KENちゃんのボロイアパートの窓からコオロギの声が聞こえてきた。
ギタリストの中村さんと缶ビールを開けながらKENちゃんはくつろいでいた。
「俺、このアパートで独りぼっちで死ぬのかな・・・。」
KENちゃんがぼそっと言った。
「同じことを俺も考える時があるよ。」中村さんが言った。
「今更カタギにはなれない・・・。」KENちゃんが嘆くように言った。
「青木君には子供がいるだろう?俺は何もない。」
中村さんが泥酔状態で言った。
中村さんがTVをつけた。
「わはは。沢田隆章の奥さんの少女漫画家早坂まりあ先生の減量番組だぁ~。」
中村さんが嬉しそうに言った。
KENちゃんが苦笑した。
「痩せたらもう一度抱きたいかぁ?青木~?」中村さんがろれつが回らない状態で言った。
「もうこの夫婦には関わりたくないです。」KENちゃんが馬鹿にしたように言った。
「でも早坂先生が生まれてから一番愛したのは青木君なんでしょ?不倫中にそう言ってたんでしょ?この奥さん。」
中村さんが茶化したように言った。
「真帆ももうおばさんだよ。」
KENちゃんが何となく悲しそうに言った。
「それで・・俺も・・もうおっさんだ・・。」
KENちゃんがため息をついたように言った。
コオロギの声がさらに大きくなって大合唱になった。
「俺・・こんな大人になりたくなかった。」
KENちゃんがそう言った後、トイレにかけこんで
飲んだビールを全部吐いた。