京都大学名誉教授である本庶佑教授は、2018年「免疫チェックポイント阻害因子」の発見と新たな免疫療法を癌治療に応用した功績が認められて、ノーベル医学生理学賞を受賞した。
薬としては、小野薬品の『オプジーボ』が有名である。
その本庶佑教授は、今回の新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスやHIVウイルス同様「DNA」ではなく「RNA」を遺伝子に持つウイルスで、二重らせんという安定的な構造を持つDNAに対し、一重らせんのRNAは、その構造が不安定で、遺伝子が変異しやすい。
そして、新型コロナウイルスは、変異のスピードが速い為に、ワクチン研究当初のウイルス🦠と今現在のウイルス🦠は自ずと違って来る。
そのワクチンを打って効かないどころか、前回述べたADE(抗体依存性感染増強)のような副反応が起きて、感染が劇症化する可能性を指摘している。
1976年に米国で新型インフルエンザの流行に備え、見切り発車で全国民へのワクチン接種を始めたものの、ギラン・バレー症候群などの副作用が出て投与中止になるという悲劇的な事件が起きた。
ギラン・バレー症候群(ギラン・バレーしょうこうぐん、英: Guillain-Barré syndrome、以下GBSと記する)は、急性・多発性の根神経炎の一つで、主に筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくなる病気である。重症の場合、中枢神経障害性[要出典]の呼吸不全を来し、この場合には一時的に気管切開や人工呼吸器を要するが、予後はそれほど悪くない。
有名な俳優としては、ホタテマンこと安岡力也や大原麗子がギランバレー症候群で亡くなっている。
感染症やワクチン摂取の副反応が原因でギランバレー症候群を発症すると言われている。
教授は、ワクチンの副反応を鑑み、ワクチンよりも治療薬を主体に考えた方がより安全だと訴える。
この10月に富士大学医学部の白木公康教授と富士フィルム富山化学が共同研究し開発した「アビガン」(正式名称:ファビピラビル)が厚労省に新型コロナの正式治療薬としての承認申請がなされた。
早ければ、来月11月にも承認が下されるだろう。
このアビガンは、新型コロナの初期から中等症に効果的であると言われている。
そして、重症患者(人工呼吸器を使用するほどの肺炎患者)には、中外製薬開発の「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)が効果を発揮し始めている。
スイス製薬大手ロシュは、「アクテムラ」を新型コロナの肺炎患者の人工呼吸器装着や死亡に至る危険性が44%低下したとする臨床試験の結果を発表した(2020.9.18)。
アクテムラは、元々、関節リウマチや自己免疫疾患の薬で、免疫が何らかの原因により、暴走を始めると、自己の関節や内臓を他者つまり異物と見なして攻撃する。
その時に免疫白血球がばら撒く武器(サイトカイン)がIL-6(インターロイキン-6)という活性酸素である。
これがリウマチや自己免疫疾患の作用機序であり、新型コロナの重症患者に起こるサイトカインストームの作用機序でもある。
このIL-6の作用を阻害する働きを持つ薬が「アクテムラ」である。
本庶佑教授の提案に従い、初期〜中等症には、「アビガン」
重症患者には、「アクテムラ」を使用することで、新型コロナの治療薬に認められれば、日本🇯🇵製の治療薬が世界的に広がり、アメリカ🇺🇸や中国🇨🇳、そして、欧州にも先駆けて、新型コロナを抑え込むことが出来ると信じたい。
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ノーベル賞学者の警告 東京五輪までに「ワクチン」はできない|本庶佑
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文藝春秋digital
2020/07/11 08:00
来年の五輪開催を願う気持ちはわかる。だが、現実に目を向けなければならない。冷静な判断をせず、着実な準備もしないまま、「来年には落ち着くだろう」という希望的な観測を持つべきではない。/文・本庶佑(京都大学高等研究院副院長・特別教授)
変異と副作用が問題
コロナとの闘いを勝利に導くには、「予防」「治療」「診断」の3つの対策を立て直さなければなりません。
まず私が警鐘を鳴らしたいのは、予防に関して「ワクチン」への過度な期待は禁物だということです。安倍晋三首相は記者会見で、「東京五輪を完全な形で開催するならワクチンの開発がとても重要だ」と述べていましたが、それは非常にハードルが高いと言わざるを得ない。その理由から説明しましょう。
そもそも、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやHIVウイルスと同じように、「DNA」ではなく、「RNA」を遺伝子に持つウイルスです。このRNAウイルスの場合、効果的なワクチンを作るのは難しいことが知られています。
ビル・ゲイツは、HIVワクチンなどの開発にこれまで何百憶円と注ぎ込みましたが、それでも、ほとんど成功していません。
なぜか。端的に言えば、二重らせんという安定的な構造を持つDNAに対し、一重らせんのRNAは、その構造が不安定で、遺伝子が変異しやすい。インフルエンザのワクチンを打っても効かないことが多いのは、流行している間に、ウイルスの遺伝子が変異していくからです。遺伝子が変異してしまうと、ワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのです。
新型コロナも、変異のスピードが非常に速い。中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、5月末ですでに数百の変異があるという報告があります。
新型コロナウイルス
ワクチンが完成しても、開発当初とは異なる遺伝子のウイルスが蔓延しているかもしれない。そうなると、一部のウイルスにしか効かないことも十分にあり得ます。
もう一つ、ワクチンには「副作用」という大きな問題があります。ワクチン開発では良いところまで行きながら、臨床の段階で副作用が出て、100億円、1000億円ものお金がパーになったというケースは枚挙に暇がない。1976年に米国で新型インフルエンザの流行に備え、見切り発車で全国民へのワクチン接種を始めたものの、ギラン・バレー症候群などの副作用が出て投与中止になるという悲劇的な事件が起きたこともあります。
ただ、こうした副作用はワクチンには付き物なのです。実際、副作用の被害を受けられた方は大勢いる。だから反ワクチン運動なども起きてしまうわけです。ただ、私はそういった不利益を考慮しても、基本的には、一種の「社会防衛」としてワクチンの開発自体はやるべきだと思います。
ところが今の日本では、首を傾げざるを得ないようなことが行われている。日本で開発し、治験までやると言っているグループがありますが、あまりに現実離れした話でしょう。
ワクチンの有効性を評価するには、数千人健常な人を集め、打ったグループと打たなかったグループ、双方の感染率を比べなければいけません。しかし、この比較試験を感染が抑えられている今の日本でやるのは非常に難しいと思います。
今の日本で、仮にワクチンを打った3000人に感染者がゼロだったとしても、ワクチンを打たなかった3000人に何人の感染者が出たら有効と言えるのか。ブラジルのような感染者数が爆発的に増えている地域であれば、はっきりした差が出るかもしれない。しかし日本での比較試験はほぼ不可能と言っていいのです。
こうした開発の高いハードルを考えた時、東京五輪までの1年でワクチンを開発・製造するということが、いかに困難か想像がつくのではないでしょうか。期待を煽るような報道を見るにつけ、政治家や行政は、この現実を理解しているのだろうかと心配になるのです。
ワクチンより治療薬を
では、新型コロナの対策を諦めなければいけないのかと言われれば、そうではありません。私は、当面ワクチン開発よりも、「治療薬」のほうに期待すべきだと考えています。「既存薬」の中には、すでに効果が報告されているものもあり、治験を進めれば、新型コロナに有効な薬が見つかる可能性はあります。
例えば、国産薬として注目されている「アビガン」は、抗インフルエンザ薬としてすでに承認された薬で、どういう人に副作用があるかもわかっています。
コロナに使う場合には、「適応外使用」にあたるので、保険が適用されませんが、それでも患者さんが希望すれば、医師の裁量で投与できる。こういった薬を使わない手はありません。
ただ、治療薬の保険適用には、ワクチン開発と同じく比較試験の壁が立ちはだかります。アビガンについても、大学病院で比較試験が進められていますが、症状の改善が見られる中で、投与しない対照群の充分なデータを蓄積できていません。安倍首相も当初「5月中にもアビガンを承認」と希望的観測を述べていたものの、遅れが出ているというのが現実でしょう。
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2020/04/09 企業
重症COVID-19肺炎患者対象に「アクテムラ」国内治験実施~中外製薬
薬+読 編集部からのコメント
中外製薬は、新型コロナウイルス肺炎(COVID-19肺炎)治療薬としての承認取得のため、ヒト化抗IL-6受容体抗体「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)の国内治験を実施することを発表しました。同薬については、本庶佑京大特別教授も重症肺炎時の炎症反応の暴走時にはトシリズマブを実地導入すべきとの見解を示しており、その効果が期待されます。
中外製薬は4月8日、新型コロナウイルス肺炎(COVID-19肺炎)治療薬としての承認取得に向け、ヒト化抗IL-6受容体抗体「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)の国内治験(国内第III相臨床試験)を実施すると発表した。
治験の対象は、国内の重症COVID-19肺炎の入院患者。中外製薬は「今後試験の詳細を確定の上、速やかな患者登録の開始を目指す」としている。
アクテムラは、中外製薬が創製した国産初の抗体医薬品。炎症性サイトカインの一種であるIL-6の作用を阻害する働きを持ち、国内では関節リウマチ、キャッスルマン病などの治療薬として承認されている。
海外では、重症COVID-19肺炎の入院患者約330例を対象に「アクテムラと標準的な医療措置の併用」の安全性・有効性を評価する第III相臨床試験の開始を親会社のロシュ社(スイス)が3月19日に発表している。
■本庶佑京大特別教授「急性期にアビガン、重症肺炎時にトシリズマブを」
重症COVID-19肺炎へのアクテムラの効果については国内の研究者・臨床医から期待する声が上がっており、ノーベル医学生理学賞受賞者の本庶佑京大特別教授も4月6日付で公表したCOVID-19対策の緊急提言で、①急性期には抗ウイルス剤「アビガン」、②重症肺炎時の炎症反応の暴走時にはトシリズマブ(アクテムラ)─などを実地導入すべきと訴えている。
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リウマチ薬に重症化防止効果 新型コロナ、阪大が開発関与
2020年09月19日 11時07分 (共同通信)
【ワシントン共同】スイス製薬大手ロシュは18日、関節リウマチなどの治療薬「アクテムラ」の投与で、新型コロナウイルスに感染した肺炎患者の人工呼吸器装着や死亡に至る危険性が44%低下したとする臨床試験の結果を発表した。この薬は岸本忠三・大阪大特任教授らが開発に関わった。
ロシュは結果を近く専門誌に投稿し、米食品医薬品局(FDA)など各国の当局に報告する。
臨床試験は米国とアフリカ、中南米の計6カ国で約400人を対象に実施。アクテムラを投与したグループで28日目までに人工呼吸器の装着や死亡に至ったのは約12%、偽薬のグループでは約19%だった。