日本では、うつ病かうつ状態の可能性の高い人のうち、4人に1人しか病院等を受診していないのだが、これでも「随分と向上」しているのだとか。
やるせない世の中である。
日本では、かつてより「心の病」に関する理解が不足しており、また、周囲から奇特な目で見られたくないが故に、「ヤバイ」とおそらく自分では感じていても受診しようとは思わない人が多いのではないか。
或いは、「自分が弱いだけだ」「努力不足なんじゃないだろうか」「自分が逃げているだけだ」と、当の本人は自分を責めているだけで、より悪循環に入ってしまっているのかもしれない。
この手の「心の病」には、周囲の理解と、周囲の気付き、そして本人の相談に親身に対応してあげたり、受診をアドバイスしてあげることが非常に重要。

かく言う自分自身、「心の病」とは長い付き合い。
初めて受診したのは、10年ほど前だろうか。
不眠症がひどくなり体調を崩しがちになり、仕事にも差支えが出始めたものだから、総合病院を受診したところ、総合内科などにたらい回しにされて、「体調を崩しがち」になって悪くなった腹の具合だとかだけを診察してくれて、肝心な部分、根本的な部分は置き去りにされた。
不眠症のことや、色んな部分に不具合が生じていたものだから不定愁訴についても説明したのだが、精神科なり心療内科なりに回してもらうには、非常に時間が掛かった。
でもって、やっとこさ辿り着いた精神科や心療内科では、睡眠薬を処方してもらうだけ。
初めて処方された睡眠薬は、ほとんどというか、全く効かなかった。
病院や医療への不信感も高まる中、会社の上司から、社内に定期的に来ている職業医の先生が、非常に評判も高い、とのアドバイスをくれて、その職業医との面談・カウンセリングを受けることに。
そこで初めて、色んな話、自分として問題だと思っていることを色々質問され、病気の背景を辿ってくれ始めた。
ただ、当時既に医療への不信感が高まっていたことと、誰にも話したくない家族の過去を持っている僕には、当時、仕事上の壁にぶつかって悩み抜いているという、氷山のほんの片隅についてのみしか説明ができなかった。
それでも、その時出会った先生は、親身に僕のことを考えてくださり、色んなアドバイスをしてくれた。
結局、2度に亘り、3ヶ月ずつもの休職を繰り返すことにはなったが、精神的に落ち込んでしまったりパニックになってしまった時には、本来予約受診しか認められない先生の勤務先での診察にも応じてくれたし、体調の不具合を直しつつ、精神面を立て直すための薬を処方してくれ、気分転換のヒントをくれたり、休職中に試してみるといいことなどを、色々とアドバイスして細かく様子を伺ってくれた。
その甲斐あって、一旦は薬との縁も切れて、「完治」ということになり、転勤も果たせたわけだが……。
キチンと、過去からの経緯を話していなかったツケなのか、実際には不眠症は完全に良くなったわけではなく、睡眠薬やこう鬱剤、精神安定剤といった薬に嫌悪感のあった自分が、半分自分に言い聞かせ、騙し騙しやりながら、何とか治療を打ち切ったというのが事実であった。
それでも、3年ほどは、時折有給をもらうことはあったものの、転勤先でそれなりに業務をこなし続けて来た。表面的には、順調に。
しかし、4年目に差し掛かった頃に、生まれて初めての気管支喘息を発症。
繰り返す発作に悩まされる日々を何とか切り抜け、内科医からの指示により一ヶ月ほど様子を見て休職した後、復職したのだが、これからが本格的な悪循環の始まりであった。
復職しては、以前に増してひどくなった不眠症に悩まされ、眠れないせいか体調を崩しがちになり、改めて新しい地での精神科の職業医にカウンセリングを受け、さらにその医師の紹介で著名な病院での診察を受けたが、先生との相性もよくなく、良くなる傾向は一向にないまま時間だけが過ぎていった。
別の職業医のコネで、同じ病院ではあるものの別の医師の診察を受けることができるようになり、その医師は、今までになく生まれ育った環境や過去からの家族構成や育ってきた環境における問題点、会社生活の経緯等を時間をかけて細かくヒアリングしてくれて、ある程度自分に潜む問題点を浮き彫りにすることができるようになった。
しかし、ここでも、全てを曝け出したわけではない。。。
長期の休職を余儀なくされたが、最終的には、休んでいることへの後ろめたさに耐え切れなくなり、自分を騙し、医師に嘘を付き、「症状は改善された」として復職するのだが、長持ちはしない。
そして、休職と復職とを繰り返す日々が始まった。
それでも尚、無理矢理復職して、何気なく毎日を過ごして、再度転勤を果たし、自分の希望する場所に異動し、それからは驚くほど順調に体調も精神面でも改善が見られていたのだが……再びひどい気管支喘息の発作に悩まされるようになり、不眠症も悪化。
もう数え切れていないが……再び休職して半年余りが過ぎたのが今の自分。
今までと比べて、アダルトチルドレンに属する自分の側面も受け入れることができ、今まで以上に自分を治したい、改善したいとの思いも強く持ち、できるだけ自分の問題点と正面から向き合い、改善を図るためにどうすればいいのか、必死に考える日々を過ごしている。
医師曰く、気管支喘息は大人になってから発症した以上、一生の付き合いになるとの事。
そして、精神面での疾患も、風邪のようにぶり返しやすく、完治というのはなきに等しいものとか。
でも、今の自分はそんな事は認めたくない。
何より先に、まだこの手の「心の病」について、日本ではケアの方法も、社会の目も、福利厚生面での待遇も、極めて後進的であり、僕は偶々会社に恵まれてカウンセリングを受けることが出来る段取りをつけることが出来たが、多くの人がカウンセリングを受ける前に立ちはだかる、差別的な考えや「心の病」=「オカシイ人間」のレッテルといった大きな壁を越えられずにいるのが現実。
したがって、「治る」ものなのか「治らない」ものなのか、ハッキリ分かってない上に、治療法も探り探りの薬物療法しかないのが現状。
だから、楽観的に構えすぎて、なかなか「治らない」現実に大きくショックを受けてばかりもいられないし、悲観的に構えて「治らない」ものとして諦めてしまうのも得策ではない。
とりあえず、僕自身の今の思いとしては、一生薬のお世話になるのはイヤだ。
そうでなくても、長期に亘る服用の副作用で、体力は相当落ちてしまっているし、安定剤やこう鬱剤の影響なのか、記憶にあやふやな部分も出始めたりしている。
気力も強く持ち続けられないでいる。
こんな現状のままで一生を過ごす、或いは、薬の副作用に悩みを増しながら一生を過ごすなんてゴメンだ。
だから、きっと根本的な問題点が明確になり、その解決方法を探れば、どこかで薬に頼らなくてもよくなる、完治とはいかないまでもそれに近い状態に持っていける、そう目標を定めて、今は、今自分にできることに注力しながら、一歩ずつ、ゆっくりとで構わないから、改善できる部分を探して、少しずつ少しずつ前に足を踏み出して行きたい。
そして、何とか、まずは復職を果たして、2度と休職を繰り返さないで済むよう、悪循環を断ち切りたい。
治るのか、治らないのかは、今はまだ分からないから、深く考えるのは止そう。
ただ、医学の進歩は、日進月歩なのは確かで、わずかな期間に大きく進歩している分野でもある。
期待は持ち続けていたい。医学にも、自分にも。
気管支喘息・うつ病・抑うつ状態・不眠症・自律神経失調症等々、何やかやと自分に付けられる病名。
ま、何でもいいさ。病名なんて。大きな意味を持たない。
自分で、自分自身が心身共に健康だ、と思える日が一日も速く来ることを目指して、自分で変えられることから変えていくようにしよう。