★★

 

「屋上からの脱出/阿津川辰海」
「名とりの森/織守きょうや」
「鳥の密室/斜線堂有紀」
「罪喰の巫女/空木春宵」
「サマリア人の血潮/井上真偽」
5話収録の短編集で全編書下ろし。

息を吞むようなキレッキレの脱出劇を期待していたので、ちょっと肩透かし。

印象に残ったのは、阿津川さんと織守さん。

『屋上からの脱出』出入口が箒で塞がれ、極寒の屋上に取り残された天文部員達。
トリックもオチも想像の範囲内だったけれど、ドラマチックな展開で面白かった。

『名とりの森』はホラー寄り。
立ち入り禁止の森に踏み込んだ少年達の脱出劇にヒヤヒヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

テンポが良くて面白かった。

一軒家で一人暮らしをしていた76歳の真理子の元に、台風の夜、突然現れた73歳の加代。

質素倹約のお手本のような真理子と、「明日死ぬかもしれないんだから」が口癖の豪快な加代。
正反対とも思える二人の奇妙な共同生活が始まった。

寂しさを抱えていた真理子が加代に感化され、それまでの無機質だった生活に輝きを増していく過程がいい。

一緒に買い物へ行き庭で野菜を育て、お喋りしながら食事する。
楽しそうな二人の笑顔が目に浮かぶ。

終盤の展開には思わず泣き笑い。

切なさと温かさを兼ね備えたハートフルコメディ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

「例の支店」
「ルレの風に吹かれて」
「哲学的ゾンビの殺人」
「この閉塞感漂う世界で起きた」
「イップスの殺し屋」
「撮影現場」
「リヨンとリヲン」
「カガヤワタルの恋人」
8話収録の短編集。

長江さんと言えばどんでん返し。
脳内で描いた予想はことごとく覆され反転に次ぐ反転。

どの短編も刺激的で面白かったが、特に印象に残ったのは『この閉塞感漂う世界で起きた』。

自らの境遇を嘆き、盗み目的で豪邸に忍び込んだ男。
老夫婦に見つかってしまうが、その後思いも寄らぬ展開が待ち受ける。

世の中捨てたもんじゃないと感じたのも束の間、地獄へ一直線。