「ドキュメント 死刑囚」 著者 篠田博之 発行所 筑摩書房 2008年8月
先日、東京江東区マンション殺人事件の検察側の求刑があった。
極刑。
世論や遺族感情を考えると当然なのかもしれない。
最近は考えられないような極悪な事件が多発している。
しかしマスコミはいかに容疑者がおかしな人間だったかを面白おかしく取り上げるのみで、その報道も事件発生からせいぜい初公判くらいまでだ。
裁判は控訴や上告されればそこで刑が確定する。
逮捕した時点では容疑があるにすぎないのに、極悪人扱いだ。
マスコミの面白さだけを求めた誤った報道は、松本サリン事件でも明らかであろう。
裁判員制度が始まる。我々にも判断を求められるときが来る。
罪をおかした人間を単に処刑するだけでいいのだろうか。
その罪を犯した人間はどういう人格で何が原因だったのだろうか。
残念ながらマスコミの情報が不足しているため、じっくり考える機会もない。
この本は、宮崎勉死刑囚、小林薫死刑囚、宅間守死刑囚等と著者が何度も面会や書簡のやりとりをして彼らの心の動きを余すところなく書いている。
やはり常人では考えられない思考もあるのだが、まずは何を思っていたのか理解する必要がある。理解できなくても知っておいた方がいい。
そして本当の罪の抑止力は何なのか考えたい。
悪い奴を単に殺すというだけでは思考停止である。
