お目当てのラーメン屋さんに
着いた。
人気店だが、
ちょうど大学生らしいグループが退席したから
すぐに座れた。

雅は
麺、チャーシュー、ねぎ多め。
麺はバリカタのスープはコッテリ。
私は
全部普通を選ぶ。

『たまには冒険したら?』なんでも 
普通の私に雅が言う。
『そういう冒険、いらない(笑)』

カスタムしたら
きっともっと美味しいのだろうが、
シンプルに
その店の味を楽しみたいと
思うからだ。

また店が混んできて
食べ終わったらすぐに
店を出た。

『じゃ、ひさしぶりにカラオケでも行こうか?』
雅が腕時計で時間を確認した。

最寄りのカラオケ店を検索して
店に行くが、週末は例に漏れず
待ち合いスペースには
人が溢れていた。

とりあえず、予約をして。。。



目の前にあった
全国チェーンのカフェに入る。


窓際のカウンター席で
向かいのカラオケ店を観察しながら。。。

雅が顔を近づけ
『で、そろそろ聞かせてもらおうか?』
と言った。


『あ、あー
 亮のことね』
私は、握っていたカップのコーヒーを少しだけすすって
『じゃ、話すね。
 先に言っとく。
 呆れてものも言えなくなるから』

『わかった。
 …覚悟した』

私は話し始める。

亮が他の女性として結婚するつもりだということ。
それ以降も
こちら二人の関係は終わらないこと。

『ね?呆れるでしょ?』

雅は
時折
険しい顔になった。
私は途中で
雅に怒鳴られるのではないかと
不安だったが
最後まで黙って聞いてくれた。

『バカげてる。
 でもアイツの言い出しそうなことだな』

『でしょ』

私は笑いを誘ってみたが、
雅は釣られなかった。


『そんなんでいいの?
 きょうちゃん
 (私はプライベートはそう呼ばれている)の人生は、
 あいつの都合に振り回されて、
 それで終わりでいいの?
 それで
 歳をとって
 自分は幸せだったって
 満足して死ねる?』


『いまは、まだ
 そんな先のことなんか 
 考えてないよ』


雅のスマホが鳴り、
カラオケ店から
『予約のキャンセルが出た』と言う知らせが入る。

『歌える気分?』
雅に聞かれ
『正直、今はちょっと。。。』

『そか。。。じゃ、いこっ』

雅に手首を掴まれ、
カラオケ店に連れていかれた。

個室に入り
『ちょっと、気分じゃないって言ったよね?』

『だから、歌うんじゃないか』


雅は立て続けに
アニソンを予約していき、
それはアニヲタでない私でも歌えるような選曲ばかりだった。
雅と
適当なタイミングで交代しながら歌う。


亮とのことを話したあと
雅がどう感じたのか図り知れず、
でも
今は楽しいから、いいかな?と。。

『目の前にある快楽に溺れるタイプ』って私のことか。。と
じゃっかん呆れながら
私は歌い続けた。