緒方先生は、美術界や熱烈な愛好家の間で、超極細の点が打てるペン(英・ジロット社製)を使った画家として知られています。
作品発表の場を、個展とグループ展 とし、無所属です。
はがきサイズが中心で、大きい作品といっても美術誌『芸術新潮』 の1ページ程です。
それに、納得する絵を一枚仕上げるのにカ月から2カ月前後かかりますから、実物を観られる人は多くありません。
それなら
最先端のデジタル写真や高精細印刷、高画質のモニターなどで再現し、複製を多く作ったら良いかとなると、作品の深みや凄み、他に例を見ない独自の空間表現など半分も伝えられていないようです。

似て非なるもの。 今のところ、複製が極めて困難な作品といえます。
ですから作品の真価を知るために、出来るだけ精緻なオリジナル作品を、直接観ていただきたいと思います。
 
話を戻しましょう。

先生との奇跡的出会いは、美大受験の「お茶美」からですが、御自宅に遊びに行くようになったのは、わたしが20歳になったばかり、芸大に入学した頃からです。
会話の始めは時事的な美術談義から、例えば「アンドリュー・ワイエス展」とか「エゴン・シーレ展」「琳派展」などから入っていくのですが、先生は“反骨の画家”なので、さし障りのない美術番組のゲストや評論家のコメントと違い、独自の感覚と切り口で、はっきり語られるので愉快痛快、大爆笑となることもありました。
 
話も中盤に入ると、趣味と実用の自転車、阪神タイガースのテレビ応援、あん の入ったお餅など甘い食べ物文化論、そして実践恋愛論から往年の演奏家レコードや新人指揮者の演奏会などなど、話し出すと連射砲のように止まらなくなって、いつも0時近い山手線に乗って帰るパターンでした。
最寄り駅まで歩いて送ってくださり、電車が着くまでの間も改札口前で熱い話が続き来ました。
面白い話を毎回訊けるのですから、新婚間もない貴重な時間を割いていただき申し訳ないなと思いながらも、通い続けました。
 
最高のコンサートを自分一人、最高のS席で聴いている感じでした。
 
あの時の先生のお話を、メモするなり録音をとっていたら、どうだったでしょう。
その時に気付かなかった大切なヒントが、そうとう散りばめてあったに違いありません。本当に至福の時でした。

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   上の肖像は去年ハンガリーに行った時、思わず恩師の髪型だと
  叫んだ!? 作曲家でピアニストのフランツ・リスト リストの家にて
 
緒方洪章先生(1940- )
写真:先生のブログより
 
緒方先生は、緒方洪庵の玄孫(やしゃご=ひ孫の子)で、代々が医学関係の家系なのに美術方面に進まれたユニークな お方です。
(お茶美時代、生徒たちは「似た名前だ」とただならぬ気配でうすうす気付いていたのですが、知らないふりをしていました。)
 
 ご先祖関係の資料を手にとって拝見したこともありました。
淡々とした普通の生活の中で、身の周りや手の届くところに歴史を感じる物があることと、いつも先人のことを想う大切さを学びました。
時折、先生の背後から歴史の圧力を感じる瞬間があり、200年間の時空を旅させてもらいました。 文字や知識だけでは決して体験できない反応でした。
 
1977年のNHK大河ドラマ、司馬遼太郎原作『花神』 では、洪庵役が宇野重吉でした。 子どもの時に見た記憶があります。
最近では村上もとかの『JIN-仁-』 で武田鉄矢が洪庵を演じています。
手塚治虫氏のご先祖、手塚良仙も洪庵の適塾門下生でしたから、歴史漫画 『陽だまりの樹』 に当時のエピソードが描かれていますし、この春、連続テレビドラマが放送されました。
これからもそのように細く長く伝承されていくのでしょうが、もっともっと評価してほしいものです
 
もう一度、緒方洪庵を中心にしたNHK大河ドラマが観たい。 閉塞感ただよう今こそ作ってほしいと思いますが・・・
 
その時は是非、先生が謎の幕府奥絵師で特別出演(特殊メイクは必要なし。そのままで)、またタイトルバックの絵で楽しませてもらうことがファンとしての夢でしょう。
 
 
緒方洪庵(1810-1863)
江戸末期の医師、蘭学者、教育者、日本近代医学の祖といわれる。
種痘所を江戸に開設。東大医学部の前身となる。
大坂の蘭学塾「適塾」門下生では大村益次郎・福澤諭吉・橋本左内・手塚良仙が有名。
 
調べていくと、福岡市出身の政治家・緒方竹虎(1888-1956)や、息子嫁で国際的に活躍されている緒方貞子さんも洪庵と関係していることがわかりました。
また大分県の緒方町辺り (合併により現在豊後大野市) が洪庵のルーツだそうで、

長崎はじめ九州繋がりが多いのも、何かご縁があイメージ 4るのかなと思いました

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(左図はwikipediaより)