クリスマスの時期になると、ベルギーのフランダース(フランドル)地方を舞台にした、物語 『フランダースの犬』 を想います。
アントワープの教会内に飾ってある同郷の先輩ルーベンスの絵の前で、画家を目指す少年ネロ(ネルロ・ネッロ)と愛犬パトラッシュが凍死したのはクリスマス・イブの夜でした。
『キリスト昇架』
ルーベンス
アントワープ・聖母大聖堂
Wikipediaからお借りしました
わたしが児童画コンクールの審査委員を断ってきたのは、この物語のトラウマがずっと続いているからでしょう。そして、犬派か猫派かと聞かれた時に、(迷った末に)「犬派」 と答えるのも、この物語の影響です。
(物語の舞台となったベルギーには、美術館巡りのツアーの仕事を含め3度の聖地巡礼を行っています。かの地から呼ばれていないのに、くり返し訪れるのは、完全な片思いです。)
その実行力の源泉となり、そして人生のターニングポイントにもなった 『フランダースの犬』 との最初の出逢いは、小学3年生の時に親からプレゼントされた川端康成著の本(偕成社)でした。
昭和4年の菊池寛 訳(1929)や、林芙美子訳(1950)、そして村岡花子訳(.1954.)など、多くの訳者たちによって書かれてきた『フランダースの犬』ですが、川端康成だったことを意識したのは、ずっと後になります。
川端康成訳
フランダースの犬
(幼年世界文学全集9)
偕成社 昭和38年 230P
美しい装丁は、荒尾元はじめ 河添宗輔 近藤聰 横井大侑だいすけ 各氏によるもの。
絵: 石田武雄
(フランダースの犬)
幼なじみのアロアと
愛犬パトラッシュを描くネロ
さし絵: 石田武雄
さし絵: 石田武雄
さし絵: 石田武雄
『フランダースの犬』の印象的なさし絵を描かれた石田武雄氏(1922-2010)は、動物画などで活躍。日本画家・石田武として山種美術館の大賞を受賞しています。
調べているうち、(2010年) 12月24日に亡くなられていたことがわかりました。
偶然でしょうか・・・
この本、小学校と中学校をそれぞれ転校し、以降10か所以上引っ越しして、その度に書籍を処分してきましたが、どうしても手離せなかった本のうちの一冊です。
冤罪で獄に入れられても、そこに持っていく本の1冊であることは確かでしょう。
次回へ続きます