★魔道士リザの冒険譚★
-星ドラStory日誌vol.065-
第9話<囚われた全知全能>第8幕
「本拠地の洗礼」
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔オリオリは・・・現在、全宇宙に
君臨する邪悪な組織『宇宙政府』、これに
反抗する為レジスタンスグループ『義勇軍』
を率いて打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ようやく処刑の危機から救出できた全知全能
のオンナ、ゼンチャン。
しかし安堵する間も無く再びゼンチャンは
政府に囚われてしまった。
コッツと共に・・・。
ベェルの町でアタシが逃してしまった
政府監視員の報告によってアタシ達の行動
が政府側に筒抜けになってしまっていた
からなの

ここら辺一帯の牢獄、処刑場を統括する
役人のボスに連れ去られたゼンチャンと
コッツを救出する為、そのボスの居場所で
あろう『処刑の洞窟』へとアタシ達は向かっ
ていた。
アタシの判断ミスで起きた2度目のゼン
チャン囚われ事件、なんとしてでも今度
こそ救出してみせる。
いつも以上にアタシは使命感にかられて
いたの、当然だけどね

監獄の砦の役人コモゴモスが処刑の洞窟
への先導役を申し出てくれていた。
彼の先導の元、目的地を目指す。
彼もまた政府への裏切り行為から罪を問わ
れるハメになってしまっていた。
どうせだったら座して沙汰を待つよりアタシ
達と行動を共にしていた方が安全だもんね、
アタシ達もそれは望むところだった。
「み、見えてきた。義勇軍の諸君、あの洞窟
がヤツの根城だ。」
深い岩山群のさらに奥にその洞窟は大きな
口を開けるかのように存在していた。
アタシ達を今にも吞み込もうとしている
ように。
書からオリオリが現れる。
「ゼンチャンとコッツを攫った魔物は
『義勇軍の行動は筒抜けだ』とも言って
いました。あの洞窟に誘い込むのは罠かも
しれません、しかしゼンチャンとコッツが
あそこに囚われている以上、罠とわかって
いても突入しないワケにはいきませんっ!
リザさん達っ!お願いしますっ!
リザさん達であればたとえ罠が待ち構えて
いようともきっと跳ね返してくれると信じ
ていますっ!!」
もちろんよオリオリッ!
ゼンチャンだけでなくアタシ達の大事な
仲間も捕らえられてるんですもの、罠
だろうがなんだろうが打ち破ってみせるっ!
「・・・あの洞窟は、その名の通り洞窟
全体が処刑場そのものだ、それこそが罠と
いえば罠だ。
どんな仕掛けが隠されているか、ワシでも
知らないんだ。
諸君、意気込むのは大事だが慎重に進む事
をオススメする!」
「わかりました、ご忠告ありがとうコモゴ
モスさん!
では警戒を怠らず侵入しましょうっ!」
オリオリの号令のもとアタシ達は洞窟内に
突入したっ!
洞窟の中は・・・暗闇が支配していた。
モガ丸が道具袋から松明を取り出し火を
灯す。
「モガ〜、処刑の洞窟って名前だけでも
うすら寒い気持ちになるっていうのにこう
真っ暗じゃ不気味過ぎるぞっ!」
確かに。
松明で多少、洞窟内の様子が視認できる
ようになったとはいえ薄暗いことにかわり
はない。
その光景が余計に恐怖心を煽る。
注意深く歩みを進めるとやがて少し開けた
空間にたどり着いた。
「ここは少し広い空間だな。」
そう言うとモガ丸は松明で辺りを照らして
回った。
すると。
松明の光に反射して何かがキラリと光った
ように見えた。
その光は1つや2つではなく無数だったっ!
「モガ〜?何が光ったんだ〜??・・・
え、ええええええ!!!」
「ピッピピピィッ!!ピピピィィィィィイイ
っっっ!!!」
松明の光がこの空間の全容を照らし出すっ!
なんとこの空間の壁一面に剣のような刃物
が無数に設置されていたっ!!
刃は全てこちらに向かっているっ!
無数の光の正体はこれかっ!?
「あわわわ・・・な、なんだこの悪趣味な
壁は・・・!?
お、おぉう!?み、見ろっ!
反対側の壁も同じように剣が設置されて
いるぞっ!!!」
「ピピピィッ!!」
「むぅぅ、この広間は〜〜!
く、串刺しの刑の処刑場かぁ!?」
コモゴモスが恐ろしい響きの単語を発した。
「串刺しの刑〜〜〜??な、なんておっか
ないんだ・・・。」
「お、おそらく・・・無数の剣の壁が動いて
両側から挟み込まれるのではないか?
そ、そのような処刑方法があると噂で聞いた
事がある・・・。」
「か、壁が動く〜〜〜???
じゃ、じゃあ何か、今オイラ達が立ってる
この位置がまさにっ!
しゅっ囚人が串刺しにされる場所って事
かぁ?あわわわ・・・」
コモゴモスの言葉を聞きモガ丸は処刑の
様子を想像してしまったのか、足が震え
だしたの。
そしてそのままジリジリと後ずさりを
始めた。
その先にある“踏んではいけないソレ”に
向かって・・・。
「きっ気をつけろ諸君っ!何処かにこの壁
が作動する仕掛けらしきものが存在するかも
しれんっ!むやみやたらと移動したり壁に
触れてはならんぞ・・・」
ガタリ!
後ずさりをしていたモガ丸のほうから何か
を踏んでしまった音が聞こえてきた!
「え?・・・オイラ今、何か踏んでしまった
ぞ!?なんか明らかに其処だけ出っ張って
て・・・モガーーー!!こ、コモゴモスッ!
オイラひょっとして・・・処刑装置の
スイッチを踏んじまったのかーーーー!?」
なっなんですってーーー!?
も、モガ丸ぅぅぅ、またアンタしでかした
のぉ!!??
ゴゴゴゴゴ
「ぬぅマズイっ!
やはりモガ丸殿が踏んだのは処刑装置の
作動スイッチのようだっ!
け、剣山の壁が動き始めたっ!!
わ、我々がまさに処刑されてしまうぞっ!」
「ひ、ひええええ!!!
串刺しになって死ぬなんてイヤだぁぁぁ」
「ピピピィッ!!!」
クッ!このままでは全滅だっ!
進んできた道へ引き返すかっ!?
アタシの脳裏に退却の2文字が一瞬よぎる!
進んできた方向を振り返るも・・・退却が
不可能だと思い知らされる光景が視界に
飛び込んできた!
今進んできた通路を塞ぐように別の壁が
現れたのっ!
じゃあ進行方向はっ!?
アタシは振り返り洞窟内部へ進む方向に視線
を送ったっ!
進行方向にも壁が現れて今にも閉じようと
しているっ!!
こっ、これではっ!
本当に剣山の壁に押し潰されて串刺しに
なってしまうっ!!
「みんなっ!急いでっ!!奥への通路へ
向かって走るのよっ!!」
アタシは奥の通路へ向かうよう全員に指示を
飛ばしたっ!!
宇宙王の書を持っているモガ丸とスラッピ
を先頭にして全員それに続くっ!
アタシは最後尾に回って駆け出すっ!!
ゴゴゴゴゴ
剣山の壁は両側から無情に向かってくるっ!
「はぁはぁはぁっ!!!ダァーーーーっ!!!!」
先頭のモガ丸とスラッピが閉じかけの壁の
隙間からなんとか脱出したっ!
コモゴモス、レイファン、ジョギーも続いて
脱出っ!
「リザーーーー!は、早くーーーー!
閉じてしまうぞっ!!」
「リザさんっ!!!」
「リザ姉ぇっ!!!」
ク〜〜ッ!!ま、間に合わないかっ!?
こ、こうなればっ!!
あ、あの呪文でっ!!!
「アストロンッ!!」
ガタァァァァンッ!!!!
「リザーーーーーーーーッ!!!」
「ピピピィーーーーーーっ!!!」
アタシが呪文を詠唱した刹那、両の剣山の
壁は閉じ切ってしまった・・・。
「あ、あ、あぁぁぁ!
リ、リザァァァァァァァァァァァァァ、
お、オイラのせいでぇぇ!!
うわぁぁぁぁぁっ!!!」
モガ丸が閉じてしまった壁に向かって
アタシの名を叫ぶ。
剣山の壁に飛びつき力ずくで開けようと
もがく。けど壁はビクともしない。
「む、こ、ここを見てみろっ!
作動スイッチらしきものが此処にもある、
おそらく処刑装置を外側から操作する場合
のモノだろう。」
「コモゴモスさんっ!は、早くそのスイッチ
をっ!!リ、リザさんならっ!リザさんなら
きっと生きているはずっ!は、早く剣山から
か、解放・・・してあげないと・・・。」
オリオリが消え入りそうな声でコモゴモス
に壁の解除スイッチを押すように促す。
「む、むぅ、諸君らの気持ちは痛いほど
わかるが・・・この装置が作動完了して
しまった今、あの魔道士はもう生きては
・・・」
「そ、そんなワケないっ!!!
リザ姉ちゃんが死ぬもんかっ!!!
きっと生きてるっ!!少しでも息があれば
私が呪文で傷を癒すもんっ!!
だから早く解放してあげなきゃっ!!」
「そ、そうだな、ともかく・・・こんな
恐ろしい装置から解放してやろう。
しかし君らは見ないほうがいいかも
しれんぞ・・・?」
「い、いいから早くっ!助かるものも
助からないっ!!」
「・・・わかった。」
ガタン
コモゴモスが剣山の壁の解除ボタンを押す。
ゴゴゴゴゴ
すると合わさっていた一対の壁が元の位置
に戻るべく動き始めた。
「む、しかし妙だな。作動が完了すれば
壁と壁はピタリと合わさるのかと思って
いたが・・・。割と大きな隙間を残した
まま止まっていたようでもあるな?」
「え?そ、それはどういう??」
コモゴモスは違和感を感じたみたい。
作動が完了した、つまり処刑が完了した壁
はもっとピタリと合わさるはずだと。
ふっふ〜ん、そう、その隙間こそがアタシ
が生きてる証拠。
ゴゴゴゴゴ
やがて壁が所定の位置まで戻った。
床にはアタシの串刺しの死体が転がってる
はず・・・だった。
「モガ〜・・・リザぁあ、痛かっただろう、
今助けてやるぞ・・・」
そう言いながらもモガ丸はアタシの惨殺死体
を想像したのか、中の様子を直視できない
ようだった。
「むっ!?こ、これは!!!な、なんとっ!
ハハハハハッ!そういう事だったかっ!!
見てみろ、モガ丸殿っ!!見てみろ!
諸君っ!!冒険王殿は無事だぁっ!!!」
「えっ!?ぶ、無事っ!!??」
「えぇ!?リ、リザさん!?」
「リザ姉っ!!」
「リザ姉ちゃんっ!!」
仲間達全員が“処刑現場”に慌てて駆け寄る!
そこにはっ!!
鉄像と化したアタシが転がっていたの!
「モガーーーーー!!??
な、なんだこりゃあ!!??リ、リザが
鉄の塊になっちゃってるぞ??」
「あっ!!そうかっ!!
アストロンっ!!!」
そう、鉄化呪文「アストロン」。
対象を鉄の塊に変化させて敵からのあら
ゆるダメージを無効化する究極の防御呪文。
それをアタシは自分自身に詠唱したの。
処刑エリアからの脱出に間に合わないと
判断したアタシは咄嗟にアストロンを唱えて
危機を乗り越えたってワケ。
剣山の壁と壁がキッチリ合わなかったのは
アタシという鉄の塊が“挟まっていた”せい
だったってワケ。
しばらくしてアストロンの効力が解けて
鉄像だったアタシはみるみる元の姿に戻って
いった。
「うほ〜〜〜〜〜っ!!スゲーぞリザっ!!
お前ホントになんでもありだな、ホントに
魔法使いみたいだなっ!!!」
イヤ・・・アタシれっきとした魔法使いって
いう職業なんですけど?

「リ、リザさんよくご無事で!や、やはり
貴女は偉大な冒険王っ!このような邪悪な
罠すら跳ね除けるとは!」
「むぅぅ、恐れ入ったっ!なんという発想
とそれを実現するチカラの持ち主なのだ、
道理でワシらごときが叶わないワケだ、
素晴らし過ぎるぞ、冒険王っ!!」
「まさか、アストロンとはな!流石に今回
ばっかりはリザ姉でもダメかと思ってしまっ
たけど・・・さすがだな!」
「姉ちゃん・・・よかったぁ!」
皆が口々にアタシの無事を喜んでくれた。
アタシももうダメかって思ったけどね

それに装置に使われてる剣の材質がアスト
ロンより強かったらここまで無傷では済ま
なかったと思う。
死にはしなかっただろうけど大なり小なり
のダメージは覚悟してたんだけど・・・。
まぁ無傷でラッキーだったわ

「ラッキーって・・・オイラ・・・ホント
にもう・・・リザが死んでしまったかって
・・・うぅぅぅ、けど・・・ホントに良かっ
た〜〜〜」
モガ丸・・・ゴメンね、心配かけたね。
・・・ってモガ丸っ!!!
そもそもアンタが作動スイッチを踏んじゃ
ったんでしょう!?
なんでアタシが謝るの・・・ってまぁ
いっかぁ。
それを口にしたら流石にモガ丸でも凹ん
じゃうかぁ。
ヨシ、結果オーライ!
余計な時間を使っちゃったわ、引き続き
洞窟内を進もうっ!
ゼンチャンとコッツが心配だわっ!
「今ので身をもってわかっただろう。
この洞窟そのものがトラップの集合体なの
だ。他にも処刑装置を兼ねたトラップは
まだまだ存在するはず。
より警戒を強めて奥へ進もう!」
「モガッ!オイラよぉくわかった!そして
反省したぞ!もうあんな思いはゴメンだ、
リザ達の足を引っ張らないようにするぞ!」
そうね、この洞窟のことはパーティ全員が
知らないんだ、今回のことで身をもって
知ることができた。
トラップがたくさん仕掛けてあることを
想定内にしなきゃね。
この洞窟そのものが巨大なトラップである
こと、それを実感しながら、アタシ達は
ゼンチャンとコッツを救出するべく、さらに
洞窟の奥へと進んだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
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