今回は紅砒ニッケル鉱です。


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紅砒ニッケル鉱(Niccolite)【硫化・六方】兵庫県養父市大屋町夏梅鉱山


いくつかの書籍で見てみましょう。


大鑛物學 下巻
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「獨逸にて銅ニッケル鑛と稱するは、其の色が單に銅に似たるによるものにして、實質に於ては銅と何等の關係を有せず。~但馬國夏梅鑛山にては團塊状をなして蛇紋岩中の粘土脈中に産す。ニツケル鑛なるも多く産すること稀なり。」とあります。


本邦鑛物圖誌 
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「ニツケルの鑛石は屢ゝ蛇紋岩に伴ふ。本邦にて唯一の稍ゝ顯著なニツケル鑛床といふべき兵庫縣養父郡夏梅鑛山の場合もさうであつて、ここでは蛇紋岩を貫く粘土脈中の球塊に種々なニツケル鑛石が認められる。球塊は大さ區々であるが大なるは徑15㎝に達する。それらは大部分含ニツケル磁硫鐵鑛、黄銅鑛、クローム鐵鑛であるが、之を割ると時に紅砒ニツケル鑛の特色ある色が帶状に認められる。」とあります。


日本鉱物誌 3版 上
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「兵庫縣夏梅鑛山の紅砒ニツケル鑛は蛇紋岩中の粘土脈に球塊をなしゲルスドルフ鑛と共出す。球塊の大いさは徑15㎝に達し、内部は紅砒ニツケル鑛の多き部分とゲルスドルフ鑛の多き部分とが共心的帶状構造を示すこと多し。銅紅色にして緻密なる集合體をなし結晶形を示さず。尚Asの一部はSbにて置き換えられたるものの如し。」とあります。


日本地方鉱床誌 近畿地方

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「鉱床は蛇紋岩の破砕帯中特に東西に走る玢岩の岩脈付近に大小多数の鉱塊として胚胎するもので、鉱塊は団塊状をなすものと鉱染状をなすものとがある。」とあります。


日本の地質 6 近畿地方

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「鉱床は蛇紋岩帯の破砕帯中のひん岩岩脈付近にあり、紅ひニッケル鉱・硫ひニッケル鉱が団球状をなしている。」とあります。


参考文献
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『日本鉱物誌 3版 上』伊藤貞市・櫻井欽一、中文館書店、1947(昭和22)年

『本邦鑛物圖誌 1』伊藤貞市、大地書院、1937(昭和12)年

『大鑛物學 下巻』佐藤傳蔵、、1918(大正7)年

『日本地方鉱床誌 近畿地方』瀧本清、朝倉書店、1973(昭和48)年

『日本の地質 6 近畿地方』中沢圭二・市川浩一郎・市原実、共立出版、2001(平成13)年