★★★

 

舞台は2226年、200年後の東京。

三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)が制御可能となりペットベイビー(PB)と呼ばれる愛玩赤ちゃんが工場で量産される世界が描かれる。

読み進めるほどに、背筋の奥が冷えていくような感覚に襲われた。

令和の今でさえ、ネットの普及によって便利さと引き換えに何かを失っている気がするのに、この無機質な未来世界には思わずゾッとしてしまう。

手がかからず、従順で、都合よく作られた赤ちゃんを育てる姿は、大人のエゴにしか見えない。

欲望や感情に揺れながら生きることこそ人間らしさの根幹なのだと強く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

比嘉姉妹シリーズの前日譚。
舞台は1981年の神奈川県P市Q区。

ある夜、全身ずぶ濡れの人影が目撃され、その日を境に、住民が陸地で海水に溺れ死ぬという異様な出来事が続く。

“びしょびしょのお化け”そのものも不気味だが、余所者を排除しようとする集団心理や差別意識の方が恐ろしい。

作中に散りばめられた「ちゃぷちゃぷ」「びしゃっ」「ごぼごぼ」といった音が強烈で、行間から湿気が立ちのぼるようだった。

比嘉勝子――“おばぁ”の圧倒的な存在感は、ここでも揺るぎない。

ホラーでありながら、人の心に巣食う悪意や偏見を照らし出す一冊。

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

「あなたが正しくいられたとき」
「代償」
「薄着の女」
「立体パズル」
「待てば無料」
「投了図」
6話収録の短編集。

以前読了した『汚れた手をそこで拭かない』を彷彿とさせる作品集。

芦沢央さんは『夜の道標』のような長編も良いが、イヤミス短編集の切れ味は格別。

本作も終始心がざわつき、ラストで思わずうわぁ~となる。

何が正しく、何が誤りなのかー、誰が正しくて、誰が過ちを犯しているのかー。

人間心理の奥深さと狡猾さをひたすら考える読書時間だった。

著者はあとがきで「ごった煮のような短編集」と記すが、私には珠玉の味わいに感じられた。