台湾ドラマ「茶金」と客家茶業史
以前、台湾の友人からもらった『東方美人』という本。
「小説だけど、東方美人茶に関連する人物をテーマに書かれた本だから読んでみたら」
と言ってもらった本でした。
博論が終わってから、少しずつ読み始めました。
本の舞台は、台湾の新竹県北埔。
北埔は有名な客家の町として、週末には多くの観光客でにぎわっています。
わたしも何度か訪ね、ここ数年は、史学研究の一貫でフィールドワークで来ていました。
山地にいる戦前生まれの茶農たちは、時に台湾国語や台湾語(閩南語)さえ解さないため、客家語を解す客家の友人や先生に協力してもらいながら、インタビューをしていました。
ここ北埔は、日本統治期、東方美人茶(日本統治期の名称ではありませんが便宜上、東方美人とします)の産地として発展した場所。
「東方美人」の本は、当時、台湾茶製造で財を成した姜家を題材として書かれています。
そして、コロナ禍の2021年、本と同じ姜家を中心としたテレビドラマ「茶金」が放映されていました。
ドラマでは、主に、戦後の台湾茶について描かれています。
昨年、訪台した際、客家の友人に「茶金」を題材に作られた博物館に連れて行ってもらいました。
すでにドラマ放映から4年経っているからか、来館者はわたしたちを含めて2組だけ。
平日だったこと、また、不便な場所にあるためかもしれません。
館内は、ドラマで使用した衣装などをはじめ、セットを再現した部屋が多くあります。
ほかにも、当時の製茶や客家の茶文化を紹介しているところ
台湾だけでなく、イギリスや日本の喫茶をイメージして飲食できるところもありました。
史料や当時のものはなく、ほとんどがセットであったものの、面白かったです。
大学院で台湾茶業史の研究をはじめてから、10年あまり。
台湾の茶師たち、先生や友人たちが協力してくれているおかげで、史学研究を進めることができています。
台湾では重版があまりされないため、学術本を入手してもらったり
今回のように、行きたい場所、見たい場所へ連れて行ってもらったり
戦前生まれの茶業に携わっている方々を紹介してもらったりしていました。
戦後75年以上経った今。
コロナ禍前、戦前生まれの茶業関係者を紹介されたとき、「次はないかもしれない。明日、明後日には絶対行きなさい」と言われ、すぐにアポをとって訪ねていました。
コロナ禍を経て、訪台を再開して2年。
お会いした方たちの多くは、この4年の間で鬼籍に入られていました。
直接、当時の台湾茶、台湾茶業についてお伺いできたのは貴重な財産であり、得難い経験となりました。
今回の博物館やドラマについて、また、貴重な経験などについても、機会があれば、少しずつレッスンなどでご紹介したいと思います。
そして、いつか、台湾茶業史を含めた史学メインの講義を行いたいと思います。
ご興味のある方は、今しばらくお待ちいただけると幸いです。
中国&台湾茶教室―Tea Salon Xingfu主宰
中国茶&台湾茶研究家 今野純子