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AKB48を卒業して4年。歌手、女優として
前進し続ける前田敦子のルーツと原動力を探る。

14歳でAKB48の一員としてデビューして以来、7年間、絶対的エースとして国民的アイドルグループを引っ張ってきた前田敦子。AKB48卒業後はソロシンガー、女優業へとフィールドを広げている。とりわけ、女優としての活躍は目覚ましく、数々の素晴らしい作品に出演を果たし高く評価されている。順風満帆に進んできたように思える彼女だが、常に悩みや葛藤もあったという。

「子供の頃、すごくシャイだったんです。自分になにか人よりも秀でた能力があるとも思っていなかった。でも、どこかでずっと『誰よりも目立ちたい。有名になりたい』と思ってたんです。だから芸能人になるしかないなって(笑)」

引っ込み思案だけど負けず嫌いで、実は目立ちたがり屋。そんな彼女は念願を叶えてAKB48のセンターとなるが、その時、自分へ問い直す瞬間があったという。

「すごく有名になりたかったし目立ちたかったのに、いざ本当にそうなったら、何もできない自分にびっくりしてしまったんです。『私、真ん中にいてもなんの能力もないじゃん』と思ってしまった。最初のころは迷惑もかけたと思うし、すごく落ち込みましたね。自信というのは簡単に持てるものじゃないんだなと思いました」

デビュー当時からずっと演技に興味があった彼女はAKB48在籍時にも女優業を並行していた。しかし、自分の居場所をなかなか定められず悩んだこともあった。今は歌手、女優とマルチに活躍しているが、やっと気持ちの切り替えができるようになってきたという。

「AKB48で7年、卒業して4年。11年やってきて、やっと色んなことに慣れてきて、ちょっとずつ仕事の仕方も変わってきました。アイドルから女優になるというのは本当に大変なことで、それは今もすごく感じていますが、前はそこに執着し過ぎていたのかなと思います。演技をするときにも『わたしアイドルじゃん』と葛藤してしまって。勝手になにかを背負ってたんですよね。でも、私ってどこから始まったの?と考えたときに『あ、私ってアイドルから始まったんだ』と思って。そこから応援してくれている人達が今もたくさんいることも事実だし、それって幸せなことだなって。そう思えるようになってからは、かなり自分らしくいられるようになった気がします」

生粋の映画好きな彼女。家では寝る前に必ず映画を観ることが日課になっているという。

「映画を観ながら寝落ちするのがすごく幸せで(笑)。いつも大体、1本を2日くらいかけて観てます。時間がとれるときは1日に2〜3本観ることも。私、綺麗なものを観るのがすごく好きなんです。モノクロ映画で綺麗な女優さんがアップになっているのとかを観ると『なんでこんなに光ってるんだろう?』って。古い映画も好きなのでいろんな名画座などにも通いました。今、いちばん好きな女優さんは若尾文子さんです。1970〜80年代の作品なのですが、着物姿でも本当にセクシーで、喋り方なんて女の私でも興奮してしまいます」 

映画を観ることで自分の演技にフィードバックを得ることも少なくないという。とりわけ山下敦弘監督の作品からは大きな影響を受けてきた。

「山下監督の『天然コケッコー』を映画館で観たときに『こんなに素敵な青春映画があるんだ……!』と思って。出演している夏帆ちゃんは私と同じ年なんですけど、初めて心の底から『羨ましい』と思ったんですね。私も山下監督の『苦役列車』に出させて頂いたのですが、それで私の世界が変わったんです。映画の打上げのときに、私も早くみなさんのところに行きたいんですということを伝えたことが、そろそろAKB卒業というのもありなのかなと思い始めたきっかけにもなったので」

お洒落をすることも大好きだという彼女。雑誌などはあまり読まず、自分の好みで選ぶことが多いという。この日着用していたアルマーニの服も彼女がセレクトしたものだ。「黒が好きなので、無意識に黒を基調としたものを選びました。基本的には黒が多いのですが、差し色に赤をよく使いますね。AKBのときも衣装は赤が多かったしずっと好きな色なんです」

現在は来年から放送される日テレ×WOWOW×hulu共同製作ドラマ「銭形警部」を撮影中。正義感ある新人女性刑事という役どころに挑む。次々と活躍の幅を広げる彼女に将来の目標をたずねた。

「何をやりたいかというとやっぱり映画なんですけど、夢はずっと持っていたいと思います。3年前に初めて舞台に出させてもらったんですが、やっぱり映画ともドラマとも全然違うなと思ったんです。去年二回目の舞台出演をさせて頂いたときにもまだ分からないと思ってしまいました。悔しいから、舞台にももっと挑戦していきたいですね」

ちょっとシャイだけれど負けず嫌いで目立ちたがり屋。そして誰よりも努力家ゆえにここまでの成功を収めてきた。しかし、どこかマイペースで無理を感じさせない魅力を持つ彼女には、やはり真のアイドル性を感じずにはいられない。きっと、これから舞台がどこに移っても、センターで光を浴び続けることだろう。