【映画『北京冬季五輪2022』陸川監督インタビュー 被写体としての羽生結弦・アイスホッケーについて語る】
実を言うと、横で見ている時に共鳴する思いがあり、すぐに撮影しました。なぜかと言うと、彼の側面を見た瞬間、私は彫刻の“縛られたプロメテウス”を思い出したのです。古代の神々の物語(ギリシア神話)の中で、プロメテウスは天上から人類のために火を盗み、その罰として全能の神ゼウスにより山に縛りつけられ、鷲に肝臓を食われ続けます。プロメテウスにとって苦しい経験ですが、人類にとって彼はヒーローです。羽生選手の挑戦した4回転アクセルも、スポーツにおいて人類の極限を超えるような高い理想です。
【天上の火を盗んで人間に与えた】
それはまさに、プロメテウスが人類のために火を盗むような行為だと考えました。自分を犠牲にしてオリンピックのスピリットを達成するような挑戦をした羽生選手に共感し、その瞬間の羽生選手をプロメテウスの彫刻に重ねて撮影しました。
変幻自在に姿形を変える能力を持っていることから、「変化し続ける」「変幻自在」という意味を持つ「プロティアン」という言葉の語源になっています。
中国には、羽生さんの女性ファンがたくさんいます。それは、とてもいいことですよね。ただ映画の監督として一番撮りたかったのは、大勢の前で輝いている羽生選手の姿ではなく、その裏にある一般人としての一面でした。
今回の作品では実現できませんでしたが、これからもし機会があれば是非そういった羽生選手の一面を撮影し、羽生選手のストーリーを完成できればいいなと思っております。
観る人の感性にイマジネーションを与える羽生結弦はやはり特別仕様の人間だね
ヨブ