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出演作品『モヒカン故郷に帰る』がジャパン・ソサエティーで開催中の映画祭「第10回JAPAN CUTS!~ジャパン・カッツ!」のオープニング作品に選ばれ、来米した女優の前田敦子さん。作品と前田さんへの注目度の高さから上映券は早々に完売に。上映前には沖田修一監督とともに登壇し、英語であいさつをした。撮影時のエピソードや、大好きだというニューヨークの思い出など、前田さんと沖田監督にお話を伺った。 (聞き手・髙橋克明)
出演作「モヒカン故郷に帰る」、NYの映画祭で上映
まず監督にお聞きしたいのは、脚本の段階で、主人公の彼女役は前田さんをイメージして書かれたのでしょうか。
沖田修一監督 ちょうど書いてる時に、対談で前田さんとお会いして、(以前から、ドラマに)出ているのを見ていたし「いいんじゃないかな」と声を掛けさせていただいたんですけれど。
今回「マジ、妊婦キツいわー」なんてセリフがあったりして、今までにない役柄だったのではないでしょうか。
前田 でも、私自身がちょっと変わった人間だと思うので(笑)。人間味のある役を頂けてすごくうれしかったですね。
では脚本を頂いた時点で、すでに出演を決めたというか…。
前田 もうオファーを頂いた時点で。私、沖田さんの作品が大好きだったんですよ。とにかく監督の作品はかわいくて。なので、普通にいちファンなので、もうお話を頂いた時点で、「やったー!」って走り回りたいくらい、みんなに自慢したいくらいでした。
妊婦さんの役なので役作りには苦労したのでは。
前田 私はまだ経験したことがないので(笑)。もちろん分からないことばかりだったんですけれど、でも監督の奥さまがちょうど実際に妊娠されているタイミングだったので、いつも客観的にアドバイスしてくださったんですね。監督の中でとってもかわいい妊婦像をお持ちで、今はこんな感じだった、あの時はこんな感じだった、って。
監督 うん、うん……。そんなしましたったっけ。(照)
前田 かなりしてくださいました(笑)。それがすごくリアルで、役に立ったんですね。そのアドバイスを自分の中で拾い集めていく作業がすごく楽しかったんですよ。
監督 確かに「妊婦ってホントにツラいから」みたいなこと言った気がする。さも自分が妊娠したかのように(笑)。でも、妊婦の大変さのシワ寄せが、いつもこっち側に来てたのを覚えてたんだと思います。(笑)
今の日本映画界は原作がベストセラー小説の映画化だったり、アニメの劇場版だったりが主流の中、監督はオリジナル脚本ということにこだわりを持ってらっしゃるのでしょうか。
監督 可能であれば、オリジナルからの作品を撮りたいというのが第1希望ではありますね。もちろん、そういった原作のある企画モノでも、面白そうであればやりたいとは思いますよ。でもオリジナル(の作品)をなかなかやれる機会がないので。そのあたりは頃合いを見ながら、うまくやっていければいいなとは思いますけれど。
今回、以前から希望された沖田作品に出演されて、ご自身の中で、今後の芸能活動はどのように変化されるのでしょうか。
前田 今回、私は勝手に思ってるだけかもしれないけど、(制作現場の)皆さんとすごく仲良くコミュニケーションとれて、すごく仲良く一緒にやれたのが、とってもうれしくて。その方たちといまだに連絡取りあっていけてるって、これから生きていく中で、何かとても大切なものを頂けたなぁって思ってるんですね。
なるほど。
前田 グループでお仕事させていただいてる時って、いつも撮影に追われて(それだけで)一日が終わるみたいな日が多かったんですけれど、今はそのスタッフの方々と親交を持ちながらお仕事をやらせていただけるようになったというか。特に今回は広島での撮影だったので、みんなと一緒にいるっていうのを、すごく肌で感じながら撮影ができたのがうれしかったですねー。今回、お仕事をする上で「やっぱり一番大切なことってコミュニケーションなのかな」ってあらためて思いましたね。
現場が非常に楽しかったことが伝わってきます。(笑)
前田 はいっ!(ニッコリ)楽しかったですねー。みんな、ずっと笑顔で撮影してました。
今日、今から上映会です。観客のニューヨーカーにはこの作品を見てどう感じてほしいでしょうか。
監督 そうですねー。結構、日本的な要素もあって、例えば「ピザのデリバリー」であったり「(熱狂的な)矢沢永吉ファン」だったり、そういう日本的なものを、どういうふうに感じるんだろうなって逆に興味ありますね。例えば“田舎に帰って、年老いた父親を看(み)取る”話って、世界中、どこの国でも同じテーマとして見ていただけると思うんです。
特にニューヨークは東京と同じで世界中の地方出身者の集まりですから。
監督 そうかぁ。そうっすね。そこまでは考えてなかったな(笑)。だから、そのへんを面白がってくれたら、もう、なんか、全然いいんじゃないかなって。
前田 大人になるとみんな生まれ故郷から離れるのが当たり前じゃないですか。故郷から離れて遠い地で頑張ってらっしゃってる方もいっぱいいらっしゃるでしょうし。でも、何かあっても、どんな時でも、いつでも一番の味方でいてくれるのが家族なんだなって、そんなとこを感じてほしいですね。だって、それって全世界共通じゃないですか。「家族」の大切さ。身近な人ほど大切だけど、それが当たり前になりすぎて日ごろ感謝の気持ちを忘れている。それに気付くには、とってもいいお話じゃないかと思っています。
監督はニューヨークは初めてということで、初のニューヨークはいかがでしょう。
監督 来た瞬間は、雑多すぎてよく分かんなかったけど(笑)。時間が経てば経つほど、みるみる面白そうな街に見えてくるなぁっていう印象です。あと、すぐに人が話し掛けてきますね。(笑)
店員も(笑)。通行人も。(笑)
監督 ああいうのは、ちょっといいなぁって思っちゃいましたね。
前田さんは、よく来られているイメージがあります。
前田 もう10回目くらいですかね(笑)。でも来るたび、例えばブロードウェイとか「なんなんだ!? この世界は!」って思いますしね。あと、今回、一人で電車に乗れるようになりました!
地下鉄に一人で乗っちゃうんですか。
前田 はいっ!(うれしそう)。それが楽しくて、楽しくて。早く、また乗りたい。
最後にニューヨークに住んでいる日本人にメッセージを頂けますか。
前田 私は皆さまがとてもうらやましいです。今回の滞在では、こうやってニューヨークでお仕事されている日本の方にお会いしたんですけれど、なんて、皆さん、前向きなんだろうって。ホントに、すごく勇気と刺激を頂きました。私もいつか住みたいです!
★インタビューの舞台裏★ → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12182641127.html