Fly Fishingに入門される方って、
夢や期待を他の釣り以上に抱いている気がします。

例えば「River Runs Through It(以下、リバラン)」を見た入門者の方。
Yellow Stoneの手付かずの自然の中で、美しいループを描くキャスティング。
そういったものに憧れて始めた方、多いと思います。
(実は、リバラン、ちゃんと見たことないんですが)

あのシーンを再現したい。
そこで、道具を揃えキャスティング練習をして、釣り場に行くと「絶望」。
護岸された里川、川原のゴミ、ろくにラインを出せない狭いフィールド。
ひれが丸まった放流魚。。。
これが、僕の最大の危惧。

さて、日本の川でヤマメやイワナを釣ることに、どんな意味を見出そうか。

これを、Yellow Stoneをはじめとしたアメリカの川を釣り歩き、
wildernessの素晴らしさを十分楽しんだ方の視点から見たのが、この本。
$JoeJoeの隠れ家-fly fishing kikou
Fly Fishingの本の中で、これ程読後感が悪いものはなかった。
芦澤さんは、海外の釣り場での素晴らしい実体験と
変わりゆく日本の川の環境を無意識に比較し嘆いている。

ところが釣り人の性として、そんな壊れた日本の川でも無心に釣りをしてしまう。
ヤマメやイワナを求めさまよう。
その矛盾に苦しむ。
その矛先は、経済活動や生き方にまで及ぶ。
$JoeJoeの隠れ家-takahara
(芦沢さんが「手垢にまみれた」と言っていた高原川の漆山のあたり。僕が大好きな流れ。)

オーバーラップするのは桂川。
東京から半径100km以内。
これでもかというほどに護岸されまくり、新興住宅地が川岸にまで迫る。
ニンフを根掛かりさせる川底のゴミ。

しかし、偉大な富士山が雪解け水を泉に替えて無尽蔵に送り込む。
他の川ではありえないような水生昆虫の生息量と種類。
いつ行っても何らかのハッチが期待でき、時に大量、時に複雑。
ヤマメは大きく、よく学習し、開高健さんの言葉を借りれば「学士様の鱒」。
釣り人のスキルと知識はとことん試される。
だから、簡単に釣れない。
ある意味、とってもシュール。
JoeJoeの隠れ家-hitoyasumi
(この看板もシュールだけど。岐阜で見つけました。)

で、多かれ少なかれ、日本のフライ向けの川には、
こういった特性が見え隠れする。
だから、「リバランの実現」のような目的・目標を掲げると、
急速に萎えてしまう気がするんです。

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師匠が昔言っていました。
「釣りの周辺を楽しめないと続かないのがFly Fishing」

狭義で言えば、
キャスティングの技術を磨くこと、
タイイングに凝ること、
タックルやタイイング・マテリアルをコレクションすること、
水生昆虫を極めること。
国内・海外、いろんな場所に遠征し、鱒以外を含めいろんな魚を釣ること。
これを「今は無理だけど、そのうち。。。」と思っていれば、
間違いなくその通りになりますから、ご安心を。

広義で言えば、
釣りに旅を絡めること、
仲間を増やしていろんなスタイルの釣りを見て知ること、
限りなく「釣りの周辺」に取り込める。

とにかく、Fly Fishingは素敵な嗜みです。
やればやるほど味が出て、奥行きが無限な宇宙のような世界です。
ぜひ釣り仲間を作って、宇宙の旅に出てください。
それが、比較的釣れない釣りをずっと続ける秘訣だと思いますヨ。


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アメリカ西部の手付かずの自然の中で釣るのも素敵、
イギリスの箱庭のようなチョークストリームで釣るのも素敵、
ニュージーもパタゴニアも、モンゴルもヨーロッパも絶対に素晴らしい。

同じくらい、日本の里川や本流で釣るのも素敵です。
日本には、世界的に類を見ない「里山文化」があるように
人手が入った自然「里川環境」がありますし、
鱒の釣れる川に人の暮らしの匂いがします。

福島の川で、田植えをするおじいさんがギャラリーになったり、
桂川のイブニングでライズを待っていると、裏の家から夕ご飯の匂いがしたり、
子供たちの声が聞こえたり。。。なんかイイですよね。

そういったものを全てひっくるめて、釣りを楽しめるといいなぁ~と思います。
$JoeJoeの隠れ家-shisho