表題の意味を具体的に説明しよう。このような記述が出てくるというのは「伝統的筆跡鑑定法」を使用しているからである。それでは,この意味不明の記述について解説したい。
前回,上図にある<同一人物が書いた筆跡>にある5文字について解説したことのポイントを復習してみる。筆跡には,恒常性を持つ「筆跡個性」と,時と場合によって変化する「単なる特徴」の二つがあることを述べた。
すると,第1画の横画は書く度に,標準よりも長い,標準と同じ程度,標準よりも短いなど,長さの相違が現れている。つまり,この第1画の長さは,都度変化する「単なる特徴」であるから,このような箇所をいくら比較しても意味がないことは前回述べた通りである。
ところが,「伝統的筆跡鑑定法」では,この概念がないため比較しても意味がないこのような特徴を指摘する鑑定人が多数存在するのだ。
お分かりの通り,この箇所を比較すれば「個人内変動(変動幅)」が大きいとなる。これでも相当なアホなのだが,下図を鑑定資料とすると彼らはこの特徴を捉えて以下のように言ってくるのである。
「対照資料では,第1画を標準よりも長く書かれているもの,標準的な長さで書かれているもの,標準よりも短く書かれているものがありバラツキが大きく個人内変動が大きい。鑑定資料は,対照資料の下段右の個人内変動の一つの長さと一致している。
このアホさ加減がお分かりであろうか?こんな比較をすれば,どんな筆跡でも同筆の根拠となってしまうのである。こんな輩が裁判所に大量に鑑定書を提出しているのだ。アホでも鑑定人になれる証である。