夜8:30玄関のチャイムが鳴った。
見知らぬ女性の声。
「雛が巣から落ちちゃったらしいんですけど」

鳩と思われる雛がうちの前にうずくまっているとのこと。
「このままだと猫に食べられちゃうので助けてあげてほしい」と言う。

はて、どうしたものか。
とりあえず家からざるやらぼろ布やらをとっかえひっかえ持って行った。
その度に「いろんなものがあるんですねえ」と女性はそれだけでも感激してくれた。
どうにか夜を無事に過ごせそうにしてあげるまでの一時間、女性はそばから離れなかった。

結果を知らせるという約束をして連絡先を聞いて別れた。

翌日獣医に連れて行った後、結局、鳥を保護してくれる鳥屋さんを調べて雛を預けた。

彼女から来たメールに
「その夜は温かい気持ちになりました」とあった。
都会の人は冷たいと思っていたそうだが、近所で親切な人に出会えたと。

「そうですか。こちらこそ、そう思ってもらえてよかったです。」

あの雛はおなかに一杯エサが入っていたそうだ。
きっと落ちる前にお母さんからたくさんエサをもらっていたんだね。