アメリカと北朝鮮の首脳が近く会談する予定だということが、驚きをもって伝えられている。

しかし、このことはそれほど意外なことだったのだろうか。

北朝鮮が昨年末、核兵器の開発を完成させたとして祝典を行った時点で、その予兆が感じられたのではないだろうか。さらに、金正恩委員長が今年はもっと驚くようなことが起きるだろうと言った時点で、その予兆はもっとはっきりしたのではないだろうか。トランプ大統領があっさりと受けたことは少々意外だったかもしれないが、それ以外は北朝鮮の予定通りの行動だったのではないだろうか。

北朝鮮の意図を図りかねて、経済制裁が効いたためではないかという人がいる。それもある程度は理由のうちかもしれないが、北朝鮮が制裁に耐えかねて方針の転換を余儀なくされたと解釈してしまえば、今後の情勢の予測を誤る可能性がある。

そもそも、北朝鮮は、軍備と経済発展の双方を目標にすると掲げていた。しかし、昨年の一連のミサイルや核実験など軍事一辺倒に突き進んでいく様を見れば、とても経済に力を入れているようにはみえなかった。これは軍事と経済発展とを同時並行的に進めていくということではなく、ある時は軍事を、ある時は経済に力を入れるということを交互に繰り返すということだったのではないだろうか。そうであれば、昨年、外部からは疑問の声が寄せられているものの、一連の核戦力の開発を完成させたことにしたということは、次に経済発展に舵をきることは十分予測できたことだ。

しかし、テレビや新聞の報道を見ていても、そういう見方をする人はほとんどなく、北朝鮮が核戦力の保持を最優先課題としているという見解に拘っている人たちは、金正恩あるいは、北朝鮮指導部は、独裁体制の常として、体制の維持にしか関心がなく、人民の幸福などは二の次だとの先入観にとらわれている。

また、金委員長が、先代の先軍政治を排除して党中心の政治に戻したことや、一連の軍幹部の粛清をみれば、彼が軍事を最優先にしているとも思えない。むしろ軍が経済活動に手を出し、一種の利権集団と化していることに危機感を抱いているのではないか。

とはいえ、アメリカと鋭く対立している現状では、軍をおろそかにするわけにはいかない。

その意味でも、アメリカとの対話を求めているのだろう。