★★★★★

 

読み終えて本を閉じた瞬間、心の中を爽やかな風が吹き抜けていった。
それは春の始まりを告げるような静かで暖かな風だった。

3月31日、年度末のざわめきの中で起きた小さな奇跡。

総合メーカーの本社ビルで働く清掃員・守田と、定年退職を迎える窓際部長・佐和山。

人生を諦めかけていた守田と、社内の出来事で降格人事を食らった佐和山。
不器用でも、真っ直ぐに、実直に働いて来た二人が愛おしくなる。

理不尽なことばかりの毎日でも、明日、何かが変わるかもしれない。
そんな希望を、そっと手渡してくれる物語だった。

この作品に出逢えた事に感謝。

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

まさか、AIロボットが法廷に立つ日が来るなんて。

介護ロボット「N365(通称リタ)」が発した高周波電磁波により、患者のペースメーカーが誤作動。

命を落とした利用者の死をめぐって前代未聞の裁判が幕を開ける。

裁判を担当する判事補・高遠寺円と、事件に違和感を覚える捜査一課の刑事・犬養隼人が真実を追う。

もちろんフィクションだが、読み進めるうちに、そう遠くない未来に本当に起こるかもしれないと思わされる。

中山作品ならではのどんでん返しも健在。

読み終えたあとに残るのは、ロボットの恐ろしさではなく、人間のエゴの深さだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

只事ではないタイトル、インパクト抜群の装幀。
綿矢節が炸裂した最高にファンキーな物語だった。

同じビルで働いていた俊貴と由依は恋愛を経て結婚。
控えめで笑顔が可愛い由依は4年間の不妊治療の末、妊娠を果たす。

だが、その日を境に彼女はまるで別人に。

仕事から帰宅した俊貴の目に飛び込んできたのは、ムラサキ色の坊主頭に、ぶっ飛んだ言葉遣いの妻の姿だった。

「様子がおかしい」なんてレベルじゃない。
この豹変ぶりには、読者も思わずたじろぐはず。

不妊治療の過酷さ、出産・育児の現実をユーモアと風刺で描き出す痛快で爽快な妊婦コメディ。