センバツは、大阪桐蔭が優勝しました。おめでとうございます。
相手の智弁学園(奈良)のユニフォーム胸には、おなじみの「智辯」の漢字ロゴ。大阪桐蔭は、胸に「TŌIN」のローマ字ロゴ。
「Ō」は、「O」の上に横棒(マクロン)がついています。ローマ字の「長音符号」です。小学校で習ったはずです。
「TŌIN」なのに、どうして「OSAKA」なの?
気になったのは、左肩のローマ字表記「OSAKA」です。まさか「オサカ」じゃないですよね。
当然「オーサカ」(大阪)の表記だと思うのですが、どうして「ŌSAKA」ではないのでしょうか?
「TŌIN」の方は、「昭和の(?)」伝統だからマクロンを使うけど、イマドキ、「大阪」は、「OSAKA」でなくちゃ、というわけだろうとは推測できます。
「OSAKA」のような、オの長音を「O」1つだけで(それから、しばしばウの長音も「U」1つだけで)表記する方式を、ブログ筆者は「英語式ローマ字表記」と呼んでいます。
何しろ、「東京」を「Tokyo」、「京都」を「Kyoto」、「大阪」を「Osaka」、「神戸」を「Kobe」と表記して、知事や市長もそれが当然だとしていても、問題視されないのが、日本の現状なのです。
それぐらい「英語式ローマ字表記」は、当たり前のように思われています。
英語話者が「トキオ」「キョト」「オサカ」「コベ」というような発音をしても、それが、むしろグローバル化の成果ぐらいに感じている日本人の何と多いことか、と『チコちゃん』のナレーション風に言ってみたくなります!
ヘボンは、なぜ長音符号を採用したのか?
ヘボン(今なら、ヘップバーンと呼ばれているでしょう)が『和英語林集成 第三版』で採用したことから、英語話者にとって、日本語の発音に近くなるように工夫されたアルファベットつづりを「ヘボン式」と言います。
ヘボンは、自身も工夫しましたが、当時の英学者たちを中心につくられた「日本羅馬字会」の方式が、もっとも良いということで、それを採用したのです。
日本語話者は、「ドロ」と「ドーロ」というオトは、別の単語だと受け取ります。
しかも、「ドロ」は2拍、「ドーロ」は3拍と感じとります。俳句の初句で「ドロダラケ」は5拍で定型ですが、「ドーロダラケ」は6拍で「字余り」になります。
つまり、母音をのばす「長音」は、日本語のオトのリズムでは、一拍長くなるのです。
ヘボンは、そのことがよくわかっていたからこそ、ヘボン式つづり方で、マクロンを母音字の上に付ける表記方式を採用したのです。
ローマ字でかくならヘボン式が当たり前、というのであれば、ぜひマクロン付きの「Ō」や「Ū」を使ってください。
センバツの胸ロゴには「英語式」がいっぱい!
かつての職業野球や、戦後のプロ野球がアメリカ大リーグにならって胸ロゴをつけるのをモデルとして、野球のみならず、プロ・アマ問わず、団体スポーツチームの、ユニフォームの胸ロゴには「英語式」があふれています。今回の第98回センバツもそうでした。
「チュキョ」ならぬ「CHUKYO」(中京大中京)、「コセイ」ならぬ「KOSEI」(八戸学院光星)、「ソトク」ならぬ「SOTOKU」(崇徳)、「トヨ」ならぬ「TOYO」(東洋大姫路)、「コベ」ならぬ「KOBE/Kokusai/FUZOKU」(神戸国際大付)、「キュコク」ならぬ「KYUKOKU」(九州国際大付)、「オガキ」ならぬ「OGAKI」(大垣日大)、「トホク」ならぬ「TOHOKU」(東北)、「テイキョ」ならぬ「TEIKYO」が2校、肩に「Tokyo」の「帝京(東京)」と、肩に「Niigata」の「帝京長岡(新潟)」。
選手ばっかりなのに「センシュ」ならぬ「SENSHU/MATSUDO」(専大松戸)は、準決勝で敗れましたね。
「英語式」はオの長短を区別しないで「O」1つで表記してしまうため、カタカナで表記したように発音されても仕方ないところですが、いくつ正しく読めたでしょうか?
なお、「OHMI」という「英語OH方式」もありました。「近江(滋賀)」です。
「仮名置き換え方式」のおすすめ
ブログ筆者が推奨するのは、「Toukyou」「Kyouto」「Oosaka」「Koube」のような綴り方(つづりかた、スペリング)です。
訓令式でもヘボン式でもかまいません。要は、ひらがな表記1字ないし2字(2字は拗音のみ)と、一対一で対応させた、ローマ字1字ないし3字(3字はヘボン式の一部のみ)で表記しましょうよ、ということです。
「東京」ならひらがなで「とうきょう」なので、「と」は「to」、「う」は「u」、「きょ」は「kyo」、「う」は「u」で置き換えていけば「toukyou」となります。
小学校でローマ字を覚えたら、誰でもできるような置き換え作業ですみます。
「英語では通用しない」という、英語ツウの人の意見がありますが、逆です。日本語、特に地名や人名などの固有名詞は、日本語ではローマ字(アルファベット)でこう書きますと主張しなければいけません。
中国の習近平主席や、韓国の李在明大統領は、英文記事では一般的に、「Xi Jinping」(シー・チンピン)「Lee Jae-myung」(イ・ジェミョン)と表記されているようです。中国語は拼音(ピンイン)というラテン文字表記から、四声の表記を除いたもの、韓国語は、ハングルに対応するラテン文字表記になっています。
日本語は、というと、日本のローマ字表記規則だった『ローマ字の綴り方』に大部分したがっているものの、マクロンやサーカムシルコンフレクスと呼ばれる長音符号を使わず、特にウやオの長短を、区別なく「U」「O」1つで済ます、ブログ筆者が「英語式」と呼ぶ表記になっています。
間違わないでください。外務省の英文自体がそうなっていて、日本政府の誰も、外国のマスコミに文句も言いません。
それどころか、日本の首相の名は、明治になって170年もたつのに、「Sanae Takaichi」と、「下の名前」が先になって表記されています。
英語でも「Takaichi Sanae」と、名字・苗字を先にしましょう、と申し合わされているはずなのに、外務省はいまだに無視しています。
日本の地名・人名表記を、「仮名置き換え方式」のローマ字表記にしろと、外国の報道機関やグーグルに申し入れてもいいのです。
それこそ、SDGsにもかない、世界の文化の「多様性」を維持することにつながります。
日本語を滅ぼさないようにしましょう。うっかりするとニホンは、自滅することをよしとしかねないところがありますから。
成田徹男
日本語研究者ですが、近ごろは言語運動家な
いし社会言語活動家たらんとしています