首里城炎上。ショックでした。

 

31日早朝のテレビニュースで第一報を見たとき、「樹齢500年の台湾ヒノキたちが燃えている。500年の時と空間が一瞬で消えてしまう」と声にしました。以前、知人の寺社建築家から、首里城の建築に樹齢500年の貴重な台湾産ヒノキを使っていると聞いていたので、炎上中の、レントゲン写真の骨を見るような正殿の姿に、思わず声をあげたわけです。

 

「西日本新聞」 2019/10/31 夕刊

 

そして、テレビに次々映し出される炎上中の正殿と、黒澤明監督の映画『乱』のクライマックスシーンで、

4億円をかけた城のセットが炎上する場面がダブったのです。城主(仲代達矢)が焼け落ちる城を背に、石段をゆっくり下りてくるシーンは、テイク1のみ。やり直しがきかない1回限りの撮影でした。

 

黒澤明監督 『乱』 レーザーディスク PONY CANYON PCLP-00109    LDコレクションから 

 

4億円セットの大きさと作りこみに注目。

 

沖縄県民の皆さんや琉球王国の子孫の方たちには不謹慎と思われるかもしれませんが、何度も観ている映画『乱』の見せ場でしたから、すぐ連想しました。

 

『乱』(東宝)は、1985年に公開された日・仏、合作映画です。 シェイクスピアの『リア王』をベースに、毛利元就の「三本の矢」の故事も使われています。構想10年、総製作費26億円以上をかけたスペクタクル時代劇は、できれば大きい画面で観てほしい。今でしたら、4Kデジタル修復版のDVDをお勧めします。

 

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写真は『羅生門のDVD。 2004年発売の韓国製『RASHOMON(YDM)。字幕はハングル表記、音声は日本語です。

音楽/早坂 文雄  カメラ/宮川一夫  出演/三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬ほか。

 

翌日、鎮火した首里城・正殿一帯の映像を見て、これまた黒澤監督作品『羅生門』 (大映。1950年/昭和25年公開)の最初のシーンとなる京の都の入口で、3人の男たちが雨宿りしている巨大な木造門が、二重写しに浮かび上がりました。

 

平安時代の京。疫病が続き、地震と幾多の戦乱で朽ち果てた「羅城門」が、今回焼失した正殿と同じ姿に見えたのです。

 

時代劇では、巨大木造建築物内に、消火器、火災報知機、スプリンクラー、その内外に消火栓などの美術セットがありません。当たり前です。
しかし、首里城火災の調査によって原因が絞られると思いますが、あまりにお粗末だった防火体制と設備、そしてメンテナンスやセキュリティ問題などが浮上しています。
 
沖縄の宝、国の宝、世界の宝の建造物「首里城」に、スプリンクラーや煙探知機が設置されていないなんて、時代劇か!
 
関係各位の防火意識が、前近代的だったのです。時代劇よりも荒唐無稽な防火体制意識に、唖然茫然。笑いも起こりません。その点に前から警鐘を鳴らしていた人たちこそ、これからの首里城の管理責任者や復元・復興事業の責任者になってもらいたいものです。
 
首里城火災は「予見された悲劇」だったということを、近くブログでつぶやきます。
 

関連拙ブログ:

ノートルダム大聖堂炎上 (2019/04/01)
https://ameblo.jp/jksta-322/entry-12526994774.html

 

『羅生門』マチ子さんの訃報 (2019/05/23) ※パリの映画館で「羅生門」が上映されていました・・・

https://ameblo.jp/jksta-322/entry-12526995050.html


真実が言いにくい日に『羅生門』 (2017/11/29)
https://ameblo.jp/jksta-322/entry-12526988597.html