血圧を下げる8つの自然なアプローチ
By エリック・マドリッド医学博士
高血圧は、動脈内の圧力とスティフネス(硬化度)の上昇により、必要以上に拍出量を増加させて心臓に負担をかける一般的な疾患です。全世界で何億人(成人の4人に1人)もの患者が存在するこの病態は、症状が現れないことが多いため、高血圧と診断されずに放置されるケースが多く見られます。高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるのはそのためです。高血圧は、特に治療せずに放っておくと、心臓発作、脳卒中、心不全、腎疾患のリスクを高めることが知られています。
2つの数値からなる血圧は、従来より水銀柱ミリメートル(mmHg)で測定されます。最初の数値は収縮期血圧、2番目の数値は拡張期血圧です。血圧は120/80(収縮期/拡張期)のように表示されます。
- 収縮期血圧:心臓が拍出する際、動脈にかける圧力。
- 拡張期血圧:心臓の安静時の動脈内の圧力。
高血圧の人は、かかりつけ医の管理下で治療を続けることが大切です。
血圧の解釈(米国基準値) :
*子供の血圧値は別基準 |
高血圧の原因とは?
高血圧には、運動不足、栄養バランスの悪い食事、太り過ぎ、肥満、インスリン抵抗性、前糖尿病、糖尿病、腎疾患、特定の薬物治療、遺伝など、さまざまな原因があります。他に特定の原因が見られない場合は、加齢による発症が考えられます。
高血圧は管理可能でしょうか?
上昇血圧またはステージ1高血圧にある方は、生活習慣を見直すことで、血圧の正常化が図れます。新たに高血圧と診断された方は、食事と運動を改善するだけでも治療できる場合があります。ただし、これは通常、ほぼリスク要因がなく、デジタル血圧計で家庭血圧モニタリングを行うなど、積極的かつ速やかに生活習慣の改善に努めている方に限られます。
野菜、ナッツ類、新鮮な果物が豊富な食事は、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、循環系のバランスと健康維持に役立つ栄養素を供給するため有益と考えられます。
従来の血圧治療
科学と製薬業界の進歩により、医師・患者が高血圧に対処し、それに伴うリスクを減らすことが可能になりました。上昇した血圧を下げる主な手段として、過去数十年にわたって降圧剤が使用されてきました。
以下、広く使用される降圧剤を種類別にまとめました。いずれも、最低一度は私の患者に使用したものです。その有効性については、ほぼ疑問の余地はないものの、多くの患者の懸念事項は副作用です。それでも、リスクよりメリットの方が大きいケースがほとんどです。血圧コントロールには、各患者が異なる種類の薬剤を複数服用することも少なくありません。
一般に使用される降圧剤
- β遮断薬(アテノロール、メトプロロール、カルベジロール、ソタロール)
- カルシウム拮抗剤(アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン)
- 利尿薬(ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、クロルタリドン、スピロノラクトン)
- ACE阻害剤(リシノプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、ラミプリル、フォシノプリル)
- アンジオテンシン受容体拮抗薬(オルメサルタン、ロサルタン、イルベサルタン)
- α遮断薬(クロニジン)
- 血管拡張薬(ヒドララジン)
自然な血圧療法
- 野菜・果物が豊富な食事
- 減量
- ストレス軽減と運動習慣
- 祈りを含む瞑想およびリラクゼーション術
- サプリメント
血圧降下促進が期待できるサプリメント
以下、血圧降下に役立つことが示されているサプリメントについてご説明しましょう。処方薬を服用中の方は、投薬調整が必要になる場合があるため、サプリメント摂取を開始する前にかかりつけ医にご相談ください。
ビートなど多くの野菜に含まれる高濃度の硝酸塩は、摂取時にヒトの口腔内細菌によって亜硝酸塩に還元されます。亜硝酸塩は、唾液に溶け、嚥下(えんか)されて血液中に吸収されると、強力な血管拡張成分である亜酸化窒素に変換されます。こうして、血圧降下作用が得られるわけです。ビートルート果汁とエキスには、特に高濃度の無機NO3(硝酸塩)が含まれています。
British Journal of Nutrition誌の2012年の研究では、ビートルート摂取がプラセボと比較されました。その結果、ビートルートを100g以上摂取すると、血圧が大幅に低下することが示されました。Journal of Nutrition誌掲載の2013年の研究では、無機硝酸塩が豊富に含まれるビートルート果汁を摂取すると、収縮期血圧が大幅に低下することがわかっています。また、評価対象となった一連の研究の参加者は計254人です。
2014年の研究では、太り過ぎの被験者に対するビートルートサプリメントの効果が評価されました。そのうち、濃縮液を摂取した被験者の血圧が7ポイント以上低下したことがわかりました。さらに、European Journal of Nutrition誌に発表された2016年の研究では、ビートルートのサプリメント摂取が内皮機能の改善に役立つことが示されました。これは、血圧改善のメカニズムを理解する手がかりとなるでしょう。
最後に、Advances in Nutrition誌の2017年のメタ解析研究では、ビート果汁摂取により、血圧値が全体的に3.55/1.22 mmHg低下したという結果が出ています。これが、血管の健康全般に重要な役割を果たすと考えられます。
推奨用量 :ラベルの指示どおり。
コエンザイムQ10 (CoQ10)、別名ユビキノンは、生命に欠かせない天然由来の抗酸化物質です。コエンザイムQ10は、細胞のエネルギー生成に不可欠です。細胞のエネルギー生成は、主として、体内でエネルギーを生成する細胞の発電所と言われるミトコンドリアの一部で行われます。
最も活動的な器官である心臓は、その代謝要求を満たすために、とりわけ多くのコエンザイムQ10を必要とし、生成します。ただし、心疾患患者の機能の最適化を目指すには、さらに高濃度のCoQ10が必要です。
Journal of Human Hypertension誌に発表された2007年の研究は、「…コエンザイムQ10は、重大な副作用を生じることなく、高血圧患者の収縮期血圧を最大17 mmHg、拡張期血圧を最大10 mmHg低下させる可能性がある。」と結論付けています。この研究は、計362人の患者からなる12件の試験を調査するメタ解析でした。
日本人男性アスリートがCoQ10を1日600mg摂取した2015年の二重盲検ランダム化比較研究では、10日後、アスリートらの拡張期血圧に大幅な低下が見られました。
また、Annals of Medicine誌掲載の2015年の研究と同様に、メイヨー・クリニックも高血圧へのCoQ10使用を支持しています。ただし、2016年のコクランレビューの研究では、血圧降下に顕著な効果は見られませんでした。
効果は微妙なものと思われます。計684人が参加したランダム化比較試験17件を調査した2018年の研究では、「CoQ10補給で収縮期血圧(SBP)値が低下する可能性があるとは言うものの、代謝疾患患者の拡張期血圧(DBP)値への効果は見られなかった」としています。
推奨用量 :1日100〜300mg。最大600mgが有効と考えられます。
サンザシの実は、サンザシ(Crataegus)属に分類される低木に生る小さな果実です。過去何百年にもわたって医療目的に使用されてきた生薬としてのサンザシの実の歴史は、伝統中国医学にさかのぼります。サンザシの実は、心臓の健康や血圧降下の他、消化障害にも用いられてきました。抗酸化物質が豊富なサンザシの実は、特に抗炎症作用にも優れたポリフェノールが含まれています。
高血圧患者36人を対象とした2002年の研究では、サンザシの実500mgが拡張期血圧(最低血圧)の低下に役立つ可能性が示されました。ただし、この研究では、収縮期血圧(最高血圧)低下の効果は見られませんでした。
British Journal of General Practice誌に掲載された2006年の研究では、サンザシの実に全体的な血圧値を下げる効果があることが示されました。この研究では、2型糖尿病患者79人が2群に分けられました。そのうち39人の患者には、サンザシの実サプリメント1200mgを、残りの40人はプラセボ錠剤を投与されました。同被験者らは16週間にわたって観察されました。その結果、サンザシサプリメント摂取群は血圧が3〜5ポイント低下した一方で、プラセボ群では低下が示されませんでした。なお、副作用は見られませんでした。
推奨用量 :1200mgを1日1回または600mgを1日2回。
グレープシードエキスはその名の通りブドウ種子の抽出物で、多くの健康向上効果が期待できます。血圧降下作用に加えて、グレープシードエキスで免疫系の強化も図れます。
2011年、グレープシードエキスは、血圧を大幅に低下させ、心拍数を安全に低下させる可能性があるという研究結果が発表されました。Medicine誌の2016年の研究では、計810人の被験者を含む16件の試験を評価した結果、グレープシードエキス摂取群の収縮期血圧と拡張期血圧がいずれも有意に低下したことがわかりました。同研究者らは、「今回の結果で、グレープシードエキスが血圧に有益な効果を発揮することが実証され、この効果は、若年あるいは肥満の被験者の他に、代謝障害患者で特に顕著であった。」と結論付けています。
2016年の研究では、高血圧前症患者を対象に、プラセボと比較してグレープシードエキスの血圧降下能力が評価されました。これらの患者とはつまり、高血圧を発症するリスクはあるものの、薬物治療を必要としない患者です。12週間にわたって実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、グレープシードエキス群は、収縮期血圧(最高血圧)が5.6%、拡張期血圧(最低血圧)が4.6%低下しました。
最後に、高血圧前症の男性患者を対象とする2018年の研究では、グレープシードエキスを300mg摂取した被験者は、プラセボ錠剤を摂取した被験者と比べて血圧が大幅に低下したことがわかっています。ある研究では、グレープシードエキスはビタミンCと共に摂取しないよう推奨しています。通常、血圧を下げるとされるビタミンCですが、グレープシードエキスと併用すると逆に血圧を上昇させる可能性があるためです。
推奨用量 :1日100〜300mg。
L-アルギニン は、タンパク質の構成要素であるアミノ酸です。L-アルギニンは、主に赤身肉、魚介類、鶏肉、乳製品に含まれ、半必須アミノ酸または条件付き必須アミノ酸とみなされます。L-アルギニンは、強力な血管拡張成分である一酸化窒素(NO)、の前駆体です。研究によると、L-アルギニンは血圧降下に有効と考えられます。
American Heart Journal誌の2011年の研究では、L-アルギニンの有効性が実証されています。11件のランダム化二重盲検プラセボ対照試験が評価されました。これらの研究対象は、計387人の高血圧患者です。L-アルギニンの摂取量は1日4〜24gです。その結果、収縮期血圧が5.4 mmHg、拡張期血圧が2.7 mmHgそれぞれ低下しました。
さらに、2017年の研究では、プラセボ錠剤を摂取した被験者と比較して、L-アルギニン配合のサプリメントが血圧降下に役立つ可能性が示されました。2018年の研究では、L-アルギニンをビタミンB群のサプリメントと併用することで、高血圧患者の全体的な血圧値が著しく低下する可能性が示されました。
推奨用量 :1日1000〜6000mg。
実は、残念なことに成人の最大60%が十分に マグネシウムを摂取をしておらず、45%は欠乏症と推定されています。全体的な傾向として、ほとんどの果物や野菜のマグネシウム含有量は、過去100年で減少しています。マグネシウムは、人体で400種類を超える生化学反応に関与し、天然のカルシウム拮抗剤として機能します。カルシウム拮抗剤は、製薬会社が技術の粋を集めて活用を見出した降圧剤の一種です。
2011年の研究では、マグネシウムが血圧値を5.6/2.8 mmHg低下させる可能性があることが示されました。これは統計的に有意な結果であり、一部の処方薬に匹敵する数値です。また、2011年の研究は、「経口マグネシウムは天然のカルシウム拮抗剤として作用し、一酸化窒素を増加させ、内皮機能障害を改善し、直接および間接的に血管拡張を誘発する。」と報告しています。これらはいずれも、降圧剤に求められる作用です。
2016年に行われた二重盲検プラセボ対照研究のメタ解析研究では、マグネシウム補給により血圧が低下する可能性があることがわかりました。さらに、American Journal of Clinical Nutrition誌に発表された2017年のランダム化比較試験のメタ解析では、マグネシウム補給で、インスリン抵抗性および糖尿病前症の患者の収縮期血圧と拡張期血圧がいずれも大幅に低下することが示されました。
推奨用量 :1日250〜500mg。
オメガ3脂肪酸は多価不飽和脂肪酸(PUFA)とも呼ばれ、人間の健康全般に重要な役割を果たします。オメガ3脂肪酸は、心臓、脳、腸、関節に多数の効果があるとされています。また、オメガ3脂肪酸は血圧降下促進も期待できます。この重要な栄養素は、クリルオイル、魚(特に豊富なものはサバ、タラ、サーモンなど)、クルミ、チアシード、フラックスシード(亜麻仁種子)、ヘンプシード(麻の実)、アボカド、納豆など、さまざまな食物源に含まれています。
Journal of Hypertension誌に掲載された2009年のランダム化比較試験では、オメガ3脂肪酸を1日4g(4000mg)摂取すると血圧降下に役立つ可能性が示されました。 American Journal of Hypertension誌の2014年の研究では、DHA(ドコサヘキサエン酸)/ EPA(エイコサペンタエン酸)が収縮期血圧(最高血圧)を低下させ、また、1日2g(2000mg)以上摂取した場合は拡張期血圧(最低血圧)も低下することが示されました。この2014年の研究では、計70件のランダム化比較試験が評価されました。
最後に、Journal of Nutrition誌の2016年の研究では、1日700mgという低用量のフィッシュオイルを摂取しても、大幅な血圧降下に役立つ可能性が示されました。2017年の研究によると、オメガ3脂肪酸は、血管機能および血圧降下の両方に著しい改善をもたらしました。
推奨用量 :1日1000〜4000mg。
ビタミンC、別名アスコルビン酸は、過去50年で最も研究対象となったビタミンの一つです。科学文献によると、1960年代以来、実に5万3千件を超えるビタミンC研究が実施されたことがわかっています。これらの研究で、ビタミンCは、その数ある効能の中でも、特に免疫力強化の他、心血管、脳、皮膚の健康を促進するのに役立つことが示されています。血圧降下にも有効であると考えられることから、ビタミンCの血中濃度が低いと高血圧につながるとされています。
Journal of Hypertension誌掲載の2000年の研究では、「高齢者がアスコルビン酸を多く摂取すると収縮期血圧の低下に若干の効果がある。つまり、報告されている通り、ビタミンC摂取量を増やすと、心血管疾患および脳卒中のリスク低下につながる可能性がある。」と報告しています。
同様に、2012年の研究でも、ビタミンC補給で収縮期および拡張期の血圧降下が期待できると結論付けられています。この研究では29件の試験が評価され、全体として、収縮期血圧で4〜5ポイント、拡張期血圧で1〜2ポイントの低下が認められました。研究中の標準的なビタミンC摂取量は1日500mgでした。
推奨用量:1日500〜1000mg
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