先日、佐賀から来た40年来の友人と話していて、途中で茶粥の話題で盛り上がった。

現在でも家庭で茶粥を頻繁に食べているのは、奈良県、和歌山県、佐賀県の3県だけらしい。

 

そもそも茶粥は貧しい食べ物だった。
その昔、僅かな米しか食べられず、お腹を満たすことができない貧しい農民が、たっぷりの茶汁でお米を炊いて、文字通り「茶腹も一時」で飢えをしのいでいた。
病人が食べるドロドロのお粥とは似ても似つかぬ別の食べ物だ。
だからすぐに腹が減る(笑)

 

そんな食べ物だった茶粥を「美味しい郷土料理」にしたのは日本人の食に対する貪欲さからかもしれない。
我が家では茶粥のお茶は、ほうじ茶だったが、家によっては番茶や自宅で煎った緑茶で作るところもある。

茶粥は和歌山では「おかいさん」と呼び、茶粥は米から茶汁で炊く。お茶の葉は綿の茶袋に入れて煮出す。

子供の頃、早朝に祖母が「おかいさんできたヨォ〜」と、時を見計らって、家族を一斉に起こす。

すると家族全員が眠たい目をこすりながら必ず起きてきた。

 

実はこれには訳がある。
茶粥には「美味しい時」があるからだ。
米がたっぷりのお茶の中で炊かれ、最後に米の芯がなくなった瞬間を「花が開く」といい、そこから10分以内が食べ頃だ。

(花が開いた瞬間から時間とともに徐々に米は水分を吸ってふやけていく)
この食べ頃の茶粥は本当にサラサラとして美味い。
この時に寝過ごして後に起きて、残り物の茶粥を食べる時は敗北感とがっかり感を味わうことになる。
美味い茶粥を知っているものからしたら実に不味い。

 

和歌山では茶粥のおかずは、梅干し、水ナス(泉茄子)の浅漬け、金山寺味噌、きゅうりのぬか漬け、釜揚げシラスと大根おろし、そして甘い卵焼き、塩じゃけなどが定番だ。

 

家族全員でふうふう言いながら一斉に茶粥をかきこむ。
その後、父は仕事に出かけるが、私は食べ終わって時計を見るとまだ6時前、いつもそこから二度寝して、8時に起きて近所の学校に通っていた。

 

この茶粥の写真はネットから拝借したが、これでもお米が多いと思う。
漬物は水ナスの浅漬け。金山寺味噌。

 

成願義夫 記