「しらだし」なんだ!

 何気なくテレビのCMをみていたら、「シラダシ」というオトが!

 「白だし」は「シロダシ」だと何となく思っていたので、山崎育三郎の発音が「シラダシ」だと認識したとき、ちょっと衝撃でした。


ヤマキは「シラダシ」!!

 ヤマキのホームページによると、ヤマキでは製品の『割烹 白だし』を「シラダシ」と呼ぶようで、少なくとも、山崎育三郎を起用した2022年からのテレビCMで「シラダシ」という呼称を使ってきたらしいのです。

 愛媛県伊予市で1917年に創業した、鰹節・だしメーカーのヤマキは、東京に進出し、1979年に「めんつゆ」、1984年にストレートつゆ(そぱ、そうめん)を売り出し、1984年に「九州や中京エリアで親しまれていた白だしを全国化し」、『割烹 白だし』として売り出した、ということです。

 この『割烹 白だし』について、「yamaki-official」で、「『しらだし』と読んでもらえると嬉しいです」としています。


「しろだし」と「しらだし」とは違うのか?

 「Yahoo! 知恵袋」(2011年12月23日14:15)のベストアンサー(cac********さん)には、上記の質問への回答として、次のように書かれていました。

 「しろだし」「しらだし」どちらでも構いません。
 こういうのは「習慣」に依るところが大きいのですが、「白だし」にはまだそこまでの歴史がない、ってことでしょうね。「白しょうゆ」は「しろ」ですし、「白たき」は「しら」ですよね。こちらは古くからそう言い慣わされて(引用者注 原文のママ)定着しているのです。私は「しろだし」派ですが、地域性は関係ないように思います。


誕生は、碧南市

 ヤマキのホームページでは、1984年に「九州や中京エリアで親しまれていた白だしを全国化し」とありましたが、どうやら白だしは、愛知県碧南市で誕生したようです。

 wikipediaの「白だし」には「白だし(しろだし、しらだし)とは調味料の1つ。」とあり、「白醤油や淡口醤油に、昆布や鰹節、椎茸などから取った出汁、みりん、天日塩などを加えたもの。」、さらに「濃縮のめんつゆやしらつゆと同じように料理に応じて適宜希釈して使用する。」とありました。

 商品化については、愛知県碧南市のヤマシン醸造が初で、1971年商品名「しらつゆ」。「白だし」というのは、同じ碧南市の七福醸造の1978年の製品が初めて、としています(最終変更2021年8月27日)。

 「しらつゆ」に続く「白だし」だったので、「しらだし」と呼ばれた可能性もありそうですが、七福醸造では、どうも、ずっと「しろだし」と呼んでいるようです。


カテゴリーは「つゆ」

 九州について調べてみると、フンドーキンのホームページに、面白い情報がありました。

 フンドーキンは、大分県臼杵市で小手川金次郎が1861(文久元)年創業した醤油醸造業者で、「分銅」の印に「金城」の文字のロゴ、名称「キンジョウ」あるいは「キンジョー」としていました。1931(昭和6)年会社「小手川商店」を設立、1939(昭和14)年二代目小手川武馬(金次郎の甥で、養子となった)が現在につながるロゴのデザインを採用、登録商標とし、会社名も1967(昭和42)年に「フンドーキン」としたそうです。

 「白だし」は2021年発売のようです。そして「醤油の仲間なのに、どうして白だしというのですか?」というQへのAとして、「『白醤油』に『だし』加えて作っていることから」とし、「愛知県が発祥の万能調味料」としていました。

 九州では熊本県でも盛んに「白だし」が売り出されているようですが、いずれも、作っているのは醤油醸造業者で、「醤油の仲間」という認識が一般的なようです。

 さて、「白だし」は、「醤油」というカテゴリーに入れるのには、違和感があります。一方、「だし」というカテゴリーに入れてしまうのは、どう考えても不適切です。

 「醤油」は「調味料」で「液体」です。「だし」は、茅乃舎の各種商品に代表されるような「パック」に詰められた「固体」です。顆粒の商品もたくさんあります。しかし、液体の「だし」は、ふつう固体の「だし」を湯に入れて作るものです。
 茅乃舎、久世福商店は、液体の「白だし」を商品化していますが、これらは、「だし」のカテゴリーではなく、「つゆ」というカテゴリーとされているようです。

 ヤマキの「めんつゆ」を代表とする、醤油などに、固体の「だし」から抽出した液体の「だし」などを加えて希釈したものは、「つゆ」とするのが妥当でしょう。

 今や、もともと白醤油を作っていた醤油醸造業者だけではなく、ヤマキを筆頭に、キッコーマン、ヤマサ醤油、ヒガシマル醤油、ニビシ醤油、佐々長醸造などの醤油醸造会社に加え、にんべん、マルトモ、茅乃舎、久世福商店などの「だし」会社が、多種多様な「白だし」を売り出しています。

 大乱戦の様相です。


「しらだし」は、ヤマキの独創?

 「つゆ」製品を大々的に売り出し、ヒット商品を生み出しているヤマキが、多種多様な「白だし」の中で、ほかの製品と差別化しようとする手段として「しらだし」と呼称するアイデアを、実現したのではないでしょうか。

 ならば、ここはひとつ、「白だし」の「白」に振り仮名をつけてはいかがでしょう?

 それも、ひらがなの「しら」ではなく、カタカナの「シラ」を大きく目立つように。
 あるいは「白だし」の文字より大きく、「シラダシ」とする手もあります。

 もし、うまくいかなかったら、さっさと止めて、「そんなことがあったかな」と「白ばっくれて」しまえばいいのですから。


「しらつゆ」という名前、イイねえ!

 やマシン醸造の「しらつゆ」という名称は、個人的には大好きです。

 白露を戴いた、白菊の花の写真か絵を大きくあしらったラベルに、ひらがなで「しらつゆ」とあるなら、何とも日本らしい雰囲気になりそうに思うのですが……。


成田徹男
 日本語研究者ですが、近年は、言語運動家な
 いし社会言語活動家たらんとしています