不定期にFCビジネスについて解説中。主に、フランチャイザーのビジネスモデルについての理解を深めることを目的としている。

 

今回は、外食FCの代表的企業であるコメダホールディングスを例にとって、フランチャイザー(FC本部)の収益構造を確認する。なお、コメダの採用する会計基準はIFRSであり、日本基準とは異なるところがある。

 

コメダブレンドのケーキセット

 

 

売上構造

 

2022年2月期有価証券報告書によると、売上収益333億円のうち、最大項目は卸売231億円(売上比69%)である。他の項目は、直営店売上46億円、リースに係る収益14億円、店舗開発収入11億円、その他30億円(ロイヤルティなど)。

 

卸売231億円を年度平均FC店舗数883店舗で割って求められる1店舗当たりの卸売は2619万円。2021年2月期の2328万円からは12.5%増加2020年2月期(コロナ禍前)の2621万円とほぼ同水準まで回復したことが分かる。

 

卸売の中身は、工場で作ったコーヒーやパン、外部から仕入れたその他食材、など。

 

直営店売上46億円を年度平均直営店舗数52店舗で割って求められる直営店舗1店当たり売上は8938万円。月商ベースでは745万円。

 

ダイワロイネットホテル東京京橋店

 

 

コスト構造(原価)

 

売上原価は213億円。詳細については開示がないが、食材費が中心とみられる。また、人件費29億円、減価償却費15億円が含まれている。売上原価に含まれる人件費や減価償却費は、金額からして、自社工場や直営店舗に関するコストであると考えらえる。

 

原価率(売上原価/売上収益)は64.0%。粗利率(売上総利益/売上収益)は36.1%で、前年同期の35.9%からやや上昇。

 

なお、直営店中心の外食企業では、粗利率は60~70%位であることが多いため、コメダの粗利率は一見低いように感じられるかもしれない。これは以下の要因による。

 

(要因1)コメダの売上収益(分母)の中心となる卸売は、FC店がFC本部に支払っている仕入代金の総額である。消費者が店舗に支払っている飲食代金の総額よりも小さい。

 

(要因2)コメダでは直営店舗のコストを、人件費や減価償却費を含め、売上原価に計上している(とみられる)。

 

有楽町ビックカメラ店 入り口

 

 

コスト構造(販管費)

 

販管費は49億円で、売上収益比ではわずか14.7%。営業利益は73億円、営業利益率(営業利益/売上収益)は21.9%と高い。

 

販管費の内訳は、人件費17億円、運賃15億円、減価償却費2億円、その他16億円。人件費や減価償却費は、本社や間接部門に関するもののみを販管費に計上しているようだ。直営店舗に関するコストは売上原価に計上している様子。

 

EBITDA(償却費控除前の営業利益)は89億円。EBITDAマージンは26.8%。

 

なお、FC店舗における人件費その他のコストはコメダホールディングスのPLには計上されない。

 

有楽町ビックカメラ店 店内

 

 

まとめ

 

2022年2月期の売上収益は333億円。売上収益を100%とすると、コストは、売上原価64.0%、販管費14.7%、など。売上総利益は36.1%、営業利益は21.9%という高収益。

 

コーヒー、パンの製造を内製化しているのが同社の収益構造上の強みである。

 

なお、営業利益には、時短営業協力金などの補助金収入4億円が含まれている。これは直営店舗が受け取ったもののみを反映している。

 

 

今年度の会社計画

 

ちなみに、2023年2月期に関する会社計画は、売上収益370億円(前期比11.5%増)、営業利益80億円(9.5%増)と増収増益。営業利益率は21.6%と、若干の低下を見込んでいる。

 

他の外食企業同様、食材価格の高騰、円安などの影響で利益率が圧迫されるのを値上げでカバーしていく計画になっている。店舗における商品価格は4月に値上げ済み、FC本部からFC店への卸売価格は9月から値上げの予定。