日本の貨物船がモーリシャス諸島沖で座礁し大量の油が流れ出して

環境汚染を起こした問題について貨物船の所有会社である

長鋪汽船のホームページで座礁原因の調査報告と再発防止策についての

報告がありました

半年ぶりにホームページを確認にいってその後何もお知らせがないため

今回の問題について所有会社はこれをもって一連の問題についての

幕引きになるのかなと思います

モーリシャスの環境汚染はどの程度回復しているのでしょうか

船は所有者と運航する会社が違ったり

船籍が外国になったりしていて責任の所在が判りにくく

幹部乗務員とそうでない乗組員が国籍が違うのは当たり前のような

世界です

被害者ならばなんだか釈然としない決着かも知れませんが

今後同じような乗組員の怠慢による事故が起きないように

なれば良いと思います

 

…といいながら今年3月29日にスエズ運河でまたも愛媛県今治市の

正栄汽船所有の貨物船が座礁事故を起こしました

 

まったく!…日本の海運業頑張れ!

 

 

 

1.座礁事故の経緯(本船の乗組員から聴取した情報)

 

 本船は座礁の2日前(7月23日)に航海計画を変更し、モーリシャス島沖を航行する際の

沿岸からの距離を22海里(註1)から5海里としました。
 座礁当日(7月25日)は、携帯電話の通信圏内に入るべく、沿岸からの距離を5海里から

更に2海里程度まで縮めて航行しようとしましたが、正確な沿岸からの距離および水深を確認するには

不十分な縮尺の海図を使用していました。

また、沿岸から2海里沖という至近距離を航行しようとしていたにも関わらず

乗組員はレーダーや目視での適切な見張りを怠り

その結果、モーリシャス島沿岸から0.9海里沖の水深10mの浅瀬に座礁しました。

 

2.推定原因

 

 上記の経緯の通り、沿岸に接近して航行することに対し

危険であるという認識が不足しており、大型船でこのような操船が行われたこと

また、当該事故以前にも複数回沿岸に接近した事実が判明したことにより

安全意識への認識が不足していたと考えられます。

 また適切な航海計画の立案と実行、海図の保有と使用が行われていないことや

レーダーや目視での当直業務を怠っていたことから、航海を安全に遂行する上で

遵守する必要がある規程への認識不足と履行が不十分であったことがあげられます

 

3.再発防止策


 推定原因に対し、当社では以下の3項目を軸に再発防止に努めます。

 

1) 安全意識の不足に対する再発防止策


(1) 乗船前教育の立会
 船舶管理会社又は配乗会社が実施する船長並びに機関長に対する乗船前教育に同席して

本事故についての情報共有や意見交換などを行い、安全意識の醸成を図ります。


(2) 上級職員の評価
 上級職員(船長・機関長・一等航海士・一等機関士)の乗船前に船舶管理会社又は配乗会社による

当該職員の評価を確認します。

特に中途採用者に関しては、過去所属していた船舶管理会社あるいは配乗会社に

当該職員の評価を照会し、問題の有無を確認します。
 自社船に初めて乗船する予定の上級職員に対しては、面接を実施して人物像を 評価し

その結果を踏まえて問題ある場合は乗船を見送ります。


(3) サーキュラーによる注意喚起
 本件の概要は全自社船宛に周知済みですが、今後、原因と対策についても周知を行い

各船とともに再発防止の徹底を図ります。


(4) 訪船(乗組員との対話)の実施
 訪船時に乗組員と安全会議を実施し、過去の事故事例あるいは本件に関する

情報共有及び意見交換を行い安全意識の向上並びに再発防止の徹底を図ります。
 また、船長・機関長・一等航海士に対しては個別に面談を行います。


(5) 船内及び勤務状況の評価
 下船した乗組員を対象に船内状況に関するアンケートを実施し

問題点があれば、船舶管理会社あるいは配乗会社に内容を通知し、是正を要求します。
 上級職員交代の際は事前に業務引継書を作成・提出させてその内容を確認し

問題点があれば、船舶管理会社又は配乗会社に内容を通知して是正を要求します。

 

2) 安全航海に必要な規程の認識不足や履行不十分に対する再発防止策


(1) 航海関連規程等の遵守徹底
 船舶管理会社は乗船予定の甲板部職員に対し、職務規程・船橋当直基準・航海計画立案手順を熟読させ

本人及び船舶管理会社が署名した後、乗船前に当社へ送付することを義務付けます。
 勤務時間中や船橋での私用携帯電話の使用を一切禁止する旨を全自社船に通達し、徹底します。

 

(2) 電子海図運用に関する教育の実施
 全自社船の航海当直者を対象として、電子海図運用上の知識の向上に繋がる情報コンテンツを

提供して教育します。


(3) 電子海図の運用に関するフェイルセーフの導入
 全自社船において、電子海図を購入するプロセスを踏まずとも、全世界

全縮尺の電子海図を閲覧できるサービスプランを導入することを進めています。

 

3) ハードウェア対応


(1) 船橋内監視カメラによる抑止力強化
 一部の自社船で試験運用を始めており、効果を検証した上で、全船への設置を検討します。


(2) 船舶通信設備の向上
 全自社船に高速大容量通信システムを搭載する予定です。


(3) 動静監視システムの導入の検討
 全自社船の動静を陸上で監視するシステムの導入を検討しています。

 当社は「安全運航、事故防止、環境汚染防止」に最大の努力を続けるとともに同様の海難事故が

二度と発生することのない様、全従業員が一丸となって安全に対して日々切磋琢磨し

最大限の努力を傾注して前述の再発防止策を継続的に実行する所存です。

 

(註 1) 1海里=1,852キロメートル
(註 2) 自社船=当社の100%出資海外会社が保有する船舶


【本船要目】
船 種:ばら積み貨物船
全 長:299.5メートル
全 幅:50.0メートル
乗組員:20名(インド人 3名、スリランカ人 1名、フィリピン人 16名)
船 籍:パナマ
船 主:OKIYO MARITIME CORP.(長鋪汽船株式会社の子会社)
竣工年:2007年5月