今日は僕の恩師、ニコラスについて書いてみたいと思います。

ニコラスに会う前の自分は、美容師という仕事に悩んでいました。

日本での自分は、お客様の為にと考え過ぎたあげく、長さは顎位ですか?それとも唇位ですか?その中間ですか? 
後ろの長さは肩ですか?肩にかかる位ですか?肩に触れるか触れないか位ですか?など、事細かにお客様に聞いて、できるだけお客様の要望に応えようとしていたのでした。

しかし、いつしかそういう自分に疑問が芽生え、仕事の意味が分からなくなり、仕舞いには仕事がつまらなくなってしまいました。

そして海外に渡り、ある時ニコラスに出会いました。

ニコラスのお店でも、日本にいた頃のように、お客様に事細かに聞いてカットしていました。
ニコラスは高級店でしたから、日本にいたころより、さらに細かく聞いて、お客様に満足してもらおうと必死でした。

ところがある日、「あなた、それでもプロなの!」
「一々、私に聞かないで、私に一番似合うスタイルを提案しなさいよ!!」
と怒られました。

その日の終業後、ニコラスにこっぴどく怒られました。
(ちなみにニコラスは、怒る時目眩がするほど怖いです)

「お前は何でそうお客様の言う事ばかり聞くんだ」
「お客様は髪の素人だ。お前は髪のプロだ」
「なぜプロが、素人に一々髪の事聞くんだ。お前は本当のプロじゃない」

貧血で倒れそうでした。
全くその通りだから。

さて、そのニコラスですが、ある日肩までの長さで切ってね、というお客様がいらっしゃいました。
肩までだから、それでここはこうして、こうやってみたいな事をニコラスに言っていました。

ニコラスはというと、まるでうわのそら状態で、目に魂がこもっていません。
言葉も、生返事。

あれ?調子悪いのかな?

さて、カットに入りました。

いきなり、襟足の長さでカット。

びっくりしました。

しかし、当のお客様はもっとびっくりしてました。

そして、怒ってました。
(そりゃ、怒るは)

しばらく、何やら文句を言っていましたが、その内だまりました。

そして、仕上がって鏡を見せた瞬間、その人の笑顔を今でも忘れません。

「何て素敵なスタイルなの」
「私こんなになるなんて、想像もつかなかったわ」

と、すごい感激のしようで、ニコラスに抱きついていました。

するとニコラスはニコニコしながら

「最初から俺に全部任せておけばいいんだ」
「俺はプロなんだぜ」

と軽く言い放ちました。

ああ、これだ。
これがしたかったんだ。

プロとして、お客様に感動を与える。
喜びを与える。
幸せを与える。

そう、なりたくて美容師になったんだ。

自分はプロです。
プロとして、お客様に満足を与える事って、お客様の言う事をただ聞いて、その通りに実行すればいいという事ではないんだ。

いわれた事を忠実にするのもまた大事な事だけど、自分はそこを頑張ろうとは思っていないんだ。
そこで、認められようとも思っていないんだ。

自分がなりたいのは、プロとして、お客様自身も気付かない美しさを引き出す事。
そこで、喜んでもらうこと。

それって難しいです。
でも、だからやりがいがある。

ニコラスが短く切ってしまったお客様。
あの笑顔をみれるのは、そのプロとしての高いハードルを越えた人だけが、見れる笑顔だと思います。

その笑顔が見れるようになろうとしてから、仕事への姿勢は全く変わりました。


これが今の自分の原点だと思います。

まだまだ、ニコラスから教わった事は山ほどあります。

ニコラスへの感謝の気持ちは計り知れません。