労災保険法は、労働者に適用される法律であることから、
代表者その他役員、労働者性がない家族従事者には原則として適用されません。
一定の要件を満たす代表者その他役員、労働者性がない家族従事者は「特別加入」という制度を適用することにより労災保険法が適用されます。
要件
1、中小事業であること(労災保険法33条1号、同法施行規則46条の16)
(1)金融業、保険業、不動産業、小売業・・・常時50人以下の労働者を使用している
(2)卸業、サービス業・・・常時100人以下の労働者を使用している
(3)その他業・・・常時300人以下の労働者を使用している
上記(1)(2)(3)を「特定事業」といいます。
労働者数の算定方法
・事業所ごとではなく企業単位で労働者数を判断
・同一の場所で複数の事業を行っている場合は、労働者数の多寡により業種を判断
・業種の分類は、日本標準産業分類による
・常時〇〇人には、通年1人の労働者を使用している事業主、通年雇用ではなくても年間を通して相当期間※労働者を使用している事業主は含まれるが、労働者を使用しないことが常態である事業主は含まれない。
※相当期間とは年間100日以上とされています(厚労省 特別加入制度のしおり(中小事業主)
(昭和四〇年一一月一日)
(基発第一四五四号) 抜粋
2以上の事業を行う事業主にあっては、各事業の使用労働者数を合計した数によって判断すべきことはいうまでもない。したがって、個々の事業の使用労働者数が常時300人、50人又は100人以下であっても、使用労働者の総数が常時300人、50人又は100人をこえるときは、その事業主は、特別加入をすることができない。
常時300人、50人又は100人以下の労働者を使用する事業主には、通年1人の労働者を使用する事業主はもちろんのこと、労働者の通年雇用を行わない事業主であっても、年間において相当期間にわたり労働者を使用することを常態とするものも含まれるが、労働者についての保険加入を前提とする制度の趣旨及び法第33条第3号の規定との関連からいって、労働者を使用しないことを常態とする事業主は含まれない。
金融業、保険業、不動産業、卸売業、小売業又はサービス業の業種の区分については、日本標準産業分類によることとする。この場合、清掃業、火葬業、と畜業、自動車修理業及び機械修理業はこれらの業種に含めないで取り扱うこととする。なお、2以上の異種事業を行う事業主にあっては、それぞれの事業に使用する労働者数を考慮して、いずれの業種に属するかを判断するものとする。
2、上記事業の事業主、上記事業に従事する者であること(労働者ではないこと)
事業主について
・事業主が法人その他の団体でるときは、代表者(労災保険法33条1号括弧書)
・個人事業であれば個人事業主
・建設事業では下請企業も事業主に該当する
(昭和四〇年一一月一日)
(基発第一四五四号)
数次の請負による建設の事業の下請事業を行う事業主も、特別加入の趣旨から、法第33条第1号の「事業主」として取り扱うこととする。
特定事業に従事する者とは
・労働者以外の者で事業に常態として従事している者
(例)労働者以外の者で代表者以外の労働者性がない役員、労働者性がない代表者の家族従事者
(昭和四〇年一一月一日)
(基発第一四五四号)
事業に従事する者とは、労働者以外の者で事業に常態として従事する者を予定したものである。事業主が法人である場合にあっては、代表者以外の役員のうち、労働者に該当しないものも、これに含まれる。
3、労災保険適用事業であること
労災保険強制適用事業は問題とはなりませんが、暫定任意適用事業は労災保険の任意加入をしなければいけません。
4、労働保険事務組合に労働保険事務処理を委託をしていること
5、その事業に従事する者と包括加入すること(労災保険法34条1項柱書)
事業主は上記事業に従事される者と包括して特別加入する必要があります。
原則として、事業主のみ特別加入することは認められません。
これは上記事業に従事される者は労災保険の適用がないのに事業主のみが同法の適用されて保護を受けることは不合理であるためです。
しかし、以下のように例外も認められており、事業主のみを特別加入から除外することも可能です。
原則・・・包括加入
例外・・・病気療養中・高齢その他の事情のため実際に就業しない事業主、事業主本来の業務のみに従事する事業主
6、特別加入申請書を管轄労働基準監督署を経由して管轄労働局長に提出をして労働局長の承認を得ること
・実務上は、労働保険事務組合を通して申請書を提出します。
【その他】
◆事業ごとに特別加入しなければ、各事業で生じた事故については労災保険が適用されません。
したがって、労災保険の適用事業が建設業ならば建設業の特別加入 、さらに別な場所で独立して製造業をしているならば製造業の特別加入をする必要があります。中小事業主は重ねていくつも特別加入することができます。
(昭和四〇年一一月一日)
(基発第一四五四号)
同一の中小事業主が2以上の事業についてそれぞれ保険加入をし、事務組合に労働保険事務の処理を委託しているときは、当該事業主及びその事業に従事する者は、1の事業のみについて特別加入することができるのはいうまでもないが、2以上の事業について重ねて特別加入をすることも妨げない。
◆特別加入時の健康診断
「特定業務」に一定期間従事したことがある特別加入予定者は、
労働局長が加入時健康診断が必要と認めた場合に健康診断を受けなればなりません。
(健康診断の費用は国の負担、交通費は自費です。)
これは、すでに疾病等があるにも関わらず特別加入後に労災保険給付の請求がなされていたことから、
特別加入時の健康診断を設けて労災保険適用の対象から除外するための制度です。
特定業務と一定期間
・粉じんを扱う業務・・・3年以上
・振動工具使用の業務・・1年以上
・鉛業務、有機溶剤業務・・・6か月
◆特別加入申請の労働局長の承認日
加入希望者が申請書を提出した翌日から起算して30日以内の希望する日
◆申請書記載事項等
中小事業主等の特別加入)
第四十六条の十九 法第三十四条第一項の申請は、次に掲げる事項を記載した申請書を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出することによつて行わなければならない。
一 事業主の氏名又は名称及び住所
二 申請に係る事業の労働保険番号及び名称並びに事業場の所在地
三 法第三十三条第一号及び第二号に掲げる者の氏名、その者が従事する業務の内容並びに同条第二号に掲げる者の当該事業主との関係
四 労働保険事務組合に、労働保険事務の処理を委託した日
2 前項第四号に掲げる事項については、労働保険事務組合の証明を受けなければならない。
3 法第三十三条第一号及び第二号に掲げる者の従事する業務が、次の各号のいずれかに該当する業務(以下「特定業務」という。)である場合は、第一項各号に掲げる事項のほか、同項の申請書にその者の業務歴を記載しなければならない。
二 労働基準法施行規則別表第一の二第三号3の身体に振動を与える業務
三 労働安全衛生法施行令別表第四の鉛業務
四 有機溶剤中毒予防規則第一条第一項第六号の有機溶剤業務又は特定化学物質障害予防規則第二条の二第一号の特別有機溶剤業務
4 所轄都道府県労働局長は、第一項の規定による申請に係る法第三十三条第一号及び第二号に掲げる者の従事する業務が特定業務である場合であつて、その者の業務歴を考慮し特に必要があると認めるときは、第一項の規定による申請をした事業主から、その者についての所轄都道府県労働局長が指定する病院又は診療所の医師による健康診断の結果を証明する書類その他必要な書類を所轄労働基準監督署長を経由して提出させるものとする。
5 所轄都道府県労働局長は、第一項の規定による申請を受けた場合において、当該申請につき承認することとしたときは、遅滞なく、文書で、その旨を当該事業主に通知しなければならない。当該申請につき承認しないこととしたときも、同様とする。