9月19日(金) 国立能楽堂

狂言『謀生種』(和泉流 野村万作の会)

 シテ(伯父)野村万作 アド(甥)野村裕基

(休憩)

能『野宮』・合掌留・火宅留(観世流 観世会)

 シテ(女 六条御息所の霊)観世清和 ワキ(旅僧)宝生常三 

 アイ(嵯峨野の里人)野村萬斎

 笛:竹市学 小鼓:観世新九郎 大鼓:亀井広忠 地頭:岡久広

 面:シテ「節木増」

 

朝から風邪気味で、くしゃみ鼻水。申し訳ないから休もうかとも考えたけど、今日は観世ご宗家の『野宮』だから、頑張って行く。行きがけに、風邪薬を購入して飲む。

よって、ちょっと眠くなってしまう。

 

狂言『謀生種』。大嘘つき合戦のお話。

大嘘つき合戦の内容は、昔はアドリブだったらしいが、今は、流派やお家によって、決まっているとのこと。

この日のは、以前拝見したのと同じだった。琵琶湖の水でお茶を点てるだの、大牛が寝転ぶだの。最後の種なぞある訳が無いじゃないか、まで同じ、というか拝見したことがあるので、知的刺激はなかった。

先日、万作師の「六つの顔」を見たばかりだったので、ホンモノはどうかなと思ってみていた。最初の立ち上がりでフラついて、ああ、やっぱりだな、そろそろ限界だなと思ったけど、それ以外は、確りしていて、孫の裕基君相手にキチンと演技した。

観られるウチにできるだけ、拝見しておかないと。

 

能『野宮』、3回目なのです。

今のところ、ワタクシの一番好きな曲。去年の6月から8月にかけて、謡を習ったし、今年の2月の梅栄会で、クセを連吟して、キリはお仕舞いで舞った。

実に名曲、最高。しかも、観世ご宗家が、2時間以上の曲を、最後まで舞いきる。

 

最初のシテ登場で、左手に木葉を持つが、これは何であるか。

液晶パネル表示では、賢木と記された。確かに、源氏物語の帖名では賢木ではある。ワタクシの習った梅若謡本では、榊と書いてある。榊の小枝を、小柴垣に刺すのだから、賢木ではなくて、榊の方が良いかも。

榊の小枝を、黒木の鳥居(舞台では白木だけど)の外に置く。中入で、下げられる。

 

小書き「合掌留」は、破ノ舞の最後に、鳥居に向かって合掌する形が入る。

小書き「火宅留」は、詞章の最後が、「火宅の門」が「火宅」で終わる。

この火宅留めは、もの凄い余韻を舞台全体にもたらす。あ~ら、モノすごの余韻かな~。

シテが退場し、結構離れてワキが退場し、地謡と囃子方も退場するまで、誰も拍手しない。拍手できないほどだ。

素晴らしい。

 

森、鳥居、小柴垣。

六条御息所の救済はどうなるのか。

これは、むしろ源氏物語の解釈だから、そっちに委ねましょう。観ているウチに、本説の源氏物語が史実と感じてしまう。

いけない、いけないと思いつつ、考えてしまう。ダブルでの虚言に囚われてしまう。

 

謡が、ワタクシの印象よりゆっくり進行して、ゆっくり謡う。だからかな、110分と設定されていたのに、150分くらいかかってしまったのでは無いか。

連吟部分クセだって、仕舞部分キリだって、ホントにゆっくり謡うんだもん。お素人は早くなりがちだけど、このテンポで良いんだ。

 

清和師、お疲れ様でした。長時間。序ノ舞も、美しかったです。

地頭が、イマイチだったか。紀彰師が地頭を務めれば、感動が倍増したのではないか。

お能は、シテ方、囃子方、地謡・地頭が、全部揃ってナンボという気がする。

 

大好きな中庭。木々草花の様子は変わらないが、暗くなってみると、又ひと味違う。