今年度のアカデミー賞で話題になったときから、ずっと見たかった作品。

「すべてはピンクの+から始まった
16歳の秋、それは突然訪れた-。
ジュノは、友達以上恋人未満のポーリーと興味本位でした1度きりのセックスで妊娠してしまう。
突然降りかかってきた"妊娠"という大きな壁、親友のリアに相談する。
両親にどう伝える?ポーリーとの関係は?産むべきか産まざるべきか、それとも…。
やがて初夏-、大人顔負けのクールな観察眼で、初めての"事件"を乗り越えようとする、ジュノ。
体形が変わるにつれ、心も成長していく彼女が導き出した答えとは?」(チラシより)

本作は、当初公開わずか全米で7館というミニシアター系の作品であったにもかかわらず、口コミで評判が評判を呼び、公開館数が増えると同時に、興行成績もうなぎ上り、海外も含めると2億ドルを突破したという噂の作品。
この興行成績は、実は今年度のアカデミー賞作品賞ノミネート作品の中でダントツ。
今年は、批評家の評価は高くても興行成績はイマイチという作品が多かった中、観客も大いに評価した、文句なしにNo.1の作品だったのだ。
でもって、この作品には、「いい話」が沢山付いている。
まず、この作品の脚本家で、アカデミー脚本賞を受賞したディアブロ=コーディは、元ストリッパーという異色のキャリア。まさにアメリカンドリーム。
今後売れっ子脚本家となること間違いない。
でもって、監督のジェイソン=ライトマンは、「ゴーストバスターズ」シリーズで知られるコメディ映画監督のアイバン=ライトマン。息子のアカデミー監督賞ノミネートに感激のあまり、電話で泣いてしまったという。

さて、肝心の作品の内容だが、これが非常に素晴らしい。
詳しく書いちゃうとネタバレになっちゃうから、書けないことが悔しいくらいに、素晴らしい作品で、後味さわやか。
いかにも手作り的な雰囲気で始まる映画のスタート。
アニメと実写を織り交ぜた雰囲気が、温かくて素敵である。
ピンクの十字に思わぬ運命の時を迎えたジュノ。
最初は、普通の十代の少女なら誰しもが選ぶであろう堕胎の道に進もうとするのだが、胎児にも爪が生えている、ということを知って思いとどまる。
自らのお腹の中にいるのは、紛れもなく新しい命を持った人間であることを理解したのだ。
その後、娘想いの継母や、娘を信じる父親に囲まれながら、赤ちゃんの貰い手を捜し始める。。。
当初は、簡単で、どこか他人事的に捉えていた自分の赤ちゃん、しかし、お腹の中で赤ちゃんが成長していくにつれ、ジュノも精神的に成長していき、赤ちゃんへの想いが変わっていく。
親友や家族、周囲の人々に支えられながら、様々な苦悩と戦い、来るべき日を迎えるため準備を進めていく。
そして、その日はやって来た。。。その結果やいかに?
ラストは、心温まるとともに、子供を持つ親として、そして過去の自分の経験を基に、涙せずにはいられないものだった。。。
しかし、どこまでも前向きで、純粋な心の持ち主でありながら、大人以上に鋭い観察眼を持ち、しっかり「自分」を持っているジュノの性格に、清清しさを感じさせられる。
彼女を応援せずにはいられないし、彼女に力をもらえる作品。
等身大で、身近に感じられるジュノの存在に、心を温めてもらえ、ハートをわしづかみにされ、そして、前向きさを学ばせてもらえるヒューマンドラマの傑作。
全米の、そして世界の観客が本作を評価したのは当然のこと。
日本でも、是非、多くの人に映画館に足を運んでもらいたい作品である。