宋は
その日の夕方、
自分が主演するドラマのロケ現場で
蘇の受賞と
合衆国の次期大統領の誕生を知った。

テレビで生放送を仕切るリサを見て、
蘇の誕生日パーティーが終わってから
まだ1日も経っていないことを不思議に思った。



数日後。
蘇は大きな決断を迫られる。

映画での評価を受け、
中国から仕事の依頼が来る。

トップ女優の相手役で、蘇本人にとって
さらなる飛躍が期待されるものだ。

この秋、韓国は何年ぶりかの大不況で
芸能界も影響を受けてしまっていた。

このオファーは俳優としての地位を確立し、
細かいことだが、
収入も当然増えることになる。



リサはいつものように自宅で
蘇のために昼食を作っている。
蘇は
キッチンに立つリサを後ろから抱きしめる。

『火のそばだから、危ないよ』

『リサ?俺が何ヶ月もここに来なかったら寂しくない?』

『もちろん、毎日でも顔を見たいわ』


『そうだよな。俺もリサと会えなくなったら
 辛い』

『何かあったの?』


『仕事のオファーが来ていて‥中国から』

『中国??すごいじゃない?』

『もちろん、撮影は向こうで‥』


『もしかしたら、悩んでる?』

『ああ。一年近くかかるようだし。
 なにより、リサに会えないのが。。』


『ね、志燮?
 じゃ、聞いてあげようか?
 私と仕事と、どっちが大事なの?』

『それは、、、』

『答えにくいでしょ?
 比べるものが違うもの(笑)

 もし、外国で私が何ヶ月も仕事に出るって行ったら、志燮‥どうする?』

蘇はしばらく黙っていたが、やっと口を開く。

『会えないのは寂しい。でも、リサのためになるなら、送り出す』

『ありがとう、志燮。
 志燮もそうだよ。会えないのは長い人生のうちのたった一瞬。
中国ってすぐ近くじゃない。
休みを取って会いにも行ける。

 でも私はなにより、
 貴方のような素晴らしい俳優さんが韓国にいるんだって、世界中の人に知ってもらいたいわ』

『リサおねがい

『向こうの人にモテちゃって困りそうね照れ

『俺にはリサだけだ』

『もちろん、その言葉 忘れないで』