台湾ドラマ
「悪との距離」全10話
視聴完了しました


この触れ込みを目にして
なんか凄そうなドラマだぞ、と
視聴意欲が湧きまくったこの作品


紛れもなく名作ですが
けして軽い気持ちで手を出してはいけない
濃厚で重厚な社会派ドラマでした

私はヘタレなんで
心の平穏を保つために
感情を振り回される出来事を
極力避けて生きてきた人間なんですね

子供が生まれてからは特にそうで
毎日のように起きている
悲惨な事件や悲しい事故を目にしたくないあまり
ニュースはほとんど見なくなりました

怖いし不安になるんですよね
ニュースになるような出来事は
「偶然の連続」が引き起こした
誰の身にも起こりうることだと
感じてしまうことが…

このドラマは、私の不安を
煽ってくるといいますか…

今まで目を背け続けてきたモノを
無理やり目蓋をこじ開けられて
見せつけられてしまったような
そんなドラマでした


登場人物たちは
とある殺人事件の関係者

犯人、加害者の家族、
被害者の遺族、弁護士、
精神科医、ケースワーカー、マスコミ

という、それぞれの立場から
事件を多角的に描いていて
序盤から、相当息苦しく
胸が痛い展開が続きます


テレビ局で働くチャオアンは
息子の命を奪われた悲しみと
後悔に苛まれるあまり
お酒や仕事に逃げ、心を閉ざすように


事件直後に、
夫から言われた言葉に深く傷つき
夫婦仲は険悪になり
娘ともうまくいかなくなります


チャオアンのもとでは
加害者の妹であるダージーが
名前を変え、素性を隠して働いていました

上司であるチャオアンが
兄が起こした事件の遺族だと知り
動揺するダージー


無差別の殺人事件を起こした
兄のシャオミンは
事件について沈黙したままで
家族との面会も拒否し
ただ死刑執行を待っています


弁護士のワンシャーは
自身と家族の身を危険に晒しながらも
シャオミンの他
複数の犯罪者たちの弁護を担当し
事件の究明に務めています


ダージーのルームメイト
スーユエの気がかりは弟のスーツォン

実家にいても
父親と衝突するばかりなので
自宅にスーツォンを呼び寄せ
面倒を見ようとするのですが


ある日、スーツォンが
幼稚園に侵入する事件を起こしてしまいます

そして、その幼稚園には
弁護士のワンシャーの娘が通っていました


幸いにもことなきを得て
園児たちは無事開放され
犯人のスーツァンは逮捕されますが

夫が彼の弁護を引き受けたと知り
強い憤りを感じる妻のメイメイ

家族の身を危険にさらしてまで
凶悪犯の弁護ばかりする夫が理解できず
苦しむようになります

このメイメイとスーユエが
いわゆる普通の人間で
視聴者視点に立つキャラクターなのですが


この二人がある日突然
事件に巻き込まれてしまったことで
多くの視聴者は
誰もが突如として
被害者側にも加害者側にもなりうる現実を
突きつけられてしまいます

夫の気高い志を理解したくとも
感情がついていかない…
もう、凶悪犯の弁護は
引き受けないでほしい…
メイメイは言います


あなたは私が
心の狭い人間に見えてるんでしょ
でも私は、自分の子供を守りたいだけなの

それに対してワンシャーは
こう返すんです


殺人事件が起きたら
不安や怒りだけで、理解しようとしない
犯人を全員逮捕して抹殺すれば
社会はよくなるのか?ならない

犯した罪は許されない犯罪者だが
…悪人なのか?

どちらが言うことも正しくて
間違ってないんですよね

もっと言うと
凶悪犯であるはずの犯人たちにすら
憐みを感じてしまう描き方をしているんです

登場人物たちだけでなく
見ているこっち側も
感情と理性がせめぎあい
とても苦しくなるのです

そして、もっとも印象的だったのが
シャオミンが死刑になったシーン


ワンシャーはやりきれない思いを
爆発させます


彼は人を殺した…
死刑になって当然だ
動機が明らかになってからなら
なんの問題もない
だが、もう、犯行に至った原因は
誰にもわからない

この二年、なぜ彼を生かした?
こんなことなら
逮捕した瞬間に殺せば良かった!

アメリカでは死刑は
国による殺人だ
だがこの国ではどうだ
犯罪者をただ処刑して
民衆に安心感を与える
そんなの間違いだ

胸にズシーンとくるセリフを
全員が叫ぶドラマなんですよね

正直、何度も見るのをやめたくなりました
心に重く響きすぎて
投げ出したくなりました

辛すぎて、二度見る勇気はありません
でも、見てよかったと思うし
見るべきドラマだと思います

ただし、くれぐれも
心が弱っていない時に
ご視聴ください…
メンタルやられます…

それではバイバイ