ただ闇雲に知識を詰め込むだけでなく、あらゆる知識を元に自分で考えて行動する力を育てる「総合の時間」がいかに大切であるかを心の底から実感できたのは、悲しいことに先の東日本大地震が起こってからでした。

大津波が東北の太平洋側にある町を襲いました。ESDモデル都市として世界中から注目されていた気仙沼も津波に飲み込まれました。その映像は連日テレビで映されていました。たくさんの方が亡くなった中、生徒も先生も全員無事だったという学校が多数ありました。世界の過去の津波被害から考えると、まさに奇跡です。

でも、実はそれは奇跡でも何でもなく、「総合の時間」に行っていた対津波教育の賜物であったと、後に気仙沼の先生がおっしゃっていました。

どの学校でも避難訓練を行いますよね。でも、その先生の学校の防災教育は、生徒達が先生の後にくっついて静かに移動するというものではなかったんです。津波が来たことを想定して、決められた時間内に生徒一人ひとりが自分が安全だと思う所に自由に逃げるというものでした。自分で状況を分析し、考え、行動する。まさに「総合学習」で育むべき力が必要とされます。逃げ終わった後、地図でその場所を確認し、津波に飲み込まれてしまう場所を計算で明らかにし、自分が安全であったかを確認させます。

結果、かなりの生徒がアウトになったそうです。自宅に戻ったり、親戚の家に行ってしまったからです。大学で計算した危険地帯から脱出できなかった生徒達はさぞ悔しがったしょうね。

この訓練をしていたおかげで安全な場所に速やかに逃げる(自宅にも寄らずに)というイメージがしっかりできていたので、実際に津波が来た時に的確な行動をとることができたのです。さらに良かったことには、この防災訓練は地域絡みで行っていたため、子どもだけでなく大人も避難の仕方を一緒に学んでいたため被害が最小限に留まったということでした。

これは「総合の時間」を有効活用した学校の一例です。「総合の時間」の是非は何かと学力低下と結び付けられて語られますが、ESD実践校では、逆に学力向上に繋がるということを実感しています。

来週月曜日は、その話を書きますね。