12月からお正月にかけて読んだ本の覚え書きです。

●アゴタ・クリストフ『悪童日記』

なんで今まで読んでなかったのか?と思いました。
まだ年が明けたばかりだけど、多分、私の今年のMY BESTになりそうな予感がする衝撃の傑作でした。

戦争が激化するなか、田舎のおばあちゃんのところに疎開した双子の「ぼくら」の日記という形の小説。

人間の醜さや哀しさや滑稽さが寓話のように描かれています。
明確な国名も地名も人名すら出てこないけど、状況から想定はできます。

感情を排したハードボイルドな文体で描かれた少年達の日常は過酷で浅ましくて残酷なのに、彼ら独特の倫理観は透き通るような美しささえ感じてしまう。
戯曲のような見事な構成です。
痛烈な反戦文学だと思いました。

著者はハンガリー生まれで、ハンガリー動乱でオーストリア経由スイスに亡命し、母国語ではなく亡命後に生活のため学んだフランス語で書き始め、処女作が今作びっくり

母国語を奪われ、他国の言葉(著者は敵性言語と呼ぶ)で綴られた簡潔な文体が独特な雰囲気を醸し出していて、逆に凄みを増す感じ。


ラストが謎で、えっ何故?びっくりと思っていたら、続編があると知って納得しました。

その続編も早く読みたくて入手!全3部作です。

今読んでいる別の本と並行で読みだしています。



●アンソニー・ホロヴィッツ『ナイフをひねれば』


ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ新刊。4作目かな?

今や、この2人のコンビに愛着を感じていますウインク


ホーソーン&ホロヴィッツの関係は面白い設定ですが、ストーリーはシンプルで古典的な王道ミステリーで、クスッと笑えるシーンも散りばめられています。

このシリーズは最後に伏線をすべてきれいに回収するのがスカっとします。



●クォン・ナミ『ひとりだから楽しい仕事』


なんとなく買った本でしたが、予想以上に良い随筆でした。


著者は村上春樹はじめ、三浦しをん、小川糸、恩田陸、角田光代等々、数々の日本文学を韓国語に訳した人気翻訳家です。


翻訳家の日常を通して、翻訳ウラ話や韓国出版事情、文化の違いを知る事ができて面白かったです。


なによりもナミさんの淡々とした語り口に垣間見る率直さがすごく好きです。


日本語翻訳の藤田麗子さんのお力もあるのでしょうが、名随筆だと思います。

もっと読みたい〜という気分になりました。

この本の前に韓国で発行された随筆が数冊あるそうですが、早く邦訳されるといいなぁ〜おねがい