そらが
『いつものスタバ(空港内)で待ってるから』
とリサに言い残し、
早退していった。
リサは、定時より一時間早く会社を出る予定にしている。
会社の前にリムジンバスの乗り場があり、
直接空港に向かうことが出来るのだ。
1つ気になっているのは、ユノのことだ。
朝から、笑顔も見せずに無言でパソコンに向かっている。
リサから話しかけるのも気まずいし、
仕事での伝達事項も特に無かった。
彼はいつもリサの昼食の輪の中にいたが、
今日は別の課の男子社員と食事を済ませていた。
14時頃、
後輩のナオコが悲鳴を上げた。
『大変ーーーーーっ』
先週仕上げた企画書のデータが
何らかのトラブルで半分消去されているのに気づいたのだった。
リサが駆け付ける。
『バックアップは??してあったんでしょ?』
『いえ。。それが。。ついでの時にやろうと思って、そのままにしてました』
ナオコがシュンとして打ち明ける。
『マジで?
まあ、一声かけなかった私も悪かったのよ。
考えてても仕方ないわね』
リサは時計を見て、決心する。
『いいわ、作り直すから』
『でも先輩、、飛行機の時間が』
『心配しないで。大丈夫だから』
リサは泣き顔のナオコに資料を集めさせ、キーボードに向かった。
頭の中にはおおまかな記憶が残っており
わりとスムーズに進んだ。
元のよりも納得のいく企画書が出来あがり、
時計を見たときにはリムジンバスの出発時刻が近づいていた。
『ナオちゃん、今度からは大丈夫ね?!』
『ありがとうございました!』
『じゃっ、お先に!』
スーツケースはナオコがデスクの横に準備してくれていた。
エレベーターは別の後輩が待ち受けて
乗せてくれた。
『ありがとう!シンちゃん!』
『先輩、行ってらっしゃい!』
ビルの外に出て、バス停に走った。
しかし、リムジンバスはテールランプを光らせて遠ざかる。
『しまった、、、遅刻だ』唖然とするリサ。
さっきまで神経を尖らせていた反動でタクシーを探す気力も失せた。
今日はもう
このあとの便に空席は無いのだ。
(スンホン。。。)
『リサ先輩!!』声に振り返ると
ユノが立っていた。
『タクシー、捕まえておきました。
バスよりも早く空港に着きますよ』
ユノは笑顔でタクシーの屋根をコンコンと指で叩いた。
『ユノくん』
『彼が待ってるんでしょ?』
『いいの?』
『はい、昨日はすみませんでした。
まだまだ子供ですよね。
僕、反省しました』
『ごめんね』
『いいんですよ。イヴの夜を一緒に過ごせて良かったです。
これからもリサ先輩は僕の憧れだから。
さ、乗って!』
『ありがとう、行ってきます』
タクシーに乗り込んだリサは振り返ってユノを見た。
ユノはタクシーが見えなくなるまで手を振っていた。
空港に到着するまでの時間、
目を閉じて疲れを癒す。
眠らない街、ソウルに行くのだから。