梅干と日本刀 / 樋口清之 | [A] Across The Universe

梅干と日本刀 / 樋口清之

子どもの頃、NHK平日夕方の帯番組で「600こちら情報部」という番組があった。
非常にバラエティに富んだ内容で、毎日楽しみに見ていたことを思い出す。中でも金曜日の「何でも相談」(確か)という、視聴者からの難問奇問に専門家が答えるコーナーが特にお気に入りだった。今考えると回答者も豪華だった。全員は覚えていないが、バレーの松平康隆氏、TV構成の塚田茂氏、歴史学者樋口清之氏、等々。

その我らが愛すべき梅干博士こと樋口先生が書かれたのが梅干と日本刀。
題名からしてベネディクトの「菊と刀」を意識しているのだろう。
内容は端的にいうと「日本文化礼賛」
こう言うと単なる復古的な内容だと誤解されるかもしれないが、全く違って日本文化の合理性を事例を示しながら伝えている、樋口先生らしい本である。

日本文化のちょっとしたトリビア本と言っても良い。
文庫で600ページ超のボリュームなので読むのに骨が折れるが、それだけの価値あり。

面白いこと満載で沢山書きたいが、少しだけご紹介。

・日本酒は元々壷に入れて保管していた。しかし、腐ると困るのでフーゼル油という防腐作用のある杉の新芽を漬ける。その後、酒を杉樽に入れるようになるが、酒を温めて飲むようになる。これは杉樽に含まれるフーゼル油は飲むと頭が痛くなる作用があるため、暖めて揮発させるためであった。また、酒の本場は関西で、関西から江戸に運ばれてくる酒は「下り酒」と言った。江戸で作られた酒は評判が悪く、関西から下ってきていない酒、つまり「下らない酒」だった。これから意味が転じて物事がつまらないときなどには「くだらない」と表現されるようになった・

・住んでいる村に著しい被害を及ぼすようなことをした村人は「村八分」にされる。絶縁して孤立させることである。これは言葉の示す通り、八分であって十分ではない。十分とは、出産・成人・結婚・葬式・法事・病気・火事・水害・旅立ち・普請である。このうち二分を残すのが村八分なのだ。ちなみに二部とは火事と葬式。絶縁していても火事と葬式だけは村中の人が手伝うと言うことなのだ。

こんなトリビアが満載だ。
某局の世界一受けたい授業の歴史ネタはこの本か?と思ってしまうほどである。
それはそうだろう。樋口先生は私たちが歴史で習った登呂遺跡の発掘をされた方だ。

本の後半は精神論っぽくなるため面白さは薄れてくるが、全体を通して先人たる日本人への尊敬に溢れた内容である。それゆえ、読む側にも自然と勇気が沸き起こる。

食文化、住文化、精神文化、全て今まで生きてきた方々の試行錯誤の上に、現在最適な形のものが残っているのだと納得した。

いやー面白かった。
だって銀座も日本橋も元々海の中で、江戸時代に埋め立てられた土地だったなんて・・・
このくらいにしておこう

日本に生まれることができた幸せを実感する。

樋口 清之
完本 梅干と日本刀―日本人の知恵と独創の歴史