マーラー : 交響曲第6番 「悲劇的」 | JohnnyClassic

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ロック・ヴォーカリストJohnny が、厳選し紹介する
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【指揮】  リッカルド・シャイー

【演奏】  ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

【録音】  2012年

 

前回の4・5番は、副反応で熱が出てヨレヨレのところ(熱があるとテレビを見る事すら辛い)、正直に言うと、この全集の順番で仕方なく観たところがありました。今日は副反応からも回復し、当初からこのBOXで一番の楽しみにしていた6番。結論から言うと、素晴らしい内容で感動しました! 第4楽章のラスト、一旦静かになったところから、その後、一時的に強奏になり終了しますが、身震いするくらいの感動的なエンディングでした。

 

Blu-rayでこれだけ感動するのだから、会場ではさぞ感動したことでしょう。テンポが速くなり、バン!と盛り上がって終わるような曲でないのに、拍手喝采でした。

 

マーラーは、3・4・5番と何を道草を食っていたのでしょうか。確かに3は、2の続きの様に始まり、悪くないところもあり、「ノートルダムの鐘」の元ネタに感じるところも。しかしこの全集でも収録されていないように、いかんせん長過ぎます。4はモーツァルトっぽくメルヘン路線でいけば良いのに、変にマーラーらしいグロテスクさを入れるもんだから、あーこれは当時受けなかっただろうな、と思います。現代ではそれがマーラーらしくて好きなんだけど(余談ですがマーラーは男に絶大な人気があるようですね、分かります。ショパンが女性に人気があるように)。5は、なんか無理して受けを狙った感じ、聴いていてしらけるところがあります。

 

対してこの6、遂に開き直ったのか、やはり最高の曲です。1・2番の初期以降では、間違いなく最高傑作でしょう。改めてそう思えるBlu-rayのおうちライブ体験でした。

 

曲自体の内容ですが、第1楽章は、シャイー氏はかなりテンポよく進みます。80分は超える超大作なので、このくらいのテンポで飛ばしておいた方が良いのかもしれませんね。しかし迫力と重みがあります。大好きな指揮者であるショルティのものは、テンポが速過ぎて腰が据わっていない感じです。御大セルのものもピンと来ない。やはりベルティーニ氏の堂々としたテンポと解釈が一番好きなのですが、ここでのシャイー氏の速めのテンポは、また別のスタンダードとして私の中で受け入れられました。

 

第2楽章は、美しい緩徐楽章。なぜマーラーの5のアダージョよりこちらの方が評価されないのか不思議で仕方ありません。マーラーの交響曲中で最も美しい楽章である事は間違いありません。そのメロディに身を委ねてゆったりと、また少し切ない気持ちになります。

 

第3楽章は、スケルツォ。驚きました!会場で聴いていたら、間違って違う曲を始めたのでは?或いは聴きに来る日と曲を間違えたか?と錯覚しそうなくらい、物凄い速いテンポで始まって駆け抜けます。ヴァイオリン陣など、全員が超絶技巧的な速さで弾いている様な箇所もあります。なるほど、確かに長い曲で、まだ次の最終楽章も指揮者によっては30分!を超えるので、これくらいで終わらせておいた方が良いように思います。5番ではシャイー氏はライブらしくじっくりと少し遅めのテンポをとっていたので、1楽章といい6番での速さは意外なようでもあり、ただベートーヴェンの全集での速さを考えると納得も出来ました。

 

やっぱり、速いは正義!?笑 第4楽章も全く飽きることなく楽しめました。本当に3・4・5番の退屈感が嘘のようです。先日も書きましたが、このBlu-rayで、もう4・5を取り出す事はないでしょうか。その時間があれば、この6を何度でも聴きたいですね。前回のブログとは全く違う感想となりました。 

 

では、ライブの内容も観て参りましょう。まずは、このいつものホール。こじんまりとしていますが、一度聴いてみたいホールです。ステージを取り囲むかの様な設計になっていますね。なので演奏中も客席が真っ暗にならない感じがします。

 

相変わらずマーラーは管楽器を持ち上げて吹く指示を与えています。大変かとは思いますが。観ている方は楽しいですね。

 

コンマスは4・5とも違う若い方、この人もいいですね。しかし、マーラーの曲ごとに変わるなんて、層の厚さが凄いです。

 

ティンパニは2台!いいですねこの大迫力! 4で紹介した伊達男(右)が再びきましたよ笑。左の方は2番で叩いていた人ですね。他には、ブロムシュテット氏の第九で叩いていたメガネさんがいます。本当に層が厚い。私のお気に入りはもちろん伊達男です笑。ティンパニさんが、音程をチューニングするために耳を当てて調整している姿、まさにプロフェッショナルな感じがして、あれは実演で観ていてもとても好きです。ここでも両人とも行っています。伊達男の方がメインのティンパニな感じです。4楽章では左の人も割と叩きます。

 

訳の分からない楽器が沢山使われる事で有名な曲ですが、かつてベルティーニ氏の実演でそれは楽しめました。CDでははっきりと聴こえてこない様な音が聴こえてきて楽しめました。ハンマーが2度振り下ろされます。

 

ベルティーニ氏は、広島と長崎の原爆を予知した音だ、と解釈していました。興味深い解釈です。二度と核兵器が使われる事はあってはいけませんし、日本は唯一の被爆国として世界にその悲劇を伝え続け、また経済国として廃絶へ向けてプレッシャーをかけて行かねばなりません。私は、この曲の「悲劇的」は、そこまで重たくは捉えたくはないところがあります。音楽なので、もう少し気楽に楽しみたいかなと。ちょっと悲劇に酔っている、恋愛での悲劇(吹っ切れば何とでもなる)、或いは悲劇で生きている事を実感する、そんな感じの解釈で良いのではと思います。

 

曲を通じて、ミュートで弾いたり、普通の綺麗な音色だけではない様々な弾き方が要求されているハープも2台。出ました、5で発見した可愛い子、6でもいてくれて有難う♡ 真剣な表情にグッとくる(おバカ)。観る楽しみの一つでした。なのにそんなに映りません、もっと映して欲しかった! 左のベテランさんといいコンビ、これが二人とも若いとまた頼りなく見えちゃうからね。


 

そしてこの曲をテンポ良く飽きさせずに調理し、最後は素晴らしい感動でまとめ上げたマエストロ。第3楽章の前に、ゆっくりと時間を取っているのがとてもいいですね。ライブでもこういった時間が好きです。まだ先は長いですからね。以前も書きましたが、CDではただの空白でも、ライブではどの様な空白かがよく分かります。5番の1・2楽章の間は、咳の休憩もせずに短い空白でした。しかし、子供の頃からいつも思ってましたが、わざわざあの間にゴホゴホ咳するのって、必要なん? 普通に呼吸していたらいいと思うんだが、どうも品がない様に思えますね。

 

6番はアバドとルツェルンのBlu-rayを以前観ましたが、直ぐに売り払いました。まあ淡白でしたね、悲劇も何もない。更にはカメラワークも悪い、会場も明るすぎる。やはりベルティーニ氏&ケルン放送響の激しくも美しいCDが大好きなので(過去ブログご参照下さい。当時、6番のジャケットにサインを頂きました)、比肩しうる演奏に出逢えませんでした。そんなアバド盤の苦い失敗もあり、このBlu-rayも単品で買うか悩んでいました。そんな中、数年経ち(収録時は2012年と最近な気がするけどもう10年前!、ハープの子も今頃・・・)、BOXで値段が下がり、それでも頑張って購入。結果、大満足の6番でした。

 

大好きな6番が聴きやすいテンポで、20世紀を知る指揮者と楽団によって、こうしてHDの映像で残されて嬉しく思います。確かにベルティーニ氏のものとは全く異なるのですが、先に書いたようにまた別のものとして楽しめました。私自身、このブログを書き始めてから、少し幅が広がったのかもしれません。次は、7番。どうしても6番よりは落ちますが、楽しみではあります。8番は何言ってるか分からない(自身に教養がないので)合唱ばかりで飽きちゃうかな。9番はこれまた長いですが、マーラーのこれまでの要素が沢山詰まっている総まとめ的な作品なので楽しみです。