行政と民間の「架け橋」となる人 | ALL or Nothing

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日本の医療を次世代に残していくために・・・
病院前救急医療を中心に日本の医療改革に若干熱くなっています。
 

救急搬送数の増加、
救急車の不適切利用、
地域救急医療の崩壊、
救急医の減少・・・・


どんな人でも耳にしたことのある言葉ではないだろか。

しかし、そんな事を耳にしても、普通に生活をしていると、救急車を利用するというのは、近くて非常に遠い存在であって、できれば、お世話になりたくないと思って生活をしている人が大半だと思う。でも、何かあった時のために無くなっては困るとは思っている。


そんな遠い存在ながらも、必要不可欠と思われているのが救急医療。


医療に携わる人たちの中でも、病院の外の救急医療、病院前医療・救護の制度をちゃんと知っている人はとても少ない。むしろ、医師や看護師で、救急に携わっている人であっても、「制度」をしっかり把握している人はほとんどいないはずだ。救急救命士法が施行され20年以上が経過しているのに「救急救命士法違反」で処罰されている人は一人もいない理由を理解する人はまずはいないだろう。(処罰になってる人は存在している。)



よく驚かれることだが、メディカルコントロールと言われているその「制度」に法的根拠は存在していない。その理由を理解している消防職員も少ないのではないだろうか?メディカルコントロール協議会は単なる任意団体で法人格ではない。メディカルディレクターと呼ばれる医師個人がすべての質の担保をしなければならないのか?といえば、それも法的な責任は追及はできないはずだ。メディカルコントロールがどうであれ、医療処置に関する判断は、救急救命士なり、医師なり、有資格者がその資格の元に判断することであって、地域で任意の一定のルール決めがなされている状態にしかない。



地域格差があまりにも大きいのはその地域にいる「医師」の個人差が顕著に反映されるからだ。激しい地域差がある、そのことを地域住民が知る機会がない。地域の比較なんてもんは出されていないのだから、比較しようがないんだけれど、自分がが住んでいる地域の救急医療がどんな状況下にあるか、把握しているという国民は皆無に近いのではないだろうか?(救急事案等に遭ってから調べるというケースはあると思うが)



救急医療においては、他の医療と大きく違う点は、病院到着までの「医療」を「行政」が担っている事だ。


病院前の「医療」をある意味で行政がすべてを担っているのは日本独自であって、このような制度をとっている国は他にはない。ここは非常に良い点があって、行政が担っている以上、患者がどんな条件(保険の有無、住所不定者等)であっても、医療の拒否を行わない。日本は命の差別をしない非常に素晴らしい医療制度を持っている。ここは、日本の誇りだと私は思っている。


その代り、行政負担は増える一方にある。


これは急激に進んだ高齢化社会においては、現行制度であれば、今後も、恐ろしいほどの行政負担が増加する。これは、容易に想像できるはずである。


医療のフリーアクセスが問題視される一方で、行政が行う病院前医療においては、今後、福祉対応のニーズが高まる一方で、行政事業としては、福祉的要素であっても、それを拒否できる仕組みには現状はない。


この先、現行制度のままであれば救急医療は間違いなく破綻する。
それもそんな遠い未来ではない。
たとえ安倍内閣がどんなにバブル経済を生み出したとしても解決しようのない問題だと思う。


時々、消防職員の方とお話をさせて頂くと民間機関で働く救急救命士に対して誤解をしている人に遭遇することがある。これも、刷り込まれた誤解なのでしょうけど(これは、某業界誌の影響も強いけど)救急救命士は民間で存在できないと思い込んでる人がいる。


もし、民間機関での業務を禁止するのであれば、救急救命士法で「消防組織以外での活動は行うことができない」と明記されるはずだ。なぜ、法律にそう書かれていないのかといえば、条件が整っていれば民間での活動を禁止できない。禁止する必要がないからだ。20年前の制度制定のころと違って医師の指示を受けることのできる環境を整えるのは難しいことではなくなったことも大きな要因だと思う。



私たちは、毎週、弁護士たちとの制度関する勉強会を行てきて、昨日で、第16回を終えた。様々な救急救命士の活動の法的解釈を行ってきたが、今、この時代からこそ、消防経験をもった救急救命士の力が民間で必要だと強く感じている。


どの国も病院前医療には行政機関が存在している。(民間との併用ではあるが)
救急医療には行政事業は欠かせない。
これが大前提。


でも、その一方で、行政だけに頼っていられる時代でもない。


大規模災害が起き、行政機関がダメージを受けたり、行政が入ることができない区域ができたり、または、民間主導の大規模イベントであったり、民間と行政が協力体制を構築することで、限られた医療資源の無駄遣いを避けることはいくらでもできる。


むしろ、今、その制度を作り上げなければ、行政が行う病院前医療体制の限界が目の前に迫っている気がするのだ。病院の受け入れ先はどんどんなくなる一方で、119番通報はどんどん増える。その狭間に立たされるのは、消防組織でしかない。




救急救命士として20年近く現場経験してきたベテランたちが、続々と救急車を降りる年齢になってきている。民間養成校ができるまでの約10年は、地方自治体がお金を出して救急救命士を育成してきた。消防組織で働く救急救命士は、たとえ医療資格者だとしても、公務員の職務が優先されるので、救急救命士資格者であっても、市役所へ出向していたり、総務課にいたり、救急救命士として業務を行っていないケースも非常に多い。経験豊富なベテランの知識や技術を現場で活かしきれていないケースはたくさんある。




でも、今、その経験豊富な人たちの技術と知識を社会が必要としている。
その一方で大ベテランの救急救命士の再就職が、病院の「守衛」さんだとも聞いた。



ベテラン救命士の皆さんの技術と知識を、消防で働かない救急救命士たちに伝えることができないのだろうか?民間で活かすことによって、地域住民を安全を守ることに繋がらないのだろうか?
地域で大規模イベントがあるときは、行政への届け出が義務付けられているのだから、そのイベントと行政との調整役になってもらうことはできないのだろうか?



架け橋になる人材を社会が必要としている。

行政と民間の架け橋になってほしい。

社会が今、その経験と知識を必要としている。


消防で培った救急救命士としての経験と知識は地域住民にとって大きな安心に繋がり、その知識と技術を消防経験のない救急救命士に伝承してほしいとも願う。地域住民の税金で取得した救急救命士資格だからこそ、地域住民に還元される制度になっていってほしいと願う。


救急医療を守るために携わっている私たちができることはたくさんあると思う。
何もしないで「ダメだダメだ」と言ってても何も解決はしない。



救急医療に携わってる人たちが、救急医療を守ろうと必死に頑張らなければ、もっともっと環境は悪化するだけだと思う。誰か何かをしているだろうか?必死に現状を打破しようとしているだろうか?実は、何もしていないで指をくわえているだけじゃないだろうか?



行政と民間の架け橋になってくれる人を・・・

社会が必要としている。