これから、フランチャイズ(FC)展開で成功している企業のビジネスモデルについて不定期で解説していくつもり。

 

 

ゆるめのオペレーションで台頭したFC事業に注目

 

FC展開で最も成功しているのはコンビニであろう。しかし、フランチャイジー(FCオーナー)にとって経営の自由度が制限されているほかオペレーション上の要求も厳しく、時折、フランチャイザー(FC本部)とFCオーナーとの間で争議が生じているようだ。

 

一方、FCオーナーにとってのオペレーション負担をなるべく軽減しつつも、エンドの消費者の需要を的確にとらえてきたFC事業展開企業も存在する。代表的なブランドには、コメダ珈琲店(運営企業はコメダホールディングス)、業務スーパー(神戸物産)、などがある。

 

 

コメダと業務スーパーのFC比率

 

コメダの2022年2月末の総店舗数は956店舗で、うち902店舗がFC店。FC比率は94.3%である。

 

このうち、コメダ珈琲店ブランドは940店舗。うち896店舗がFC店。

 

 

業務スーパーの2021年10月末の店舗数は950店舗、うち947店舗がFC店。FC比率は99.7%である。




店舗型FC事業を展開する企業のビジネスモデル

 

店舗型のFC事業展開企業(外食、小売など)において、売上高は、①FCオーナーへの製品・商品等の卸売売上、②FCオーナーから受け取るロイヤルティ、③その他(新規開業するFCオーナーから受け取る加盟金や店舗開発に関する一時収入など)、で構成されている。

 

一方、直営店中心の外食企業における売上高は、店舗売上高の合計+αになる。食材仕入などの売上原価は売上高の30%程度であるのが一般的。直営店事業中心の企業とFC事業中心の企業とでは、PLを単純に比較できない点に留意が必要だ

 

両者はBSも大きく異なる。FC店舗に関する資産はFC本部企業のBSには計上されない(FCオーナーに対してFC本部が店舗をリースしている場合を除く)。店舗に関する設備投資を行うのはFCオーナー。成功しているFC本部企業は基本的にアセットライト経営で、フリーキャッシュフローが潤沢だ。

 

コメダホールディングスのフリーキャッシュフローは、2020年2月期88億円、2021年2月期69億円(定期預金除く)。

 

神戸物産のフリーキャッシュフローは、2020年10月期22億円、2021年10月期39億円。神戸物産は最近、プレミアムカルビという焼肉店を直営で出店しており、設備投資額が増えているため、過去よりもフリーキャッシュフローが減少している。一方、業務スーパー事業のキャッシュフローはかなり潤沢であるとみられる。

 

 

FCオーナーへの製品・商品等の卸売売上

 

コメダの場合、コーヒーやパンについては自社工場で製造しており、機能としては食品メーカーに近い。これらの製品は、原材料がコーヒー豆、水、小麦などであり、通常の環境下では高いマージンを実現できるものである。ケーキその他の食材については外部からFC本部が購入したものをFC店に卸売しているようだが、マージンは限定的とみられる。

 

 

 

 

業務スーパーの場合、神戸物産の自社工場で生産した製品輸入商品(会社はこれをプライベートブランド(PB)と呼んでいる。ただし、統一されたブランド名称はない)の卸売において高いマージンを実現している。直近でPB比率は33%位。PB品の場合、「販売元 株式会社神戸物産」と書いてある。



ナショナルブランド商品(他社製品)については、店舗の品揃えや、消費者への価格訴求のために揃えているようだが、利益は追及していない。

 

なお、業務スーパーで売られている生鮮品(肉、野菜など)は、FCオーナーが神戸物産以外から独自に仕入れているもの。FC本部以外からの仕入を認めている点はコンビニなどと大きく異なる。



 

ロイヤルティと加盟金

 

コメダの場合、加盟金は1店舗目が300万円、2店舗目以降が150万円。ロイヤルティは月額1席当たり1500円。100席ならば15万円、150席なら22万5000円。

 

業務スーパーの場合、加盟金は200万円ロイヤリティは総仕入高の1%(直轄エリアの場合)。

 

ロイヤルティは金額としては小さいが、原価がほとんどかからないものであるため、粗利率が非常に高い(100%とみなしてよい)。