今回ご紹介するのはデュウェイ石です。


石さまざま 石さまざま
石さまざま デュウェイ石(Deweylite)【フィロ珪酸塩・非晶質~低結晶質】
福岡県嘉穂郡筑穂町古屋敷


日本産鉱物型録』(松原聰・宮脇律郎、東海大学出版会、2006)によると、「非晶質~低結晶度の蛇紋石鉱物+滑石様鉱物」とあります。


また、『福岡県鉱物誌』(岡本要八郎、日本礦物趣味の會出版部、1944)によると、

「ヂュウェライトは~光澤鈍く、帯黄褐、帯赤褐色、非晶質、アラビヤゴム状又は樹脂状、~用途なし」

「主産地 嘉穂郡大分村兎山  同郡鎭西村八木屋山 等」

「ヂュウェライトは蛇紋石の變成物で非晶質アラビヤゴムの如き外觀で、黄色乃至褐色を呈し、八木山等の蛇紋石の裂罅に産出する。昭和16年(1941)益富壽之助の分析に依れば此の結果よりMgOの量が稍少い。更に討究を要すべきも假りに本鑛として記述しおくこととした。」とあります。

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尚、『日本産鉱物種 2010』(松内ミネラルコレクション)によれば、この産地の他に福島県郡山市中田町高倉の高倉鉱山、熊本県宇城市松橋町内田の二か所が挙げられています。


福岡県鉱物誌』の特徴について簡単にご紹介します。

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表紙のデザインは爽やかなグリーンを使った現代的なものなのですが…(左写真)。

扉を開くと、そこには…

世界に冠たる我が國體は金甌無缺 黄金で代表されてある 我が皇室の三種の神器は鏡(銅) 劒(鐵) 璽(寶石)即ち金石を至寶として居る 

肇國三千年國民の忠誠は國歌で表言されてある 

曰く君が代は幾千萬年 さざれ石(礫) が いはほ(礫岩)となり こけ(生物)の發達するまで 

と地質學で謳歌したものである 

國體 皇室 國民皆鑛物 岩石を尊び千歳不易の國家を成すこと萬邦無比である 

吾人は 明治の御代 國歌制定にあたり 地質學の和歌を選擇した因縁を更に一層注意せねばならぬ(昭和9年)」(右写真)とあります。


前に櫻井氏の『肉眼鑑定法』でも紹介したように、時代の空気が感じられます。


そして、木下龜城氏の「序」(左写真)にも

「~將々大東亞戰争の切實深刻な現段階に我國が直面しつゝある鑛物資源開發促進のためにも~」という文言が見られます。

また、岡本要八郎氏の「諸言」(右写真)における資料提供等の協力者を見ると、木下龜城氏はもとより、杉健一・高壮吉・櫻井欽一・木村健二郎・粟津秀幸・長島乙吉・今吉隆治・益富壽之助など錚々たる面々です。

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この鉱物誌は、最初に原色図版を置くなどの工夫も見られます。
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左写真;上から燐灰ウラン石・モンモリロン石・銅ウラン石・モナズ石

右写真;上から紅電気石と紫雲母・藍電気石と曹長石・紅柱石と藍寳石・緑電気石