AKB最新映画はまるで戦争映画、タブーにも踏み込んだ「アイドル残酷物語」
クランクイン!

 まるで防空壕のような狭く暗い西武ドームのステージ裏を駆け回り、ある者は過呼吸で倒れ、またある者は泣き崩れる。そして、見えないものに向かって戦い続けるメンバーの姿が、まるで兵士と重なることから“これは戦争映画だ!”とも言われた前作から1年。2012年の彼女たちの活動を追い続けた本作も、十分なくらい戦争映画だった。ただ、デビューからの夢の舞台だった東京ドームのステージ裏はきらびやかな電飾で彩られ、そこを舞うように行き来するメンバーには笑顔すらこぼれる。では、どこが戦争映画なのか? それは己との戦いが、痛いほど克明に描かれていることからである。

 ステージ上において“立ち位置0(ゼロ)”と呼ばれるセンター。“絶対的エース”前田敦子が立ち続けてきたAKB48の聖域が、本作最大のテーマだ。突然の前田の卒業発表から、残されたメンバーたちは、その聖域の存在をより深く考え始める。次期センターと呼ばれる者はより歯を剥き出しにし、自分たちの人気のバロメーターでもある「選抜総選挙」の結果に一喜一憂する。だが、前田が長年もがき苦しんできたように、聖域に立つ者には責任と重圧、そして孤独が襲いかかる運命が待ち受けているのも事実。現に、それに耐えられなくなったNMB48の“ポスト前田”は卒業の道を選ぶ。その一方、選抜メンバーになることもできない初期メンバーは、ご法度である“恋愛”に救いを求めてしまったことで、古巣を去ることになる。

 前作に引き続き、インタビュアーも務める高橋栄樹監督(握手会のシーンで、樋口真嗣とともに登場!)は、ある意味、己との戦いに敗北しながら、新たな道を歩み出した彼女たちの“今の姿”も捉える同時に、最前線を走り続ける選抜メンバーにも個々の“恋愛観”もしっかり語らせる。また、前田卒業後、“AKB第二章”の始まりを告げたシングル「UZA」の裏に隠された事実など、そんなタブーにも踏み込んだ攻めの姿勢は、「ゆきゆきて、神軍」にも通じるものもあり、まさに趣はまさに「アイドル残酷物語」。とはいえ、前田卒業という一大イベントを中心にした構成や、女優・伊藤歩によるナレーションや解説テロップなどから、AKBファン以外の観客にも、より届き、突き刺さる作品に仕上がっている。

 結成直後から7年間彼女たちを見てきたファンとして、本作のインタビュー撮影に同行したオフィシャルライターとして、この現場に立ち会うのは正直辛いものもあった。だが、そんな彼女たちの戦う姿は強く、たくましく、美しい。そして、「なぜ、ここまで戦わなくてはならないのか?」という疑問の答えが「そこに0(ゼロ)があるから」だけではないことも分かった。そういう意味でも、前作以上にカタルシスを感じることのできる作品になったといえるだろう。(文:くれい響)


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おまけの話題で・・・

AKB48島崎遥香の“塩対応”味ポップコーン、限定発売

ナタリー


「ぱるるの“塩対応”味ポップコーン&ドリンク コンボセット」イメージカット


島崎遥香(写真は映画「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」より) (C)2013「DOCUMENTARY OF AKB48」製作委員会

 AKB48の新作ドキュメンタリー映画「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」の公開を記念して、全国のTOHOシネマズにて「ぱるるの“塩対応”味ポップコーン&ドリンク コンボセット」が数量限定販売される。

AKB48の握手会などでファンから「塩対応」(そっけない態度を取ること)と呼ばれている“ぱるる”こと島崎遥香。その彼女をイメージした塩味のポップコーンに、AKB48美術部部長の片山陽加によるイラスト入りのドリンクカップをセットにして、TOHOシネマズのフードコーナーにて販売されることになった。なおドリンクカップに書かれた映画タイトルのデザインは研究生の平田梨奈によるもの。

映画「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」は今週末2月1日より劇場公開となる。

DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?

2013年2月1日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:東宝映像事業部
企画:秋元康
監督:高橋栄樹
出演:AKB48
オフィシャルサイト:www.2012-akb48.jp
(C)2013「DOCUMENTARY OF AKB48」製作委員会