アジア大会の柔道で中国選手が相手日本人選手に噛みつき行為を行い反則負けとなりました。実は柔道の試合は戦いであり、基本反則一発負けというのはほとんどありません。僕も過去に3回しか見たことがないし、生で見たのは1回だけ。通常、軽微な反則で「指導」と言うのが入り指導が3回累積して反則負けはよくあります。でも一発は珍しいというか、基本ない。

 柔道の審判の教本(ルールブック)を見返したところ、噛みつきは反則とは書かれてませんでした。外国人の場合、ルールーブックに反則と書かれていないのだから反則にならないと考える人がいそうですが・・。
 今回審判が反則負けと判断したのは、ルールブックの反則の欄の一番最後に書かれている「柔道精神に反する行為」に該当し判断されたと思います。柔道精神というのは実は奥深く範囲が広いのですが、試合という狭義で考えると2点、「卑怯な行為」と「危険行為」です。噛みつきは危険行為と考えられます。

 危険行為としては、殴る、髪の毛を引っ張る、顔面への攻撃、金的も入るかな。過度に頭部や頚部にストレスのかかる行為も反則です。

 柔道は礼に始まり礼に終わります。これは試合もそうです。礼とは相手に対するリスペクトや対戦をしてくれることへの感謝を伝える行為。相手を危険に晒せたり、怪我をさせるようなことはやってはいけないし慎むべきです。外国では柔道選手に柔道精神が伝わっていないことはよく指摘されることです。

 実は僕も正確に柔道精神について学び、理解に至ったのは選手を引退したあと。特に指導者の勉強を始めてからです。「心技体」や「柔よく剛を制す」は知っていましたが、「精力善用」「自他共栄」は聞いたことがなかったです。日本でもそのようなものです。柔道の選手が柔道精神を身に付けていないという恥ずかしい現状。これは指導者の力不足。そこまで手が回っていない、手を回せる能力がなかったのが原因でしょう。
 身体を強くする、技を覚える、同時に柔道精神を身につけ実行できるようになる。このような人間を育てるのが指導者の務めかと思います。

 

 なんで負けたの?、という態度を示す中国選手。こういう態度も柔道精神に反すると考えられます。柔道精神を外国人に伝えるのはかなり難しいと思う。相当の根気と手間が必要でしょう。だいたい価値観が違いすぎるのだから。ボクシングや総合格闘技の試合前に相手を罵倒したり侮辱する態度を取り合うことがありますが、こう言うのが世界基準です。しかし柔道は全く真逆の価値観を持っています。相手をリスペクトして尊重することを求めます。これが柔道精神です。だから難しい。

 

ワールドカップのひと月前にチームを作るのは無理です。相手は4年間準備をしているのです。 アリ・アブディ