工夫の神様 手塚治虫③

金曜日は、自己実現トレーニングです。第５章｢工夫させる｣の続きです。

｢これは漫画に非ず。小説にも非ず。｣

この言葉は1948年に出版された｢ロストワールド｣という漫画にことわり書きとして手塚治虫が書いた言葉です。そこからもわかるようにこの作品はこれまで日本に存在した漫画とは全く異なるものだったのです。

それまでの漫画は｢のらくろ｣に代表されるようにストーリーはあっても滑稽で親子揃って明るく笑えるものでした。しかしロストワールドは違いました。もちろん手塚治虫作品独特のユーモアはあちらこちらに散りばめられているものの基本的なストーリー展開がアンハッピーなんです。

例えば宇宙を航海中に食物がなくなり飢えた男が植物から人工的に作られた女性を襲って食べてしまうシーン。直属的な表現はありませんが、当時の漫画では考えられない展開に読者は度肝を抜かれたことでしょう。

それにこの作品は少しの救いはあるもののハッピーエンドではないんです。これは本当に驚きだったと思いますよ。いくらタークなシーンがあっても最後は皆ハッピー、これが世界中の漫画の常識だったのですから。