この浮世絵は有名な歌川広重の「水道橋駿河台」である。


真ん中に大きく鯉のぼり(真鯉)が描かれ、その後ろに富士山が見える。広重特有の実に大胆な構図だ。
ご覧いただいてお気づきの方もいらっしゃると思うが、面白い事に一本の棒に一匹の鯉のぼりがたなびいている。
明らかに現代の緋鯉や真鯉や子鯉などの家族単位の飾り方とは違う。また、別の棒(竹竿?)には、『吹き流し』や『旗』も別々にたなびいている。
(当時は地域性の違いもあり、全国がこの飾り方に統一されていたわけではない。)
江戸時代の風俗や風習を現す浮世絵だが、風習が時代と共に少しずつ変化してきている事に気づかされて面白い。

伝統文様研究家 成願義夫