<鎮痛薬が効かない>第三の頭痛とは

◇耳の後ろが痛くなることが始まり

最近頭痛や目の奧の痛みに悩まされていませんか。
身近な疾患だけれどもよく知らない頭痛について、くどうちあき脳神経外科クリニック(東京都)の工藤千秋院長の話題がある。


頭痛にはいくつかの種類があります。
緊張性頭痛と片頭痛が、さしずめ二大横綱といえるでしょう。
緊張性頭痛は、まるで鉢巻きをしたように頭が締めつけられるような痛みが特徴です。
一方の片頭痛は、頭の片側がズキズキ痛みます。
前兆として目がチカチカすることがあり、頭痛がひどくて嘔吐(おうと)することもあります。

実は、この二つの頭痛の症状とは違う、いわば「第三の頭痛」が最近急増しています。
耳の後ろが痛くなることから始まり、痛む所が日によって違う。
さらに痛みが鉢巻きのように横方向ではなく、後頭部から頭頂、頭の前の方へと、縦に動いていきます。
これが第三の頭痛で「大後頭神経痛」と言います。

この病名を告げると、患者さんは一様に「え? 神経痛が頭にもあるんですか」と驚かれますが、あるのです。
耳たぶの裏側から横に指をすべらせていくと、髪の生え際のあたりで骨の出っ張りに触れます。
押さえると痛いはずです。
大後頭神経はそこを通って上下に伸びています。
顔に痛みが出る三叉(さんさ)神経痛はよく知られていますが、三叉神経と大後頭神経はリンクしていて「大後頭神経三叉神経複合体」と呼ばれています。
両者は親戚のようなものなので、大後頭神経痛では三叉神経の始点である目の奥が痛くなることもあります。

◇一番の原因は姿勢の悪さ

大後頭神経痛が起こるいちばんの理由は、姿勢の悪さです。
現代人はデスクワーク中の大半の時間、パソコンを使いますが、モニターを真正面ではなく、左右どちらかの前方に置いている人が多いようです。
そんな人によく見られるのが、モニターを見るときに体は正面を向いて首だけひねる、ゆがんだ姿勢です。
これだと、顔を向けている側の大後頭神経は頭蓋骨(ずがいこつ)と頸椎(けいつい)に挟まれ、反対側の大後頭神経は引っ張られてしまい、どちらの場合も神経が興奮します。
挟まれた側が痛む人も、引っ張られた側が痛む人もいますが、片側だけ痛む人が多いようです。

次に多い理由は人間関係など精神的なストレス、三つ目は天候です。
大後頭神経痛は雨が降る前日に起こりやすく、雨が降ると治ります。

◇普通の消炎鎮痛薬は効かない

診断は、脳の専門家には容易です。
痛む場所や痛みが縦に移動することなどから大後頭神経痛と見当がつくので、脳腫瘍や変形性頸椎症などほかの病気ではないことを確認するためにMRI(磁気共鳴画像化装置)や頸椎X線検査をして、問題がなければ診断を確定します。

治療では薬を処方しますが、通常の消炎鎮痛薬は効きません。
大後頭神経は三叉神経とリンクしていると前述しましたが、三叉神経痛の特効薬であるカルバマゼピン(製品名:テグレトールなど)が有効です。
消炎鎮痛薬を1日3回、1週間飲んでも痛みがとれなかった人が、カルバマゼピンを夜1錠飲むだけで、翌朝から楽になります。
もし、それが効かない場合は、痛む場所に局所麻酔薬を注射する神経ブロックを週1回のペースで何度か行うとたいてい治まります。

忙しくて病院にいく時間がない人は、いちばん痛いところを親指でぐっと5秒ほど押して離す、また5秒ほど押して離すということを繰り返すと、神経の興奮が抑えられて痛みが和らぎます。

湿布薬を小さく切って、痛い場所に貼るのもいいでしょう。