていただきたい。






河合 隼雄
こどもはおもしろい (講談社プラスアルファ文庫)